労働審判を申し立てられた時の弁護士の選び方
労働審判とは,労働審判官(裁判官)1名と労働関係に関する専門的な知識と経験のある労働審判委員2名で構成された労働審判委員会が,個別労働紛争を原則として3回以内の期日で審理する紛争解決のための手続です。
労働審判を申し立てられると,裁判所から,申立人が裁判所に提出した申立書の写し,証拠書類の写しとともに第1回期日の指定及び答弁書作成期限が記載された呼出状が送られてきます。
この第1回期日は,申立日から40日以内に指定されます。そして,申立書にかかれた事実の認否を明らかにし,反論をまとめた答弁書を裁判所と申立人(申立代理人)に提出しなければなりません。この答弁書の提出期限は,第1回期日の5~7日前に指定されます。
ですから,労働審判を申し立てられた場合には,約1ヶ月で事実確認を行うと共に,必要であれば反論のための証拠を吟味した上で解決方針を決定し,答弁書を作成しなければなりません。
しかも,労働審判では,当事者が早期に主張及び証拠の提出をし,手続を計画的,かつ素早く進めなければならないため,申し立てられた相手方(通常は会社側になるかと思います)としては,第1回期日までに全ての主張及び証拠の提出をするよう努めなければなければなりません。
しかしながら,本来の会社の業務に加え,このような労働審判の対応を行っていくことは実際には時間的にも困難であることが多く,また,答弁書を作成しても,もしその記載内容に矛盾が生じていたり,法律の解釈が誤っていたりした場合には,取り返しがつかない事態にもなりかねません。
そこで,申立書を読み,事件の内容をある程度確認したら,すぐに専門家である弁護士に相談しましょう。
とはいっても,いきなりまったく知らない弁護士とお話しをするのは不安に思われるかもしれません。知り合いに弁護士がいる場合には,まずはその弁護士に相談してみるのもよいでしょう。
知り合いがいない場合や,知り合いの弁護士が労働事件に詳しくない場合等,弁護士を自分で探さなければならない場合には,インターネット検索が便利です。検索すると,労働事件は多くの法律事務所において取扱案件として掲げられていることに気付かされると思います。
しかしながら,実際に労働事件に集中的に取り組んでいる弁護士はそれほど多くはありません。
前述のように,労働審判においては,原則として3回以内の期日で審理がなされ,答弁書等の提出期限も短く,迅速性・専門性が強く要求されますので,弁護士であれば誰でもいいというわけにはいきません。
しかも,労働審判制度自体が平成18年という比較的最近から始まった手続ですので,実際に経験している弁護士もそれほど多くはないのが現状です。
したがって,多くの弁護士の中から労働事件に集中的に取り組み,労働審判も経験している労働事件に強い弁護士を選ばなければなりません。
それでは,どのようにして労働事件に強い弁護士を選べばよいでしょうか。
その答えは,実際に担当弁護士と会って相談をすることに尽きます。
とはいっても,直接,法律事務所を訪ねても,すぐに相談することはできませんので,まずは電話で問い合わせて予約を取ります。
予約の際には,簡単に事案の内容を聞かれると共に,面談の時に持参してほしい書類等の指示があると思います。効率的に事件を解決していくために,指示に従って書類をきちんと集めて準備しましょう。
面談相談の中では,疑問点に対する的確な回答がなされているか,手続の流れや今後の見通しをわかりやすく丁寧に説明してくれているか,費用が予算にあっているか,といった点を確認しましょう。
また,労働事件においては,労働実務にどれだけ精通しているかも重要になってきますので,遠慮せずに,面談相談の中で実際に経験した労働事件の件数等も確認されるとよいかと思います。
他にも,事務所の所在地が自宅に近い,弁護士の対応が迅速であることも重要です。
なお,面談相談において,弁護士費用のことばかりをいう法律事務所や,そもそも弁護士が対応しない事務所,面談相談の後に弁護士と連絡を取ろうとしても弁護士となかなか連絡がつかない法律事務所には要注意です。
面談の際の弁護士の姿勢が,そのままその後の事件の解決に向けた弁護士の姿勢をあらわしています。面談の際に熱心ではない弁護士は,事件の取り組みも熱心ではないことが多いです。
もっとも,面談相談をして判断するとしても,手当たり次第に面談相談するわけにもいきませんので,実際に面談相談を受けるかどうかを決める際には,労働法に関するホームページの記載が詳しいか,労働法に関する書籍を出版しているか,相談料は無料か,といったことを踏まえて,法律事務所を絞るとよいかと思います。
以上の点を踏まえ,実際に面談相談をしてから,当該弁護士に依頼するかどうかを判断するようにして下さい