労働審判手続の内容 労働審判

①対象となる事件

 

労働審判の対象となるのは、労働契約の存否その他の労働関係に関する事項について個々の労働者と事業主との間に生じた民事に関する紛争、すなわち「個別労働関係民事紛争」です。

 

具体的な事例としては、解雇、雇い止め、出向、配転、懲戒処分等の効力を争う場合、賃金、退職金、時間外手当、解雇予告手当、損害賠償等を請求する場合などです。

 

②管轄裁判所

 

労働審判の管轄は、ⅰ相手方の住所、居所、営業所もしくは事務所の所在地を管轄する地方裁判所、ⅱ個別労働関係民事紛争が生じた労働者と事業主との間の労働関係に基づいて当該労働者が現に就業し若しくは最後に就業した当該事業主の事業所の所在地を管轄する地方裁判所、ⅲ当事者が合意で定める地方裁判所です(労働審判法2条)。

 

③代理人

 

法令により裁判上の行為をすることができる代理人のほか、原則として代理人は弁護士でなければならないと定められています(労働審判法4条)。

 

④期日指定・呼び出し

 

労働審判の申立がなされた場合、第1回期日は、原則として申立の日から40日以内の日が指定されます(労働審判規則13条)。

 

当事者には、期日、申立の主張、証拠の申出、証拠調べに必要な準備をすべき旨などが記載された呼出状が裁判所から送付されます。

 

⑤答弁書の提出

 

裁判所から期日の呼び出しがあった場合、相手方は、定められた期限までに答弁書を提出しなければなりません。

 

答弁書には、ⅰ申立ての趣旨に対する答弁、ⅱ申立書に記載された事実に対する認否、ⅲ答弁を理由づける具体的な事実、ⅳ予想される争点及び当該争点に関連する重要な事実、ⅴ予想される争点ごとの証拠、ⅵ当事者間においてされた交渉その他の申立てに至る経緯の概要などの記載が必要とされています(労働審判規則16条)。

 

⑥審理

 

労働審判委員会は、第1回期日において、当事者の陳述を聴いて争点及び証拠の整理をし、同期日において行うことが可能な証拠調べを実施します(労働審判規則21条)。

 

第2回、3回期日では、調停での解決に向けた調整が試みられます。実際上は、第1回期日から調停案が示されるなどして調停での解決が試みられることもあり、1回の期日で調停が成立して手続が終了する場合もあります。

 

⑦労働審判

 

調停が成立しない場合は労働審判が言い渡されます。

 

労働審判は、審理の結果認められる当事者間の権利関係及び労働審判手続の経過を踏まえて行うものとされ、当事者間の権利関係を確認し、金銭の支払、物の引渡しその他の財産上の給付を命じ、その他個別労働関係民事紛争の解決をするために相当と認める事項を定めることができます(労働審判法20条)。

 

⑧異議申立

 

当事者は、労働審判に対し、審判書の送達又は労働審判の告知を受けた日から2週間以内に、裁判所に異議の申立てをすることができます(労働審判法21条1項)。

 

適法な異議申立がなされた場合は、労働審判はその効力を失います(同条3項)。

 

2週間以内に異議申立がない場合、労働審判は裁判上の和解と同一の効力を有することになるため(同条4項)、労働審判に基づいて強制執行等を行うことができます。

 

⑨訴訟への移行

 

労働審判に対し適法な異議申立があった場合は、労働審判手続の申立てに係る請求は、その労働審判手続の申立ての時に、労働審判が行われた際に係属していた地方裁判所に訴えの提起があったものとみなされ、訴訟手続に移行することになります(労働審判法22条)。