解雇された場合の慰謝料請求と解雇無効を勝ち取る方法
【動画解説】不当解雇で慰謝料を請求する方法
目次
解雇とは
労働者は、会社と労働契約を締結して、労務を提供し、その対価として給与を受け取ります。
労働契約も、契約である以上、お互いの合意に基づいて成立しています。
解雇とは、このようにお互いの合意に基づいて成立した労働契約を、会社側から一方的に解消するものです。
しかし、会社側が、自由にいつでも解雇できるとすると、給与によって生活している労働者の地位が不安定になります。
そこで、解雇が有効となるためには、一定の制限があります。
労働基準法では、解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とするとされています。
解雇が無効ということであれば、職場に復帰することもできますし、労働者の地位があることになるので、その間の給料の請求をすることができるはずです。
では、解雇が不当解雇で無効になった場合には、どのような請求をすることができるでしょうか。
不当解雇の場合に請求できること
解雇が不当解雇で無効になった場合には、次のような請求をすることができます。
①職場への復帰
②未払い賃金の請求
③慰謝料の請求
④残業代の請求
①職場への復帰
解雇が無効ということになると、労働契約が継続していることになりますので、労働者の地位があることになり、職場に復帰することができます。
しかし、現実には、自分を解雇したような会社には戻りたくないという気持ちになることが多く、職場復帰を望まない場合も多いです。
その場合には、金銭解決として、会社からいくらかの和解金を受け取って退職することになります。
②未払い賃金の請求
解雇が無効ということになると、解雇された後も労働者の地位があるということになります。したがって、解雇された以降の賃金を請求することになります。
しかし、すでに再就職してそこで給料を受け取っている場合には、就職後の期間については、何割か金額が減額されることになります。
③慰謝料の請求
解雇が無効であり、職場に復帰し、未払い賃金を受け取れば、それで解決のはずですが、解雇が悪質であり、労働者の精神的苦痛が大きい場合には、不法行為として、慰謝料請求権が発生することがあります。
例えば、解雇理由が全く存在しないのに解雇された場合や、解雇する際の手続きで労働者の名誉を侵害するような行為があったような場合には、通常の解雇と異なり、労働者の精神的苦痛が大きいとして、慰謝料請求が認められる場合があります。
過去の裁判例で、解雇の慰謝料を認めたものをご紹介します。
被告会社は、配属先を海外旅行情報誌企画営業と信じさせるような社員募集広告をしました。その結果、原告が応募し、内定に至ったところ、入社直前に同業務縮小を理由として配属先変更を求めましたが、原告は同意しませんでした。
すると、被告会社は、同意しないことを理由として内定を取り消しました。
この事案に対して、裁判所は、本件内定取り消しは、最初の配属先を海外旅行情報誌とする始期付解約権留保労働契約が成立し、配属先変更に合理的理由がないので不法行為が成立するとしました。
そして、原告に対する慰謝料は、失業状態となっていた間の前勤務先の賃金に相当する165万円が相当であるとしました。(東京地裁平成15年6月30日判決)。
④残業代の請求
解雇の無効主張して、会社と交渉し、あるいは、裁判を起こすときには、未払い残業代があるときは、一緒に未払い残業代を請求することも多いです。
その場合には、労働時間などを主張立証していく必要がありますので、会社の就業規則や時間管理の記録など、証拠を集めておく方が有利になります。
解雇の種類
解雇には、大きく分けて、3種類があります。「懲戒解雇」「普通解雇」「整理解雇」の3種類です。
「解雇」とは、法律的にいうと「使用者(会社)による労働契約の一方的な解約」ということになります最高裁は、簡単に解雇を認めない、というルールを作っています。
具体的には、法律の解釈として、
・客観的に合理的な理由がない解雇
・社会通念上相当と認められない解雇
は、会社が権利を濫用したものとして無効とするという判断をしています。
そして、労働契約法には、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と明文で定められています(16条)。
それでは、客観的に合理的な理由がある場合とはどのような場合を指すのでしょうか?
これは、大きく次のように分けられます。
(1)労働者の私傷病や非違行為など労働者の責めに帰すべき事由による場合
(2)労働者に規律違反の行為がある場合
(3)経営上の必要性に基づく場合
(4)ユニオン・ショップ協定に基づく組合の解雇要求があった場合
以上4つです。
次に、整理解雇とは、企業が経営上必要とされる人員削減のために行う解雇のことを指します。
整理解雇は、会社が経営上の理由だけで解雇とするもので、従業員の非によって解雇するわけではありません。したがって、判例においても、この整理解雇が権利の濫用にあたるかどうかについては、厳しく判断すべきこととされています。
具体的には、次の4つの要素を検討して判断されます。
(1)人員削減の必要性
(2)人員削減の手段として整理解雇を選択することの必要性
(3)解雇される従業員の選定の妥当性
(4)手続の妥当性(組合、従業員に対して説明、狭義を誠実に行ってきたか)
これに対して懲戒解雇は、従業員が服務規律に違反したり、会社の秩序を乱すような行為を行った場合に、その従業員に対する制裁の手段として、解雇という方法を選択することを指します。
懲戒解雇も自由に行うことはできません。解雇とすることについて強い必要性、相当性が必要です。
なお、懲戒処分の制度を会社で定める場合は、就業規則を作成する場合、就業規則に懲戒事由を定めなければならず(労働基準法89条9号)、かつ、その就業規則を従業員に周知させておかなければいけません。
また、この懲戒事由に該当した場合でなければ懲戒処分を下すことはできないので注意が必要です。
【参考記事】
「労働契約の終了に関するルール」国土交通省
慰謝料請求と解雇無効の段取り
いよいよ会社に対して、慰謝料請求と解雇無効主張していくときには、どのように行っていけばよいのでしょうか。
会社側は、解雇が有効であると主張することが予想されますので、最終的には裁判になることも覚悟しておきます。
裁判になると証拠が必要となりますので、出来る限り証拠を集めておくことが大切です。
まず、会社側の主張として、解雇ではなく、労働者から退職の意思表示がされたと主張されることがあります。
したがって、解雇の証拠を集めておくことが必要です。
解雇通知書等があればそれが証拠となりますが、解雇通知書がない場合には、解雇の際のやりとりを録音したり、解雇のやり取りのメールやLINEをプリントアウトしておきます。
次に、解雇の理由が分かっている場合には、その理由がないことの証拠を集めておきます。
例えば、能力不足が理由であるならば、能力があり良い成績を収めていたことなどの証拠を集めておきます。
そして証拠が集まったら、いよいよ会社に対して、慰謝料や解雇無効を主張していくことになります。
会社に対して請求をする方法
交渉
会社に対して、慰謝料や解雇無効を主張する場合には、まず、明確な意思表示をすることになりますので、内容証明郵便などの書面で意思表示をします。
そして、会社側の回答を待ちます。
会社側から回答があった場合には、交渉に入りますが、交渉の相手方が社長であったり、元の上司であったりする場合には、精神的な抵抗があると思います。
そのような場合には、弁護士を代理人に立てるという方法も検討することになります。
そして、交渉が決裂した場合には、法的手続きに入ります。
法的手続きとしては、労働審判と民事裁判があります。
労働審判
労働審判は、原則として3回以内の期日で心理が終わることになりますので、スピーディーに解決することができます。
シンプルな事案では、1回目の期日から和解案が提示されることも少なくありません。
民事裁判
民事裁判は、正式な裁判ですので、やはりある程度の期間がかかります。事案によってかかる期間は異なりますが、半年から1年はかかると思っておいた方が良いでしょう。
労働審判や民事裁判は、手続きとしてはやはり難しいので、弁護士に依頼して行った方が良いと思います。
【参考記事】
不当解雇を弁護士に相談したほうがよい7つの理由