突然の解雇は違法?!不当解雇になるケースや対処法を解説
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「会社から突然解雇されてしまった」「解雇になったものの解雇理由に納得できない」など解雇に関する悩みや疑問を抱えている方も多いでしょう。
自分の意思で退職をするようなことはあっても、会社から解雇を通知されるには何らかの理由があります。
しかし、解雇にはさまざまな要件を満たす必要があり、簡単に解雇はできるものではありません。
そのため、解雇要件を満たしていない場合には、その解雇は違法になります。
ここでは、解雇が違法になるケースや、違法に解雇された場合の対処法をご紹介します。
目次
通常の解雇と違法解雇について
解雇とは、会社側が労働者の同意なしに雇用契約を解除することを指します。
労働者が退職することについて承諾する余地がある場合は解雇に該当しません。
通常解雇を行うには労働者の同意は必要ありませんが、相応の手続きを踏んで一定の要件を満たす必要があります。
なぜならば、解雇は
(労働契約法第16条)
もしこの法律に基づいた解雇が行われなかった場合は会社側が違法な解雇をしたことになます。
こうした違法解雇を「不当解雇」と呼びます。
解雇には「普通解雇」と「整理解雇」と「懲戒解雇」の3種類があり、それぞれ解雇の理由や性質が異なります。
解雇基準にも違いがあるので、あなたの解雇は不当解雇に該当するのか解雇の種類別に確認してみてください。
普通解雇とは?普通解雇の解雇要件
一般的に「解雇」で最も多いものは「 普通解雇」でしょう。
懲戒解雇のような特別な事情による解雇以外の場合を指すため、解雇理由の範囲は幅広くなっています。
普通解雇に該当するケースや、解雇要件は次の通りです。
普通解雇における解雇理由
普通解雇の場合、労働者側に解雇の起因があります。
普通解雇による解雇の理由は、主に次のようなものが挙げられます。
・能力不足
(会社が期待する能力や適格性がなく、勤務成績が良くない)
・勤務怠慢
(度重なる遅刻や早退、欠勤)
・職務規律違反、業務命令違反
(就業規則など会社のルールに従わない、上司の指示を聞かない)
・経歴詐称
(履歴書に記載していた経歴や資格に虚偽がある)
また、身心の健康状態の悪化による労働能力の低下も普通解雇に該当します。
ただし、この場合には休業していたとしても休業期間中とその後の30日間は解雇できないことが労働基準法第19条に定められています。
普通解雇の解雇要件
普通解雇の解雇要件は、大きくわけると2つあります。
次の2つの要件を満たしていない場合、その解雇は無効だと言えるでしょう。
要件1:解雇の30日前までに解雇予告通知を行う
普通解雇を行う場合、原則として解雇する30日前までに該当労働者に対して解雇の予告を行う必要があります。
このことは労働基準法第20条にも定められています。
突然解雇をすれば労働者への不利益が大きいため、解雇予告の制度が設けられているのです。
ただし、「解雇予告手当」を支払った場合には、解雇予告通知を行なわずに即日解雇することが可能です。
解雇予告手当は、通常の給与にプラスして支払われる30日以上の平均賃金になります。
要件2:正当な解雇理由がある
普通解雇を行うには、正当な解雇理由が必要になります。
解雇するには「客観的に合理的な理由」と「社会通念上相当である」ことが労働契約法に定められているからです。(労働契約法第16条)
ただし、「正当な解雇理由」として認められることは非常にハードルが高いものです。
例えば、規律違反であれば就業規則に違反しているだけではなく、就業規則や業務違反の趣旨を労働者に説明した上で労働者が従わない場合には懲戒処分などの処分を与え、それでも改善しない場合に普通解雇が認められます。
つまり、いきなり解雇するのではなく、会社が労働者に対して指導なども行った上で改善されないような場合にのみ適用されると言えます。
整理解雇とは?整理解雇の解雇要件
整理解雇とは、一般的に「リストラ」と呼ばれる解雇です。
会社の経営上の理由によって行われる解雇が該当します。
整理解雇に該当するケースや、解雇要件は次の通りです。
整理解雇とは
整理解雇とは、会社の経営不振など会社側の事情により人員削減の必要性が生じて行われる解雇です。
あくまでも会社側の経営上の理由になるため、普通解雇とは異なり、労働者側に非はありません。
そのため、整理解雇が有効となる要件は厳しいものになります。
整理解雇の解雇要件
整理解雇の解雇要素は大きくわけると4種類があります。
この4要素を総合的に検討して、整理解雇が合理的かどうかが判断されます。
要件1:人員削減の必要性
整理解雇を行うには、人員削減の必要性が不可欠だという場合でなければなりません。
ただし、会社の存続が危ぶまれるほどの経営危機ではなく、客観的に経営上状況を見て人員削減の必要性があると判断されるような状況であれば認められます。
要件2:解雇回避努力
整理解雇を行うことは、経営を立て直すための最終手段であると言えます。
そのため、整理解雇を行う前に会社は解雇を回避するための努力を行う必要があるのです。
例えば、早期退職の募集や、経営陣の報酬減額、会社の資産売却、賞与の減額などの努力を行った上で、解雇が行われなければなりません。
要件3:被解雇者選定の合理性
整理解雇を行う場合、誰でも解雇できるというものではありません。
解雇される労働者の選定基準を設け、その基準が客観的に見て合理的である必要があります。
気に入らないなどの理由で解雇することはできず、業務成績や解雇による打撃などが考慮されて選定されるべきです。
要件4:解雇手続きの妥当性
解雇を行う場合、労働者に対して事前に人員削減の必要性などを説明し、協議している必要があります。
もし説明や協議が行われず、いきなり解雇された場合は不当解雇に傾きます。
懲戒解雇とは?懲戒解雇の解雇要件
懲戒解雇とは、3種類の解雇の中でも特別な事例であると言えます。
労働者が何らかの重大な規則違反や非行を行った場合に行われる解雇であり、会社からの罰則とも言えます。
懲戒解雇に該当するケースや、解雇要件は次の通りです。
懲戒解雇とは
懲戒解雇とは、会社が労働者に対して行う制裁罰の懲戒処分の中で最も重い処分です。
労働者が会社の秩序を乱すような規律違反を行った場合に対して行われます。
窃盗や横領などが行われた場合や、重度のセクハラやパワハラを行った場合などに懲戒解雇が適用されます。
また、過去に同様の行為で紹介処分を受けたにも関わらず、改善されないような場合にも最終的に懲戒解雇になってしまうケースもあります。
懲戒解雇の解雇要件
懲戒解雇は普通解雇と異なり、解雇予告や解雇予告手当は必要なく、退職金も不支給や減額になってしまうことも多いです。
それほど懲戒解雇とは厳しい制裁罰であり、労働者にとっても解雇後に大きな影響を受けると考えられます。
そのため、懲戒解雇の解雇要件は普通解雇以上に厳しいものになっています。
要件1:就業規則等に懲戒事由及び懲戒の種類が明記されている
懲戒解雇は労働者にとって大きな不利益をもたらすものになるため、
就業規則に懲戒処分として解雇があり得ることや、どのような場合に懲戒処分になるのかということを明示しておかなければなりません。
中小企業で労働者の人数が少ないと就業規則が存在しないようなケースもありますが、この場合は事前に決めた懲戒解雇のルールが存在しないことになるため懲戒解雇は認められないことになります。
要件2:就業規則の周知性
懲戒解雇や懲戒処分に関することを就業規則に明記していたとしても、その就業規則を労働者が知り得なければ意味がありません。
そのため、就業規則は労働者が見たいと考えれば見れるような状態にある必要があります。
もし会社の役員が就業規則を管理していて申し出がなければ労働者は見られないような状況であった場合や、就業規則の開示を拒否された場合には、懲戒解雇が無効になる可能性があります。
要件3:解雇の合理的理由、社会的相当性
普通解雇と同様に、懲戒解雇でも「客観的に合理的な理由」と「社会通念上相当である」ことが認められなければ解雇は無効になります。(労働契約法第16条)
客観的に見て解雇はやむを得ないと考えるような理由であり、客観的に見て解雇処分が重いと考えられるような場合にも解雇が無効になります。
されたら、こう対処する
不当解雇の具体的なケースとは
解雇の種類をご紹介しましたが、いずれにしても解雇は簡単にできるものではありません。
具体的にどのようなケースが不当解雇に該当するのでしょうか?
不当解雇に該当するケースを紹介します。
・上司と反りが合わないことを協調性に欠けると言われ、解雇に追い込まれてしまった
・整理解雇されたが、会社から詳しい説明を受けていない
・就業規則には書かれていないような理由で懲戒解雇処分を受けた
こうした場合は、不当解雇である可能性が高いです。
ご自身で解雇の違法性を判断することが難しい場合には、労働問題に強い弁護士に相談してみましょう。
不当解雇だった場合や、違法かもしれない場合の解決の流れ
解雇の種類とそれぞれの解雇要件について紹介してきましたが、ご自身の解雇が「違法だ」「不当解雇かもしれない」という場合もあるでしょう。
こうした場合、次のような手順で解雇について確認や問題解決を行ってください。
解雇理由証明書の交付を請求する
解雇について疑問がある場合、まずは会社に解雇理由証明書の交付を請求しましょう。
解雇理由証明書には解雇理由が記載されているため、解雇理由を知ることができます。
会社は労働者が解雇理由証明書の交付を請求した場合、遅滞なく交付しなければならないことが法律で定められています。
(労働基準法第22条)
解雇の違法性を検討する
解雇理湯証明書が交付されれば解雇理由が明らかになるため、そこから解雇の違法性について検討を行います。
前項で紹介したいように解雇には「普通解雇」「整理解雇」「懲戒解雇」の3種類があります。
解雇の種類によって解雇要件が異なるため、ご自身の解雇理由の解雇要件を満たしているのか確認してください。
解雇の撤回を求め、会社と交渉する
解雇が違法だった場合には、会社に対して解雇の撤回を求めます。
また、解雇が無効であるにも関わらず労働者が会社で働くことができない場合には、解雇後の賃金の請求もすることが可能です。
(民法第536条)
そして、会社と解雇撤回に向けて交渉を行っていきます。
この交渉はご自身で行うことも可能ですが、交渉力以外にも法的な知識が必要になってくるので弁護士に依頼することをおすすめします。
労働審判、訴訟の手続きへ
会社との交渉で双方が合意に至らなかった場合には、労働審判や訴訟などの法的手続きを行うことになります。
労働審判とは、労働者と使用者の間に起こったトラブルを解決するための法的手続きです。
労働審判は原則として3回以内の期日で終わらせることになっているため、手続きが迅速に進むというメリットがあります。
しかし、当事者が異議申し立てをすれば審判の効力が失われ、通常の民事訴訟に移行します。
解雇に疑問がある場合は弁護士に相談しましょう
解雇に疑問があったとしても、どのように対処すればいいのか分からないという方も多いでしょう。
また、解雇された会社に対して交渉や請求を行うことは気が重いと考える方もいると思います。
しかし、解雇に違法性があった場合には、解雇撤回を主張する権利が労働者にはあるのです。
一人で解雇に関する疑問やトラブルを解決することは難しいかもしれませんが、弁護士に相談すれば心強いサポートを受けられます。
弁護士に相談すれば、まずは解雇に違法性があるのかどうか知ることができます。
そして、不当解雇だった場合には今後どうすべきか見通しを立てることができ、交渉や手続きなど全てを任せられるというメリットがあります。
解雇の撤回を求めるだけではなく、場合によっては解雇予告手当や未払の賃金、退職金なども請求することができるので、併せて相談してみましょう。
まとめ
もし会社から不当な解雇を受けた場合や、解雇理由に疑問がある場合には、速やかに専門家である弁護士に相談しましょう。
会社に解雇について問い合わせることや指摘することは容易ではありませんし、解雇を撤回してもらえる可能性も低いと考えられます。
専門家である弁護士が介入すれば不当解雇による問題もスムーズに解決することができ、精神的な心の支えにもなるでしょう。
一人で悩まずに、まずは無料相談などを利用して相談してみてください。
解雇で慰謝料請求できる場合もあります。
詳しくは、こちらの記事を読んでください。
解雇された場合の慰謝料請求と解雇無効を勝ち取る方法