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労働審判(解雇)の答弁書勝てる書き方のコツ

最終更新日 2015年 03月02日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

解雇した社員から解雇無効の労働審判を申し立てられた場合、会社としてはどのように対応すればよいでしょうか。

 

まず、労働審判とは、労働審判官(裁判官)1名と労働関係に関する専門的な知識と経験のある労働審判委員2名で構成された労働審判委員会が、個別労働紛争を原則として3回以内の期日で審理する紛争解決のための手続です。

 

労働審判を申し立てられると、裁判所から、申立人が裁判所に提出した申立書の写し、証拠書類の写しとともに第1回期日の指定及び答弁書作成期限が記載された呼出状が送られてきます。会社としては、この答弁書を提出することによって申立人の主張を争っていくことになります。
 

第1回期日は、申立日から40日以内に指定され、答弁書は、第1回期日の5~7日前までに提出する必要があります。申立書にかかれた事実の認否を明らかにし、反論をまとめた答弁書を提出期限までに、裁判所と申立人(申立代理人)に提出しなければなりません。
 

そのため、答弁書を作成するにあたっては、まず約1ヶ月で事実確認を行うと共に、必要であれば反論のための証拠を吟味した上で解決方針を決定しなければなりません。
しかも、労働審判では、当事者が早期に主張及び証拠の提出をし、手続を計画的、かつ素早く進めなければならないため、申し立てられた会社としては、第1回期日までに全ての主張及び証拠の提出をするよう努めなければなければなりません。
 

したがって、答弁書作成のためには、まずは申立書に記載された事実が本当にあったのかどうか、実際あった事実と異なる点はどこか等を確認することが重要です。

 

このときに、時系列表を作成し、一度経緯を整理することをお勧めします。申立人が時系列表を作成して提出してくることもありますが、その内容が誤っている場合も少なくないため、会社側としても時系列表を作成した方がよいからです。

 

その上で、争われている事項に対し的確に反論等を行っていく必要があります。
また、反論等を行う際には、ただ答弁書に記載するだけでなく、根拠となる証拠に基づく必要があります。

それでは、解雇の効力を争うという労働審判が申し立てられた場合、答弁書にどのようなことを記載すればよいでしょうか。

 

普通解雇(能力不足)の場合

申立人としては、解雇権の濫用にあたり解雇は無効である旨主張してくるものと思われます。

 

この点、労働契約法第16条では、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」とされていますので、会社としては、能力不足が就業規則の解雇事由に該当するということだけでなく、解雇が客観的に合理的な理由に基づくものであることを答弁書で説明する必要があります。

 

具体的には、人事考課の内部資料等を証拠として申立人の客観的な能力不足を説明するとともに、配転等解雇以外の代替手段の検討や申立人に改善の機会を与えたが功を奏さなかったこと等を説明する必要があります。また、採用時に一定の能力を有することを条件としていた場合には、採用条件、採用の経緯等の内容も明らかにする必要があります。

 

懲戒解雇の場合

申立人としては、懲戒権の濫用にあたり懲戒解雇は無効である旨主張してくるものと思われます。

 

この場合には、まず就業規則の懲戒処分根拠規定を示した上で、申立人の行為が当該懲戒事由に該当すること、懲戒解雇という処分が社会通念上相当であることを説明していく必要があります。

 

相当性に関しては、裁判例上、懲戒権の根拠として企業秩序遵守義務違反があげられているため、申立人の行為によって企業秩序が害されたこと、例えば、職種上特に許されない行為を行った(例えば運送会社での飲酒事故等)、社内で力を入れて取り組んでいる事項に対する違反行為があった、というようなことを説明していく必要があります。さらに、当該行為によって、会社にどのような支障が生じたのかも説明する必要があります。

懲戒解雇は最も重い処分であるため、懲戒解雇以外の手段はなかったということをいかに説明できるかが重要です。

 

整理解雇の場合

整理解雇の場合には、いわゆる整理解雇の四要件(四要素)として、①人員削減の必要性、②解雇回避努力、③人選の合理性、④手続の相当性が問題となります。

 

①については、削減の必要性を証明するため会社の業績や経営計画を説明していく必要があります。

②については、整理解雇を回避するために会社がどのような努力を行ったのかを説明する必要があります。

③については、なぜ当該労働者を整理解雇の対象としたのか、合理的な理由を説明する必要があります。

④については、労働者及び労働組合とどのようなやりとりがあったのか、整理解雇の必要性や内容等について十分に説明する必要があります。

 

労働審判では、答弁書をどれだけ充実させられるかによって、結論が左右されると言っても過言ではありません。

もっとも、会社側としては、本来の業務もありますから、答弁書の作成にばかり時間をかけるわけにはいきません。

 

労働審判の申立書が届いた場合、充実した答弁書を作成することが難しいと感じたら、専門家である弁護士に相談した方がよいでしょう。

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