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問題社員トラブルから会社を守る!6つの事例集&対処法

最終更新日 2019年 11月27日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

目次

問題社員トラブルから会社を守る!6つの事例集&対処法 その1

これまで多くの問題社員に関する相談を受けてきました。
その中から代表的な事例をご紹介します。

 

対処法についても解説していますので、ぜひ参考にしてください。

 

事例1:経歴詐称

東大を卒業し、その後外資系の証券会社を経て、スタンフォード大学でMBAを取得したという34歳の男性を中途採用した会社。
社長は、もちろんその働きには大いに期待していました。しかし実際は、まったく仕事ができず、アメリカに留学していたというのに英語もほとんどできません。

 

おかしいと思い、大学や前の職場に問い合わせてみると、経歴が虚偽であることが発覚しました。卒業証明書などは、すべて偽造だったのです。中途採用した前提がまったく異なり、高い給与を払うのも無駄ですから、「経歴を偽った」として即刻、懲戒解雇にしたいといいます。

 

問題点を法的に解説

経歴詐称は、一般的には懲戒事由として定められているので、懲戒解雇の前提条件は満たしそうです。しかし、懲戒解雇は最も重い処分であるため、そう簡単に認められるかが問題です。

 

どう対処法するか?

裁判例上、このような事例では懲戒解雇の可否の可否が検討され、結果として多くのケースでは懲戒解雇は認められています。

 

そもそも、懲戒は企業秩序を乱した場合に認められるものですが、経歴を詐称しただけでは、必ずしも企業秩序を乱すことにはならないとも思えます。しかし、労働契約は使用者と相互の信頼関係に基礎を置く継続的な契約関係で、会社が必要かつ合理的な範囲内で申告を求めた場合、社員は信義則上、真実を告知する義務を負うとされています。

 

最終学歴の詐称(過大申告)は、社員の労務提供に対する会社の評価を誤らせ、高い給与が支払われたり、人事コースが異なったりすることによって、その後の労務管理にも支障をきたすことは明らかです。

 

また、職歴の詐称に関しても、中途採用では仕事内容が賃金設定に大きく影響します。実際に高い賃金を支払っているなどの事情があれば懲戒解雇の対象となるでしょう。したがって、今回のケースでは懲戒解雇とすることになります。

 

なお、この事例とは異なりますが、学歴・職歴の詐称ではなく、犯罪歴の詐称だったらどうでしょうか。過去に、痴漢や傷害などで逮捕・起訴され有罪になったことがある社員が犯罪歴を隠していたケースです。

 

結論として、このようなケースでは懲戒解雇は一般的に難しいと考えられています。
前述のように、会社が必要かつ合理的な範囲内で申告を求めた場合、社員は信義則上、真実を告知する義務を負うとされていますが、過去に痴漢で有罪となったことと、例えば、営業の仕事は基本的には関係ありません。

 

犯罪歴詐称で懲戒の対象となりうるのは、経理の仕事に就きながら、過去に他社で背任や横領を働き有罪になったなど、かなり限定されたケースでしょう。

 

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問題社員トラブルから会社を守る!6つの事例集&対処法 その2

事例2:遅刻・早退・無断欠席

今年から新卒で雇い始めた社員が、入社当初から正当な理由が無い遅刻や無断欠席を繰り返しているといいます。また「体調が悪い」といって頻繁に早退もするようです。
風邪などで本当に体調が悪いのであれば仕方ないのですが、他の社員の目撃情報によると、早退した日に合コンをしていたとのことで、虚偽の理由で早退していたことが明らかになりました。

 

社長は、最初の数ヵ月は「まだ学生気分が抜けないのだろう」と注意をしながらも、大目に見ていましたが、もう10ヵ月も経つのに改善の気配が一切ないようです。
このような責任感のない社員を解雇したいといいます。

 

問題点を法的に解説

遅刻や無断欠席、虚偽の理由による早退は、本来果たすべき労働契約上の義務を果たせていないのですから、当然、「労働契約の債務不履行」、すなわち普通解雇事由にあたります。

 

ひとつの問題として、会社としてはどのような手続をとって解雇すべきか、どこまでやれば「解雇権の濫用」と判断されることを回避できるかという点です。
また、普通解雇とは別に懲戒解雇事由に該当するかも問題となります。

 

どう対処するか?

普通解雇について

遅刻等の出勤不良は、会社に与えられた仕事をしていないわけですから、債務不履行として普通解雇事由にあたります。

 

しかし、先に述べた解雇権濫用の法理(「当該具体的な事情のもとにおいて、解雇に処することが著しく不合理であり、社会通念上相当なものとして是認することができないときには」解雇権濫用として解雇が無効となるとされるもの)との関係で、一度の遅刻等では解雇は有効とされません。何回もくり返され、その積み重ねによって業務遂行のうえで問題が生じるような場合には有効と判断されるのです。

 

例えば以下のような対応が考えられます。

 

①書面で注意を与える
②3か月程度勤務態度をチェックする。その間、日常業務の中でも注意を与え、その都度、注意内容、反応を記録に残す。
③改善されなければ、解雇以外の懲戒処分(譴責・減給など)を実施
一定期間勤務態度をチェックする。その間、日常業務の中でも注意を与え、その都度、注意内容、反応を記録に残す。
④改善されなければ、出勤停止
⑤改善されなければ解雇

 

なお、遅刻・早退と比べて、無断欠勤はより業務に与える影響が大きいので、例えば、勤務態度のチェックを1ヵ月とするなど、短いスパンで見ていってよいでしょう。

 

懲戒解雇について

次に、懲戒解雇が可能かどうかですが、実際に認められた例はあります。

 

まず、正当な理由のない遅刻・早退に関して、これが繰り返されれば、企業秩序を乱したとして懲戒解雇が認められます。
認められた事例では、所定の手続をとらず、7回早退を繰り返し、会社からその都度注意され、文書での注意も2回受けたにも関わらず改善せず、過去にも3回同様の問題で出勤停止の懲戒処分を受けていました。

 

会社としては、早退に関して所定の手続を就業規則に定め、それに違反する都度社員に書面で注意し、出勤停止等の懲戒処分を経たうえで、懲戒解雇とすることになります。

 

また、無断欠勤の場合、それ自体企業秩序を乱すものとして懲戒事由には該当しますが、懲戒解雇まで踏み切れるかは、やはりケースバイケースです。
私傷病の場合、診断書等を提出させ、休職させたうえで退職もしくは普通解雇とするほうがよいでしょう。

問題社員トラブルから会社を守る!6つの事例集&対処法 その3

事例3:電子メールの私的利用・備品持ち帰り

ある社員が業務時間中、会社のパソコンで友達とメールのやりとりをしているようです。
パソコンもメールアカウントも仕事のために与えているものですから、私的利用はしないように注意しているのですが、改善されないといいます。

 

また、別の社員は、会社のボールペンや付箋、コピー用紙などを持ち帰り、自宅で利用しているようです。注意すると、「仕事上使っていたものをたまたま持ち帰ってしまっただけです」、「明日、持ってくれば問題ないでしょう」などと言うそうです。そもそも、どのくらい備品の持ち帰りをしているのか把握できていないようです。

 

社長は、「どれも大した金額のものではないのですが、やはり許せません」と怒っています。対処法はあるでしょうか?

 

問題点を法的に解説

まず、電子メールの私的利用ですが、メールに熱中するあまり業務に支障をきたしているということであれば、債務不履行として普通解雇事由にあたり得ます。

 

しかし、仕事はきっちりとしている場合は、普通解雇はできません。「電子メールの私的利用が企業秩序に違反する」として懲戒の対象になるかが問題となります。

 

また、備品の持ち帰りは、刑法上の「窃盗」もしくは「横領」等にあたる場合もあると考えられますが、具体的にはどのように対処すべきか問題となります。

どう対処するか?

「メールの私的使用について」
原則として懲戒対象とすることは難しいでしょう。

 

もちろん、社員には「職務専念義務」があるので、同義務に違反しているといえるほどの頻度でメールし、まったく仕事しないのであれば、普通解雇事由に該当します。しかし、1日に数回程度のメールであれば、社会生活を送る以上、日常の社会生活を営むうえで通常必要な外部との連絡として許されるべきですし、メールを使用することの会社の経済的負担はほとんどありません。

 

このような理由から電子メールの私的利用は、業務に支障をきたさない限り懲戒の対象とはならないとされています。逆に、業務に支障をきたしているのであれば、書面による注意を経て、改善されなければ、普通解雇や場合によっては懲戒を検討することになるでしょう。

 

会社としては、就業規則に「原則として電子メールの私的使用を禁止」と定めたうえで、それを周知徹底し、業務に支障をきたすほどの電子メールの私的利用があれば懲戒を検討していくことになります。

 

「備品の持ち帰りについて」
備品は会社の所有物なので、ボールペン等を持ち帰ると刑法上の「窃盗罪」、または「横領罪」に当たります。被害額が軽微であっても、完全に自宅に持ち帰り、自宅で使用しているのであれば犯罪です。懲戒や、場合によっては「刑事告訴」が考えられます。

 

ただ、懲戒するにしても、被害額が軽微であれば、いきなり懲戒解雇は重すぎるので、書面での注意を経たあと、戒告等の比較的軽微な懲戒処分を下すなど、段階を踏むことになるでしょう。

 

「メール調査・所持品調査はできるか?」
ところで、これら懲戒等の対象の前提として、会社は社員のメールや持ち物を調査することはできるのでしょうか。これには、社員のプライバシーと経営上の必要性との衝突の問題が出てきます。

 

電子メールについては、社会通念上相当な範囲を逸脱した閲覧・調査がされない限り、適法とされています。例えば、横領や情報漏えいなど企業秩序違反が生じたケースだと、会社は当然、事実関係確認のためにメールの調査が可能です。情報漏えいを防ぐなどの目的で電子メールの利用状況を調査する行為も許されます。

 

反対に違法となるのは、社会通念上相当な範囲を逸脱した調査ということになります。
例えば、立場上、対象社員を監督・調査する立場にまったくないにもかからず、好奇心でメールの内容を確認する場合などが考えられます。

 

所持品検査に関しては、裁判例では以下の要件が必要とされています。

 

①検査が合理的理由に基づいて行われること
②検査の方法ないし程度が一般的に妥当なものであること
③制度として画一的に実施されるものであること
④検査が就業規則等明示の根拠に基づいて行われること

 

もっとも、所持品検査が身体に及ぶ身体検査の場合は、より慎重な対応が求められるでしょう。
警察でさえ身体検査には、それなりに重い要件が課せられているのですから。

 

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問題社員トラブルから会社を守る!6つの事例集&対処法 その4

事例4:能力不足・協調性不足・有休の取得

あるメーカーでの事例です。

 

新卒一括採用したある社員を営業部に配属したのですが、6ヵ月経ってもまだ、ひとつも契約がとれていなく、こんなことは初めてだそうです。そもそも、このような社員を雇った会社が悪いと言われればそれまでかもしれませんが、本当にいつも人前でおどおどしていて、お客様に不安を与えているようです。慣れもあるかと思い半年も使っていましたが改善されないため、このような営業能力がない従業員を早急に解雇したいと考えているようです。

 

また、同じく新卒一括採用した社員を製造部に配属したのですが、製造部長からの報告によると、とにかく協調性がなくて困っているとのことです。製造部は、特にみんなで協力して行う仕事が多いので、個々の能力よりも協調性をもって周りに合わせながら、いかにスムーズに作業を行うかが重要なのですが、その社員は、作業が始まった途端にトイレに行ったり、部署内であいさつを徹底する運動を行っているのに、まったくあいさつせず他の社員とコミュニケーションをとれないそうです。

 

しかも、この社員だけ大学卒であることからか、どうやら他の社員を見下すような態度をとるらしく、製造部の他の社員は不満を抱えているようです。結果として、製造部全体の生産性が落ちているため、この社員を解雇したいようです。

 

さらに、経理部に、とにかく周りの空気を読まずに年次有給休暇をとりまくる社員がいるようです。もちろん、有休は就業規則で決められているものですし、取得すること自体問題ないのですが、四半期に一度の決算の直前の時期に限って有休を取得するとのことです。

 

その社員が休むことで、しわ寄せが経理部の他の社員に及び、ただでさえ忙しいため、経理部内は戦々恐々となるようです。有休の申請をされた際、経理部長が、その時期は避けて他の時期に取得するよう説得するのですが、「権利ですから!」と言って聞き入れないとのことです。

 

問題点を法的に解説

能力不足」、「協調性不足」、「有休の取得」を理由に社員を解雇することは可能でしょうか。能力不足の社員を雇っていても会社に何のメリットもないですし、協調性不足の結果、他の社員または部署の全体の士気・生産性に関わるのであればやはり辞めてもらいたいところです。

 

年次有給休暇も、日本企業においてはいわば「空気を読む」ことが求められているので、他の社員に不公平感を覚えさせる結果、ある意味「企業秩序を乱す行為」として懲戒の対象にならないでしょうか。

 

どう対処するか?

能力不足を理由とする普通解雇

まず、新卒一括採用者を、能力不足を理由に普通解雇することは難しいと言わざるをえません。

 

というのも、日本の場合、新卒の採用段階では、配属先も業務内容も決められていないケースがほとんどでしょう。つまり、具体的な職務遂行能力が労働契約の内容として特定されているわけではないのです。この場合、営業で契約が取れなかったからといって、債務不履行つまり普通解雇事由には当たりません。配置転換を行うか、それができないのであれば、やるべきことをやっているのか、会社が徹底指導するしかありません。

 

なお、新卒でも職種が限定されているスペシャリストの場合、一定期間の十分な教育を行い、支援体制も確立し、現実に支援していたにもかかわらず、まったく成果が上がらないようなケースでは、予定されていた仕事ができなかったのですから、債務不履行として普通解雇事由にあたる可能性はあります。

 

他方で、一般事務職の場合は新卒一括採用者よりもさらに普通解雇は難しいといえるでしょう。労働契約の内容と能力の関係について、総合職よりさらにその関連性が薄いため債務不履行とは言い難いのです。

 

これに対して中途採用者の場合は、何らかの能力が期待されていることが多いので、例えば前職が営業で、営業として採用されたのであれば、債務不履行には該当しやすく、あまりに能力が不足している場合は普通解雇が可能となるでしょう。

 

協調性不足を理由とする普通解雇

協調性不足により、業務に支障が出ているのであれば、債務不履行として普通解雇事由にあたりえます。

 

しかし、解雇権濫用の法理から、いきなり普通解雇したのでは無効と判断されるでしょう。企業規模にもよりますが、大企業であれば2~3回の配転は試みるべきです。配転の前提として、協調性不足のため配転すること、次の部署では協調性をもって働くよう指導し、改善の機会を与える必要があります。それでも改善されない場合は、解雇は社会通念上相当であり有効とされるでしょう。

 

これに対し、従業員が50人以下のような中小企業の場合、配転は困難なケースが多いので、配転なしに解雇することになります。しかし、やはり突然解雇というのは無効と判断される可能性が高いので、厳重な注意を重ね(当然、書面により証拠を残しておきます)、態様によっては懲戒処分も行い、それでも改善されない場合は普通解雇とすることになるでしょう。

 

有給休暇取得を理由とした懲戒について

有休の取得は社員の権利である以上、基本的にそれを妨げることはできず、所定の手続をとっての有休取得は注意や懲戒の対象にはあたりません。

 

しかし、労働基準法では会社に「時季変更権」、すなわち「事業の正常な運営を妨げる場合」には、他の時季に変更する権利を認めています。したがって、今回のケースでは、会社は時季変更権を行使し、時季変更命令を下しているとして、この命令に反した社員は、戒告等の懲戒の対象となってもよいとも思えます。

 

ところが、問題はそう簡単ではありません。実際の裁判例をみていくと、民間の会社で時季変更権を行使して適法と認められた例がほとんど存在しないのです。

 

現実には、繁忙期に社員に休まれると、他の社員にしわ寄せがいきますし、会社全体として困るのは確かです。むしろ、このようなときに時季変更権が認められないのであれば、時季変更権が法律上認められている意味がないようにさえ思えます。

 

にもかかわらず、裁判所が時季変更権の行使を簡単に認めないのは、日本企業における慢性的な人手不足を背景としています。「そもそも、業務量に対して人が少なすぎる」との考えの下、裁判所は会社に時季変更権の行使を認めないのです。結局、民間企業では基本的には時季変更権は認められないと考えていた方が無難です。

 

一応、半月にも及ぶ長期休暇であれば時季変更権は認められやすいとされていますが、それでも行使には慎重になるべきでしょう。現実的には根気強く、他に条件を提示するなどして説得したり、平常時から繁忙期には助け合えるようなコミュニケーションをとっておくことが大切になります。

 

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問題社員トラブルから会社を守る!6つの事例集&対処法 その5

事例5:社員による情報漏えい

【ケース①】
デジタルカメラなどのイメージセンサーを研究・開発・製造し、メーカーに卸している会社のケースです。

 

この業界は競争が激しく、技術も日々進歩していくのですが、この会社は社員を家族と考え、全社員が一体となってつねに最先端の製品を開発してきたそうです。しかし最近、競合大手にこの会社が開発中のイメージセンサーの情報が漏れてしまいました。調査の結果、研究部の課長が多額の金銭と引換えに情報を漏らしたということが発覚しました。

 

もちろん辞めてもらうつもりだそうですが、具体的にはどのように対処したらよいのかを知りたいとのことです。

 

【ケース②】
過去数年間、経営が厳しく、法人税がとても支払えないので、帳簿を改ざんし、脱税をしていた会社の社長さんのケースです。

 

これは社長自身の私欲のためではなく、会社が潰れれば社員全員が路頭に迷うことになるからだといいます。そうした事情があったのに、経理部のある若手社員が脱税のことを税務署に通報してしまいました。

 

今後、会社がどうなるかはわかりませんが、その社員は会社の重要な秘密を洩らしたわけですし、一緒に仕事をすることも難しいので解雇にしたいと考えているとのことです。

 

問題点を法的に解説

社員による企業秘密の漏えいは、多くの場合、就業規則上、懲戒事由に定められているはずです。したがって、懲戒処分を行っていくことになります。さらに、会社が被る損害に関して損害賠償請求も考えられますし、競合大手会社に対しては「不正競争防止法」を理由とした差止請求や、刑事罰の可能性もあるでしょう。

 

しかし、②のようなケースで懲戒の対象とするのは明らかに正義に反すると感じられます。

 

どう対処するか?

【ケース①】で会社の損害が甚大であれば、懲戒解雇も有効とされるでしょう。

 

もちろん、問題の社員に対して損害賠償請求していくことも可能です。実際、一社員に対して損害賠償請求したところで、回収できる賠償金は会社が被った損害を補填するものになりえない場合がほとんどでしょう。しかし再度、同様のケースを生まないためにも、損害賠償請求までして、会社の厳格な態度を示しておくのもひとつの方策だといえます。

 

情報漏えい先の競業他社に対しては、営業秘密不正使用として、不正競争防止法により差止請求を行います。さらに、取得行為そのものに関しては、取得者と競合他社と共に刑事罰の対象であるとして刑事告訴することになるでしょう。

 

【ケース②】のように、社員が漏らした秘密が脱税等、会社の違法行為を告発するものであった場合、懲戒処分が無効とされる場合があります。

 

しかし、本当に無効と判断されるか予見困難であるため、このような内部告発を容易にするために「公益通報者保護法」が平成18年に制定されています。

 

同法に定められた手続に沿って内部告発が行われた場合、その内部告発は違法でないとされ、懲戒の対象とはなりません。会社としては、告発された違法行為が真実であれば、たとえ会社に多大な損害が生じたとしても、当該社員を処分することなどできないでしょう。

 

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問題社員トラブルから会社を守る!6つの事例集&対処法 その6

事例6:借金の取り立て

中高生を対象とした予備校でのことです。
地域での評判もよく、少子化が叫ばれるこのご時世、生徒は年々増え続けていました。

 

ところが最近、社員である講師A氏に対して、やくざ風の3人の男が借金の取り立てが来るようになったとのこと。彼らは、突然校舎内の職員室に現れ、「Aはいないか!金を受け取りに来たよ!」と大声で、しかし、にこやかに職員室内を歩き回るのだそうです。

 

A氏は、最初のうちは隠れるなりしていたのですが、職員室内にA氏がいないのを確認すると、彼らは授業中の教室を一つひとつ回っては、「Aはどこで授業しているのかな?」、「お金を借りたのに返さないんだよ!Aは悪い奴だね!」と、大声で話しながらA氏を探し回るようです。

 

授業は妨害され、生徒や他の社員はおびえて、当然この事実は保護者にも伝わり、社長は予備校の評判が落ちているのが心配だといいます。A氏を早急に解雇して問題を解決したいというご相談です。

 

問題点を法的に解説

私生活上の問題で会社に損害を与えているわけですから、A氏のような社員は懲戒の対象となるようにも思えます。

 

しかし、暴力団等による取立てはそもそも違法行為です。このような場合でも、企業秩序を乱したとして、A氏を懲戒の対象としてもよいのでしょうか?

 

どう対処するか?

私生活上の行動は、原則として懲戒の対象になりません。

 

会社と関係のないところで借金を重ねていたとしても、基本的に労務提供に支障はありませんし、企業秩序を乱すことにつながりません。例外としては、私生活上犯罪を行い、裁判で有罪となった場合などです。

 

このケースでも、借金をしていたことをもって懲戒の対象とはできません。また、暴力団が取立てに来たとしても、懲戒解雇等の処分を行うことはできないでしょう。なぜなら、そもそも暴力団等による職場への取立ては違法であり、社員に非はないからです。

 

違法な取り立ては、刑法上の恐喝罪にあたりえますし、債権者が貸金業法上の貸金業者であれば、貸金業法にも違反することになります(貸金業法21条では「人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動」が禁止されており、具体例として「正当な理由がないのに、債務者等の勤務先その他の居宅以外の場所に電話をかけ…(中略)…又は債務者等の勤務先その他の居宅以外の場所を訪問すること」などが規定されています)。

 

したがって、会社としては毅然とした態度で対応し、即刻建物内から出て行くことを求め、出て行かなければ、警察を呼ぶ等の措置をとることになります。

 

仮に、直接の取立てでなく、取立ての電話が頻繁にかかってきて業務に支障をきたしている、といったケースであれば、録音していることを相手に伝え、相手の名称を確認した上で、貸金業法に違反していることを伝えて当該行為をやめるように求めるとともに、登録貸金業者の苦情・相談先に相談し、場合によっては「架電禁止の仮処分」等の法的手段も検討することになります。

 

とは言っても、頻繁に起こる違法な取り立て行為に対応するのは会社にとっては多大な損失ですし、何とかしたいところです。
前述のように懲戒の対象とはできませんが、問題の社員に対し、弁護士に依頼し債務整理手続をとるように勧める等、根本的な解決を促しましょう。本人も、取立てにより会社に迷惑をかけていることは(もちろん悪いのは借金取りですが)認識しているはずなので、何とかしようとするはずです。

 

会社に体力があるなら、賃金を支払った上で、2~3ヵ月勤務を免除し、その2~3ヵ月の間で解決するように促すのもひとつでしょう。また、配転が可能な企業であれば、業務上の必要性があるとして、配転すべきですし、強要に至らない程度の退職勧奨をすることも可能です。

 

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