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整理解雇・リストラが違法になる基準│不当解雇にあたる場合の対処法

最終更新日 2022年 09月14日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

 


整理解雇(リストラ・経営難に伴う雇い止め)は、どうしても他に手がなく、労働者との話し合いを尽くした時に初めて認められます。
 
人件費が尽きたからと言って突然辞めさせられたり、不適切な選定基準によってリストラ対象になったりするのは、決して認められません。
 
特に下記のようなケースでは、不当解雇であるとして撤回や地位確認、そして未払い賃金の請求が認められる可能性があります。
 
今後の生活を守るため、心当たりがある場合は早めの対処を検討しましょう。
 

▼不当解雇に該当する可能性が高いケース
・解雇日直前になって突然通知された
・産休・育休中であることを理由に、復職に協力不可として解雇された
・現在の従業員をリストラする一方で、同時に求人広告を出している
・他の従業員は異動や配置換えができているのに、自分だけ解雇だと言われた
・従業員は職を失うのに、社長その他の重役だけは贅沢な生活を続けている

 

整理解雇とは│他の理由での解雇・退職との違い


整理解雇とは、会社=使用者が経営難に陥った際、人件費削減や事業整理のため従業員=労働者との雇用契約を解除することをいいます。
 
一般には「リストラ」と呼ばれることが多く、次の原則の下で認められています。
 

・経営難が前提+雇用継続に向けて最大限努力する必要がある(詳細は後述)
・会社都合退職になる(雇用保険の給付条件で優遇される)

 

解雇の種類【普通解雇・懲戒解雇・整理解雇】

解雇はその理由により3形態に分かれます。
 
共通する基本原則は、客観的・合理的な理由があり社会通念上相当と認められる場合に限り、正当と認められる点です(労働契約法第16条)。
 
解雇の形態にはそれぞれ判断基準があり、整理解雇は「労働者に非がない場合」と考えても差し支えありません。

 

整理解雇の理由=会社再生や破産の必要性

稀に会社が誤った説明をしますが整理解雇は経営状況をより良くするためのものではなく、
 
資金繰りや債務の状況が悪化しており、遅かれ早かれ賃金支払いにも影響するような状況が前提です。
 
上記の内容は、この後説明する「整理解雇の4要素」にも含まれます。

整理解雇は会社都合退職扱いになる

整理解雇されることを受け入れるしかないケースでは、雇用保険の手続き上「会社都合退職」となります。
 
自己都合退職(=自主的に退職すること)とは異なり、失業給付について以下のような保護があります。
 

待機期間:7日(自己都合退職なら+3か月)
受給要件:最低6か月の勤務(自己都合退職なら最低12か月)
給付期間:被保険者であった期間に応じ最大240日(自己都合退職なら最大150日)

 

退職勧奨や希望退職も「会社都合退職」になる

会社から経営難だと説明されて自主的に辞めた場合でも、
実態から「会社都合退職」の扱いとなります。
 
退職勧奨に応じたり、一定の条件を示されて希望退職者募集に応じたり、あるいは退職を強要するための嫌がらせを受けたりした場合です。
 
注意したいのは、実態は整理解雇であるのに、退職時に会社が行う雇用保険関連の手続き(離職票交付等)で自己都合退職とされてしまう可能性です。
 
政府事業による助成金や解雇予告手当の不払いを狙い、以上のように労働者が一方的に不利になるような措置を取られる場合があるのです。
 
この点も踏まえ、整理解雇にあたるのか、そもそも解雇に正当性はあるのか、万一の時は慎重に判断しなくてはなりません。

整理解雇の4要素│これを満たしていなければ無効になる


整理解雇自体は許容される措置ですが、会社にお金がないのであれば無条件に認められる……というわけではありません。
 
むしろ、雇用継続について最大限注意を払い、雇い止めが回避できないようなら協議を尽くした上での「最終手段」だと解釈されているのです。

労働者が働き続けることを望んでいるにも関わらず、下記の4要素を総合的に考慮し、合理的理由がなく労働契約を解除すると、それは解雇権の濫用(=不当解雇)にあたります。
 

▼分かりやすい整理解雇の4要素
・会社の経営状況が相当悪化している(人員整理の必要性)
・雇用継続できる方法を優先的に検討した(解雇回避努力義務)
・客観的・合理的な基準で公正に人選した(人選の合理性)
・労働者等と協議し、会社側から納得できる説明があった(解雇手続の妥当性)

 

人員整理の必要性

整理解雇の第1の要件は、経営状況から見て解雇(=人員削減措置・人員整理)の必要性が認められることです。
 
今まで通りの賃金が払えないほど会社が傾いており、その状況を決算書やバランスシート等の定量的データも交えつつ説明できる状態でなければなりません。

解雇回避の努力

整理解雇の第2の要件は、会社がリストラを回避するためのあらゆる努力をしたと認められることです。
 
簡単に従業員を切り捨てるのではなく、まずは配置換えや業績のいい関連会社への出向、あるいは一時休業の決断によって雇用継続の道を模索しなくてはなりません。

人選の合理性

整理解雇の第3の要件は、リストラ対象者の人選が適正に行われていることです。
 
対象者選定は担当者の主観に左右されることなく、客観的・合理的基準を詳しく取り決め、公正に行わなくてはなりません。

解雇手続の妥当性

整理解雇の第4の要件は、どうしても解雇が避けられない時に、労働者の納得に繋がる適正なプロセスを踏んでいるかどうかです。
 
適正なプロセスとは解雇に至る説明を指し、社会生活を営む上で欠かせない「信義則上の義務」として重視されています。
 

なお、使用者とリストラについて協議することになるのは、以下いずれかの立場の者となります。
 
・労働者本人または労働組合
・労働者の過半数を代表する者(労働組合がない場合)
 

整理解雇の不当性を判断する6つの基準


リストラ・整理解雇が「解雇権の濫用」にあたるかどうかは、整理解雇4要素と労基法に照らし合わせて判断します。
 
4要素については、実のところ、個別に経緯を振り返って過去の判例に当てはめることになります。
 

労働者にとって重要性が高い順に不当解雇の判断基準を紹介すると、以下の6つの観点で状況をチェックできるでしょう。

労使協議に誠実に応じてもらえない

4要素に「解雇手続の妥当性」、つまり会社に信義則上の説明義務がある以上、経営事情が切迫していることを理由とする抜き打ち解雇は論外です(大阪地判平成7年3月29日/土藤生コンクリート事件)。
 

その他にも下記のような場合は不当解雇と判断され、悪質な退職勧奨に至っては、高額な慰謝料が認められる可能性があります
 
・協約に定めがなく、労働組合との協議を行わなかった(※1)
・希望退職者募集に乗らずにいると、予兆なく整理解雇になった(※2)
・いじめ・嫌がらせで自主退職に追い込まれた(※3)
 
※1:東京地判平成24年2月29日(日本通信事件)
※2;高松地判平成10年6月2日(高松重機事件)
※3:東京地判平成14年7月9日(国際信販事件)

雇い止め回避に繋がる提案・措置がない

4要素のうち「解雇回避の努力」の義務に関しては、
 
松山地判昭和62年5月6日(住友重機愛媛製造所事件)や東京地判平成15年9月25日(PwCフィナンシャル・アドバイザー・サービス事件)を参考に、会社の提案や措置を客観的に判断します。

 
また、一見すると労働者のためになるような措置でも、雇用継続を目的としないのであれば、要件を満たせず不当解雇の可能性ありと考えて問題ありません。
 

【〇】解雇回避努力と認められる提案・措置
・新規採用・人員補充の中止
・人員再配置や出向のあっせん、出向増員
・大量の一時帰休(=一時的休業)の実施
・役員報酬カット、内部留保の取り崩し

 

【×】解雇回避努力とは認められない提案・措置※
・退職金の上乗せ
・再就職支援

 
※適切な提案・措置では雇い止めを回避できないようなケースでは、若干考慮されることがあります。

解雇制限に抵触する

労働関連法によって整理解雇ができない場合として、解雇が制限される理由及び時期が挙げられます。
 
勤務先の経営状態が悪化していたとしても、以下の制限に抵触すれば不当解雇にあたります。
 

禁止される解雇理由とは

手続き上は整理解雇でも、法律で禁止される解雇理由を告げられている場合は、不当解雇の可能性があります。当てはまるものとして「性別や家庭事情」あるいは「会社にとって不都合な相談や通報をした事実」が挙げられます。
 

▼解雇が禁止される理由(性別や家庭事情)
1.性別
2.女性の結婚、妊娠、出産
3.育児休暇・子の看護休暇・介護休暇等の取得
4.育児・子の看護・家族介護を理由として労働時間の短縮等を申し出たこと

 
1・2:男女雇用機会均等法(第5条、第9条)
3・4:育児・介護休業法(第10条、第16条の10、第18条の2、第20条の2、第21条、第23条)
 

▼解雇が禁止される理由(各種相談や通報)
1.パワハラ・セクハラ・マタハラ等の相談や通報
2.労働組合加入の事実そのものや、組合活動
3.その他、各種違反行為の通報

 
1:男女雇用機会均等法第11条2項・第11条の3第2項、労働施策総合推進法第30条の2
2:労働組合法第7条1号・4号
3:労働基準法第104条2項、労働施策総合推進法第30条の2第2項、公益通報者保護法第3条等

解雇の禁止期間とは

産前産後休暇と労災による休業期間は、復職後30日間を含めて解雇してはなりません(労基法第19条)。
 
経営難で復職を支えきれない等といった理由が説明されている場合、不当解雇にあたる可能性があります。

解雇対象者の選定基準に問題がある

整理解雇4要素にある「人選の合理性」、つまり解雇対象者の選定基準は、一般に下記のような定量的で公正な基準でなければならないとされます。
 
裏を返せば、成績・素行以外の理由でリストラ対象になったり、収入を必要とする事情への配慮がなかったりする場合には、不当解雇にあたる可能性があります。
 
1.欠勤率(一定期間内の病欠日数・求職日数)
2.人事考課基準(=能力評価の結果)
3.年齢基準(上記適用後も整理目標に達しない場合)
4.懲戒処分歴
5.扶養家族の有無
 
参考判例:東京地判平成24年3月29日・同30日・大阪地判平成28年3月24日(日本航空事件)、
東京地判平成13年12月19日(ヴァリグ日本支社事件)

他の社員との間で不公平がある

整理解雇の要件の1つ「人選の合理性」に付け加えると、理由の分からない待遇の差も不当性ありと考えるべきです。例えば、次のようなものがあります。
 
・同僚の中で自分だけ異動の提案がされず、いきなり解雇された(※1)
・異動先で働くかどうか決めかねているうちに、一方的に解雇された(※2)
 
※1:東京地判平成9年26日(日運事件)
※2:前述の土藤生コンクリート事件、福岡地裁令和3年3月9日決定(コロナ禍による経営難を理由とした観光バス運転手の解雇事案)

不当な整理解雇だと思った時の対処方法


整理解雇の正当性に疑いがある場合、最優先でやるべきことは「相談」と「解雇理由の確認」です。

最終目標である解雇撤回や地位確認、これらに伴う未払い賃金や損害賠償金の請求に向け、焦らずに以下の対処を押さえましょう。
 

【関連記事】
突然の解雇は違法?!不当解雇になるケースや対処法を解説

 

弁護士や労働基準監督署に相談する

整理解雇と主張しつつも不当に雇い止めされた可能性がある時は、手始めに弁護士や労働局・労働基準監督署に相談しましょう。相談前に自己判断で動くのは、会社に証拠隠滅や労働紛争対策の機会を与えてしまうためNGです。

 
なお、個別に「違法性の有無」や「今すぐ何をしたらいいのか」をより具体的かつ迅速に教えてほしい時は、弁護士への相談がベストです。
 

【関連記事】
不当解雇は誰に相談すればいいの?不当解雇の相談窓口まとめ

 

解雇理由証明書を請求する

整理解雇の相談も重要ですが、解雇理由証明書の交付請求も最優先でやるべき対処です。
 
正確な理由を調べて正当・不当を判断するためだけでなく、今後の会社との交渉や労働訴訟で立証資料として本書面が不可欠になるからです。

内容証明郵便で解雇の撤回を請求する

整理解雇が不当だと確信できた時には、内容証明郵便で解雇無効の主張や地位確認請求をします。
 
返答があれば、改めて労使協議・労使交渉で納得できるまで話し合ったり、紛争調整委員会に依頼して仲裁(=あっせん)してもらったりする道が拓けます。

労働審判・労働訴訟で決着をつける

どうしても整理解雇の不当性を認めない場合、あるいは話し合いにすら応じない場合は、労働審判手続に移ります。
 
労働問題を迅速に解決するために用意されている裁判手続であり、裁判官及び有識者により3回以内の期日で判断が下るのが特徴です。
 

労働審判でも解決できない場合は、異議申立てによって訴訟に移行します。いずれも対応には専門知識が必要とされ、過去の事例や立証手段に詳しい弁護士の支援が必要となります
 

【関連記事】
解雇に対する不服申立て方法は?│初期対応から不当解雇の判断基準まで

 

おわりに│整理解雇に疑問がある時は弁護士に相談を

整理解雇(リストラ)は一概に不当とは言えないものの、基本の4つの要件を満たし、労働関連法での制限や手続きのルールに抵触しないよう注意しなければなりません。
 
難しいのは、解雇の正当性はケース別に判断する必要があり、トラブル解決時に得られるメリットも個別に違ってくる点です。
 
経営難を告げられてリストラ・解雇を言い渡された時は、ひとりで抱え込まず弁護士に状況を打ち明けてみましょう。
 

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