労働審判の答弁書の書き方(一般論から、ポイントまで)
裁判所から突然「労働審判期日呼出状」という題名の書類が届くことがあります。
これは、会社が従業員や従業員であった者から労働審判が申し立てられてしまったことを意味します。
この呼出状には、第1回期日の指定とともに答弁書作成期限が記載されたもので、この作成期限までに答弁書を作成することとなりますが、呼出状に記載がされている労働審判の期日まで残された時間は、約1か月程度でしょうから、その期間内に、申立人の主張を精査するとともに、証拠となる資料を収集するとともに、申立人に対する反論書面を作成しなければなりません。
この反論書面が答弁書ということになります。
今回は、この答弁書をどのように書けばいいのかについて説明をさせていただきます。
目次
答弁書の記載事項
答弁書には、非訟事件手続規則第一条第一項各号に掲げる事項のほか、
①申立ての趣旨に対する答弁、
②申立書に記載された事実に対する認否、
③答弁を理由づける具体的な事実、
④予想される争点及び当該争点に関連する重要な事実、
⑤予想される争点ごとの証拠、
⑥当事者間においてされた交渉(あっせんその他の手続においてされたものを含む。)その他の申立に至る経緯及び概要
を記載することになります。
ここで、非訟事件手続規則第一条第一項各号に掲げる事項とは、当事者及び利害関係参加人の氏名又は名称及び住所並びに代理人の氏名及び住所、当事者、利害関係参加人又は代理人の郵便番号及び電話番号(ファクシミリの番号を含む)、事件の表示、附属書類の表示、年月日、裁判所の表示のことをいい、これらは形式的に記載が必要となります。
また、予想される争点についての証拠書類があるときは、その写しを答弁書に添付しなければならず、答弁書を提出するには、これと同時に、その写し三通(労働審判委員及び相手方分)を提出しなければなりません。
申立ての趣旨に対する答弁
まず、答弁書には、申立人が申立書に記載している申立の趣旨に対する答弁を記載することとなります。申立人の主張に理由がない場合には、「本件申立てにかかる請求をいずれも棄却するとの労働審判を求める。」との記載をすることになります。
申立書に記載された事実に対する認否
次に、申立書には、申立人が主張する事実が記載されていますので、主張する事実が真実であれば「認める」、事実でなければ「否認する」、知らない場合には「不知」として、個々の事実ごとに記載します。
もっとも、裁判のように細かな認否をする必要性はさほど高くないとされていますが、申立人と相手方の争点が明確になるように心掛け、具体的な事実関係の主張については、③答弁を理由づける具体的な事実で記載すると良いでしょう。
答弁を理由づける具体的な事実及び④争点に関連する重要な事実
ここでは、申立書に記載されている「相手方から出されると予想される争点」について、会社側の主張を明らかにするとともに、他に主張すべき事実がある場合には、その主張をもれなく行う必要があります。既に、争点に対する申立人の主張がされていると思いますので、申立人の見解が妥当ではないことに加え、可能であれば申立人の見解によったとしても理由がないということを主張するとよいでしょう。
また、ポイントとしては、申立書に対抗して、会社側の主張の正当性や、労働審判手続に向けての姿勢をアピールすることが重要です。たとえば、争点を検討した結果として重要と考える関係者の話を労働審判の場で聞いてもらいたいと考える場合には、当日労働審判に出席する関係者を記載することもよいでしょう。
予想される争点ごとの証拠
③及び④の主張を根拠づける証拠についての記載です。
ここで、会社側の主張を基礎づけるものとして、会社の社員等の供述等の場合には、それぞれの陳述書の提出を検討しなければなりません。特に、その関係者が労働審判当日に出席できないような場合には陳述書を必ず提出することになりますが、それであっても浪々審判委員会は直接供述を聞きたいと考えると思いますので、重要であると考える関係者がいる場合には、必ず出席をさせるようにしましょう。
当事者間においてされた交渉その他の申立に至る経緯及び概要
ここの記載については、労働審判委員会が調停案を示す際に参考にされることとなります。
事件の内容や会社の方針にもよりますが、和解する姿勢がある場合には、従前から相手方は正当な主張をしていたこと等を記載し、労働審判手続には協力的な姿勢を示すと良いでしょう。
以上、労働審判が申し立てられた場合の答弁書の書き方について説明をしてきました。
労働審判手続の審理において提出が予定されている書面は、申立人の主張及び立証計画を記載した申立書と相手方の主張及び立証計画を記載した答弁書のみとなりますので、労働審判の勝敗を決するのは答弁書の記載内容によるといっても過言ではありません。
しかし、繰り返しになりますが、答弁書の提出までには約1か月程度と時間があまりないのも事実でしょう。
したがって、労働審判が申し立てられたら、まず労働分野に精通した弁護士に早急に相談をすることを強くおすすめします。