不当解雇を弁護士に相談したほうがよい7つの理由
- いきなり解雇されたけれど、不当解雇ではないのか?
- 不当解雇されたら、元に戻れる?
- 解雇が正しいのか、不当なのかの判断基準を知りたい
- 不当解雇を弁護士に相談するメリットとデメリットは?
- 不当解雇で慰謝料や損害賠償を請求できる?
- 不当解雇の裁判の手続や費用は?
- 普通解雇
- 整理解雇
- 懲戒解雇
- 解雇通知書
- 解雇理由証明書
- 就業規則
- 労働契約書
- 労働条件通知書
- 会社とのやり取りを示すメール、メモ、指示書など
- 面談したときの録音
労働者にとって、解雇は死活問題です。
突然解雇されて給料を払ってもらえなくなったら、自分だけではなく家族の生活まで危うくなってしまうかもしれません。
今回は、不当解雇となるケースと対処方法、不当解雇されたときに弁護士に相談したほうがよい7つの理由をご紹介します。
目次
労働契約とは
まず、「解雇」というものは、何を意味するのか、その法律的な意味を説明します。
労働者と勤務先の会社の間には「労働契約」という契約が成立しています。
労働者は、契約があるからこそ、働いて給料を支払ってもらっている、ということになります。
労働契約とは、労働者が雇用主に対して労働力を提供し、雇用主がそれに対して給料(賃金)を払うことを内容とする契約です。
賃金の額や支払方法、昇給などについては個別の労働契約によって決まります。
入社時に「雇用契約書」や「労働契約書」を作成しますが、これは労働契約の内容を明らかにしたものです。
また、労働契約は「就業規則」によっても補完されます。
昇給や休日などの細かい基準についてはすべて労働契約書に書かれるわけではなく、「就業規則」に細かく書かれることにより、従業員に周知されています。
周知されている就業規則の内容は、労働契約の一部となっていると考えましょう。
労働契約には期限のあるものとないものがあり、一般的に「正社員」と言われている労働者の労働契約には「期限」がもうけられていません。
解雇とは
解雇は雇用者が一方的に労働契約を打ち切る行為
解雇とは、雇用者が労働者に対し、労働契約を一方的に破棄する行為です。
解雇が有効になると、雇用者と労働者との間の雇用関係がなくなるので、労働者は会社で働く義務がなくなりますし、会社は労働者に対して給料を支払わなくて良くなります。
確かに、労働者本人も会社をやめたいのであれば解雇されても特段問題にはならないかもしれませんが、実際には「働き続けたい」「給料が必要」であるにもかかわらず不当解雇されてしまう事例があり、問題が発生します。
労働者本人の意思にかかわらず、解雇が有効になったら労働契約が一方的に打ち切られてしまうからです。
そうなったら、労働者が「働くので給料を払ってください」と言っても、会社は「もはや契約関係がないから」という理由で一切応じてくれなくなります。
解雇が法的に有効なものであればやむを得ませんが、法的に無効な「不当解雇」の場合、労働者の権利が不当に制限され、立場が非常に危うくなってしまいます。
不当解雇されたときには、会社に対して労働契約の存続を主張し、未払賃金などの請求をすることが可能です。
解雇が「不当解雇」かどうかは、難しい法律判断です。
自分の解雇が不当解雇ではないか、と思った人は、一度弁護士に相談してみましょう
解雇と退職の違い
解雇と退職については混同されることもあるので、ここで違いを確認しておきましょう。
解雇は、先ほど説明したように、会社が一方的に労働契約を打ち切ってしまうことです。
労働者の意見を聞いてもらえない可能性がありえます。
これに対し退職は、労働者が自ら申し出て労働契約を解消することです。
基本的に労働者の意向がないと、退職は成り立ちません。
このように、解雇と退職は「それが労働者の意思にもとづくものか」という点で根本的に異なります。
自ら退職した場合、労働者の権利が不当に制限されたというわけではありませんので、その後に「不当解雇」と主張して労働契約の存続を主張したり未払賃金を請求したりすることはできません。
ただし退職であっても、会社から無理矢理退職届に署名押印させられたケースのように、強制的な「退職強要」であれば、不当解雇と同じ問題が発生します。
解雇が有効になるには、厳しい要件が必要なので、会社は、解雇する前に、退職勧奨をしてくることが多い傾向があります。
退職勧奨に応じて退職届けを出してしまうと、「自分の意志で退職した」ということで、後で解雇だとして争うのが難しくなるので、会社を辞めたくない場合には、決して退職勧奨に応じるべきではありません。
解雇にはどのような種類があるか
雇用者が労働契約を解消するための「解雇」ですが、実は複数の種類があります。
以下で、それぞれがどのような解雇手続きなのか、みていきましょう。
普通解雇
普通解雇とは、何らかの特殊な事情もない場合において、一般的に行われる解雇です。
たとえば会社の経営が悪化して存亡の危機に陥っているとか、従業員が重大な問題を起こして雇用を維持できないなどの問題がなく、単に従業員の勤務態度や能力、病気などを理由に解雇するケースが該当します。
普通解雇は、解雇すべき特段の事由がないので、解雇の要件が厳しく判断されます。
法律上解雇が認められない事情がないことはもちろんのこと、会社による解雇に合理的な理由があって社会的に相当な手続をとっていることなどが要求されます。
普通解雇が行われたときに「不当解雇」となって解雇が無効になるケースも非常に多く見受けられます。
整理解雇
整理解雇とは、会社の経営状態が著しく悪化し、そのまま雇用を維持すると会社が倒産してしまうおそれがある場合に行われる解雇です。
いわゆる「リストラ」の一方法です。
整理解雇が有効になるためには、整理解雇が必要であること、人選が合理的であることなどの要件が必要です。
整理解雇が無効となったケースでも「不当解雇」となり、労働者は会社に対し、労働契約の存続と未払賃金の支払いなどを要求できます。
懲戒解雇
懲戒解雇は、従業員が重大な問題を起こし、その背信性ゆえに労働契約を維持できなくなったときに会社が行う解雇手続きです。
懲戒解雇の場合には、労働者自身が問題を引き起こしているので、普通解雇ほどの厳しい要件を満たさなくても解雇できます。
ただし懲戒事由が解雇に相当する程度に大きなものであることが必要です。
小さな違反に対して合理性を欠く懲戒解雇をしても、解雇は有効になりません。
その場合にはやはり不当解雇となり、労働者は会社における地位を主張して、未払賃金の支払いなどを請求できます。
解雇が有効となる要件とは
以下では解雇が有効になる要件について、それぞれの解雇手続きについてみていきましょう。
普通解雇の場合
普通解雇の場合、以下の要件を満たす必要があります。
要件を満たさなければ、不当解雇として、解雇が無効となります。
解雇の適正な手続を踏むこと
1つは、解雇の適正な手続きが守られることです。
具体的には、雇用者側は労働者を解雇するとき、30日前に解雇予告をするか、その日数に足りない場合には解雇予告手当を払わなければなりません。
解雇予告手当は、その従業員の平均賃金を使って不足する日数分計算して支給します。
解雇権濫用にならないこと
もう1つの要件は、「解雇権濫用」にならないことです。
解雇権濫用とは、会社が不当に解雇権を行使することです。
そのようなことになったら労働者の権利や生活が危うくなるので、会社による解雇権濫用は法律で固く禁止されています(労働契約法16条)。
解雇が有効になるためには、「解雇理由の客観的合理性」と「解雇手続きの社会的相当性」が必要となります。
単に「他の従業員と比べて成績が悪い」「遅刻や欠勤が多い」「入社時に大学名を詐称していた」という程度の理由では解雇できません。
「それ以上雇用関係を続けることが、客観的にみて不可能」という程度に重大な事情でないと解雇できないと考えましょう。
解雇手続きの相当性としては、会社が解雇を回避するための努力をし続けたことが必要です。
たとえば繰り返し教育指導を行い、配置転換や異動、降格などの処分によって対応し、研修なども実施したが、なお改善の余地がない場合などにおいて、ようやく解雇手続きを検討可能になるイメージです。
解雇が「不当解雇」かどうかは、難しい法律判断となります。
自分の解雇が不当解雇ではないか、と思った人は、一度弁護士に相談してみましょう
整理解雇の場合
次に整理解雇のケースをみてみましょう。
整理解雇の4要件を満たすこと
整理解雇では「解雇の4要素」という4種類の要素を勘案して、解雇が不当解雇かどうかを判断します。
これらの要素は、これまでの判例の蓄積によって作られてきたものです。
具体的には以下の通りです。
人員整理の必要性
まずは、会社にとって整理解雇が必要であることです。
多少経営状態が悪くなっていても、整理解雇なしで状況を乗り切れるのであれば整理解雇は認められません。
解雇回避努力
会社が整理解雇をするときには、解雇を回避するための努力が求められます。
たとえば資産を売却したり不採算事業を縮小したり借入返済のリスケジュールをしたりなど、人員削減以外にもいろいろな方策が考えられます。
これらの解雇回避努力をしてもなお、人員削減しないと会社を維持できないケースにおいてリストラが認められる可能性が出てきます。
人員選定の合理性
整理解雇の対象となる人員選定の合理性も必要です。
リストラを機に気に入らない人を恣意的に解雇することは認められません。
たとえば年齢の高い人、給料が高くて企業に負担をかけている人、貢献度の低い人など、一定の基準を作って解雇する必要があるでしょう。
手続きの妥当性
整理解雇を行うに際し、従業員に対してきちんと説明を行い労働組合と協議するなどして、労働者による理解を得る努力を行うほうがよいでしょう。
解雇の適正な手続を踏むこと
整理解雇のケースでも、解雇予告や解雇予告手当は必要です。
懲戒解雇の場合
懲戒解雇の場合には、以下の要件を満たす必要があります。
満たさなければ、不当解雇です。
懲戒権の濫用にならないこと
確かに問題を起こした従業員は解雇されてもやむを得ないケースがありますが、解雇権の濫用は認められません。
解雇をする場合にも、解雇の合理性や相当性が必要となります(労働契約法15条)。
つまり、従業員が起こした問題のレベルに対し、解雇処分が重すぎると解雇権濫用として解雇は無効となります。
また懲戒解雇をするとしても、適正な手続を守らねばなりません。
「刑事事件で有罪になったら解雇できる」という定めをしていても、それが実際に解雇するほどの事由でなければ解雇は認められません。
就業規則に懲戒に関する規程がある
会社が労働者を懲戒解雇するには、必ず就業規則で懲戒に関する規程をおいておく必要があります。
就業規則なしにいきなり懲戒解雇をすると従業員側にとって不意打ちとなるので、有効にはなりません。
解雇が無効になる場合とは
会社が解雇を行ったときに「不当解雇」として無効になるのは、以下のようなケースです。
そもそも解雇が認められない場合
法律上、そもそも解雇が認められないケースがあります。
たとえば思想や信条、性別などを理由とする解雇、産休や育休、介護休暇を取得したことを理由とした解雇、結婚や出産を理由とした解雇、業務災害による休業明け一定期間内における解雇、労働組合活動を理由とした解雇などです。
このように、解雇が認められないのに解雇を行ったら、どのような手続きを踏んだとしても不当解雇として解雇が無効になります。
解雇権、懲戒権の濫用となる場合
次に「解雇の合理性、社会的相当性」の要件を満たしていない普通解雇や「整理解雇の4要件」を満たしていない整理解雇、「懲戒権の濫用」にあたる懲戒解雇は無効となります。
解雇の手続き的要件を満たしていない場合の取扱いについて
解雇予告を行っておらず、解雇予告手当も支払っておらず解雇の手続き的要件を満たしていない場合、解雇は無効になるのでしょうか?
この場合には、即時に解雇の効力は発生していませんが、解雇通知後30日が経過した時点もしくは解雇通知後に解雇予告手当を支払ったときに、解雇の効果が発生すると考えられています(昭和35年3月11日)。
解雇が無効になった裁判例
東京地裁平成19年6月22日 トラストシステム事件
派遣社員のシステムエンジニアが、派遣先でメールを私的利用したり私的に要員派遣業務をあっせんしたりしたことが服務規律に違反し、また職務遂行能力も不足しているとして解雇された事例です。
裁判所は、メールの使用は服務規律に違反するけれども過大に評価できるものではなく、要員の私的なあっせんについては明確に事実認定できず、職務遂行能力も解雇が必要なほど低いとは言えないとして、解雇理由を認めませんでした。
結果として、会社による解雇を無効と判断しています。
最高裁平成元年12月14日 三井倉庫港運事件
「必ず会社の労働組合に加入すべき」というユニオンショップ協定のある会社において、その労働組合を脱退して別の労働組合に加入した従業員が解雇された事例です。
裁判所は、ユニオンショップ協定によって労働者に特定の労働組合への加入を強制することは許されないと判断しました。
そこで、会社の労働組合を脱退・除名されたものが他の労働組合に加入、結成したことを理由に解雇することは認められないと判断し、会社による解雇は解雇権の濫用として無効とされました。
以上のように、解雇された場合に不当解雇として無効と判断されるケースは多々あります。
解雇通知を受けたからといって泣き寝入りしなければならないとは限りません。
不当解雇された場合、どうすれば良いか
もしも会社から不当解雇されたら、どのように対応すれば良いのでしょうか?
解雇理由証明書の発行を求める
まずは会社に対し「解雇理由証明書」の発行を求めましょう。
解雇理由証明書とは、会社が考える「解雇理由」を書いた書類です。
解雇理由証明書を見ると、会社が当初にどのようなことを理由として解雇をしたのかが明らかになります。
後に労働者が解雇の無効を争ったとき、解雇理由証明書に書かれている理由が正当なものでなかったら、解雇が無効と判断される可能性が高くなります。
後になってから解雇理由を追及すると、会社が言い分を変えることがあるので、解雇された当初に解雇理由証明書を入手しておきましょう。
不当解雇の証拠を集める
次に不当解雇の資料を集めましょう。
以下のようなものが重要です。
会社に内容証明郵便を送る
不当解雇であることの証拠が揃ったら、会社に対して内容証明郵便で解雇無効と地位確認、未払賃金、場合によっては慰謝料や損害賠償を求める請求書を送りましょう。
その後会社と交渉をして未払賃金を払ってもらい、会社に残る合意をするか、退職して慰謝料など損害賠償金を払ってもらうか決めましょう。
労働審判を申し立てる
内容証明郵便を送っても解決できない場合には、労働審判を申し立てて裁判所で解決を目指します。
裁判をする
労働審判でも解決できない場合には、最終的に労働裁判をして解決します。
裁判で不当解雇が無効になっている事例も多々あるので、諦めずに弁護士を頼りましょう。
不当解雇であっても、会社と交渉し、または裁判をするのは素人では難しいといえるでしょう。
一度弁護士に相談することをおすすめします。
不当解雇された場合に弁護士への相談をおすすめする理由とは
不当解雇されたら、なるべく早めに弁護士への相談をおすすめします。
以下でその理由をお伝えします。
不当解雇かどうかの適切な判断をしてもらえる
解雇されたとき、それが不当解雇なら訴えて復職したり、慰謝料など損害賠償を請求したりできますが、正当な解雇なら転職活動を始めて次に進んだ方が良いでしょう。
しかし実際には、不当解雇になるのかどうかわからなくて対応に困る方は多く見受けられます。
弁護士に相談すると不当解雇かどうか、法的な観点から適切に判断できるので、対応を決めやすくなります。
不当解雇の証拠の集め方をアドバイスしてもらえる
不当解雇されたら、証拠を集める必要があります。
ただ自分一人ではどのように証拠を集めて良いのかわからない方も多いですし、どのようなものが有効な証拠となるのかわからない方もいるでしょう。
弁護士に相談すると、不当解雇の証明に有効な証拠や、それぞれの証拠の集め方について、アドバイスを受けられます。
弁護士が代理で会社と交渉してくれる
労働者が自分で内容証明郵便を作成したり会社に送付したりするのは大変な手間ですし、やり方がわからない方も多いでしょう。
弁護士に相談すると、内容証明郵便の作成や送付、その後の会社とのやり取りなども任せられるので、手間が省けます。
会社が真面目に対応する可能性が高まる
不当解雇されたとき、労働者本人が会社に対して「不当解雇」と主張したり内容証明郵便を送ったりしても、会社側が軽く考えて対応しないケースが多々あります。
弁護士に相談して弁護士名で内容証明郵便を送ってもらえたら、会社も「放っておいたら裁判になるかもしれない」と考えるので真剣に対応する可能性が高くなります。
弁護士が労働審判や労働裁判も代理で進めてくれる
会社と交渉をしても合意できない場合には、裁判所で労働審判や労働裁判の手続きを進める必要があります。
しかしこれらの裁判所の手続きを行うときには、申立書や各種の書面作成が必要ですし、証拠をきちんと揃える必要もあります。
相手の主張に対して的確に反論することも重要といえるでしょう。
特に裁判になった場合、きちんと対応しないと敗訴して不当解雇を認めてもらえなくなり、かけた時間も労力も費用も無駄になります。
弁護士は裁判手続きの専門家なので、労働審判や労働裁判を任せていれば適切な方法で進めます。
特に裁判になったとき、弁護士を付けていれば本人はほとんど裁判所に出廷する必要すらなく、労力や時間も省けます。
精神的に安心を得やすい
会社と不当解雇問題について争っていると、労働者には大きな精神的負担がかかります。
会社と直接交渉すると、あることないことを言われて傷つくことも多いでしょう。
弁護士に任せてしまったら、会社との交渉は弁護士が行うので、労働者が直接対応せずに済みます。
ストレスが小さくなり、日常生活や次の転職活動などに注力できるようになります。
弁護士に対処方法を相談できる
不当解雇として争うとき、本当に会社に戻るのか、最終的にはやめて次の職場を探すのか迷われる方が多いです。
やめるなら雇用保険などの問題もあり、どうなるのか気になることが多くて混乱してしまいます。
弁護士に相談していれば、さまざまな問題点を整理できますし、会社に戻るのが良いのかやめて慰謝料など損害賠償金を受けとるのが良いのかなど相談できます。
雇用保険制度や受給方法などについても調べてもらえるので、トラブル解決後の対応も安心といえるでしょう。
まとめ
不当解雇されたとき、一人でできることは限られているので、弁護士に対応を依頼することが望ましいと言えます。
泣き寝入りする前に、まずは労働問題に強い弁護士に相談してみるのが良いでしょう。
不当解雇の問題を、一人で解決するのは困難といえます。
一度弁護士に相談してみましょう。