社員の労働時間の管理を怠ると…痛い目をみます!
労働法関係のトラブルで多いものとして、「解雇」、「いじめ」がありますが、それ以外にも、「残業代請求」、「問題社員」、「パワハラ」、「セクハラ」など、さまざまなトラブルがあります。
ここでは、実際に裁判で争われ、結果として会社が不利益を被った事案を解説します。
これを知ったらもう、「社内の問題なんて大したことない」などとは思っていられなくなるでしょう。
ケース1:未払い残業代請求
東京地裁判決 平成23年9月9日
●トラブルはこうして起きた
ある会社では、タイムカードの設置や就業規則の作成をせず、出退社の管理を怠っていました。
しかも、社員が再三タイムカードの導入を求めたにもかかわらず、社長はそれも拒否していました。
そこで社員は、パソコンにファイルを保存する際に保存時刻が表示されることを利用し、パソコンのフォルダ内に出退社時刻を保存・記録。
会社に対し、未払時間外手当及び同手当と同額の付加金の支払いを求めました。
「付加金」とは……使用者が「労働基準法」で定められている時間外・休日・深夜労働の割増賃金の支払義務に違反した場合、社員からの請求によって、裁判所が未払賃金とは別に、使用者に支払いを命じることができる金銭です。
付加金は、諸般の事情を考慮した上で、裁判所の裁量によって金額が定められます。
その額は、最大で未払賃金と同一額まで定めることができます。
例えば、仮に未払賃金が500万円の場合には、裁判所は会社に対し、未払金と付加金をあせて1000万円まで支払いを命じることができることになります。
つまり、社長は未払賃金の2倍の金額を支払わなければいけない可能性があるのです!
●判決内容をチェック
裁判所は、パソコン内に記録された出退社時刻が信用できると認定し、社員が作成した出退社時刻の記録をもとに、会社に対し残業代37万4318円の支払いを命じました。
さらに、会社が社員からの再三の申出があったにもかかわらずタイムカードの設置を拒否するなど出退勤管理を怠ってきた経緯を踏まえ、付加金30万円の支払いも命じました。
●問題を法的に解説
37万円と聞くと、たいした金額ではないと思うかもしれません。
しかし、残業代を請求する権利のある社員が他にもいる場合にはどうでしょうか?
最初に請求してきた社員だけでなく、他の社員からも請求されてしまったら……その金額はどんどん膨らんでしまいます。
しかも、付加金まで認められると、その金額はさらに2倍に跳ね上がります。
例えば、20人の社員が名乗りをあげ、すべての社員について上記裁判例と同じ金額が認められたらどうなるでしょうか?
この場合、会社が支払わなければならない金額は、なんと1348万6360円にもなるのです!