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解雇に対する不服申立て方法は?│初期対応から不当解雇の判断基準まで

最終更新日 2024年 09月04日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

労働者の権利は手厚く守られており、簡単にクビにすることは出来ません。

万一解雇を言い渡されたら、その理由と手順が法律に沿ったものか確認しましょう。

不当解雇と断定できる場合は、弁護士の力を借りながら粛々と対応することで、
解雇を撤回させたり、解決金を支払ってもらう等、会社に相応の対処をさせることができます。

▼不当解雇だと思った時の3ステップ
・解雇理由証明書を請求する
・解雇理由と法律・就業規則を
照らし合わせる
・不当と感じた時は示談交渉や労働審判・裁判へ

 

解雇に対する不服申立ての流れ

解雇に対する不服申立ての流れ
自分に非があるとは思えないのに解雇されてしまった場合、
いきなり「不当解雇だ」と主張するのは悪手です。

以下のように、
まず会社の考えを確かめ、納得できないなら処分に対抗する流れをとりましょう。

解雇理由証明書を請求する

クビだと言われた時に確認しておきたいのは、雇い主が主張する理由です。

これを記載した「解雇理由証明書」を請求し、会社の言い分を書面で確かめましょう。

上記証明書を請求するのは、後になって「自己都合で退職した」と言われないようにするためでもあります。

正当な解雇理由に該当するかチェックする

解雇理由証明書を受け取ったら、労働者を解雇できる条件と合致しているか確かめましょう。

労契法第16条では、解雇について次のように定めています。

“解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。”

さて、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められる解雇は、実のところごく限られています。

ひどい勤怠不良、勤務成績不良、あるいは会社にとって重大な背信行為等がない限り、正当な理由のない「不当解雇」にあたる場合が多いです。

解雇理由証明書に記載されてはならない事項

会社が作成する解雇理由証明書には禁止事項があります。

就職の妨害を目的として、労働者の国籍・信条・社会的身分・労働組合運動に関する通信をし、その内容を“秘密の記号”といった形でも記載することです。

また、解雇理由証明書を要求されたにもかかわらず、発行を拒否した事業主には、労基法第119条で定める罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科されます。

会社に解雇を撤回してもらう【不服申立ての手段】

解雇理由証明書の内容から不当解雇と判断できる場合は、不服申立ての手段として以下いずれかの方法で抵抗できます。

詳細はこの後解説しますが、手始めにおすすめするのは、弁護士を代理人として示談での解決を目指す方法です。

・解雇の不当性を伝え、当事者で話し合う
個別労働紛争解決制度の利用
・裁判所が関与する手続き
(労働審判、労働裁判)

 

不当解雇か判断する基準

不当解雇か判断する基準
不当解雇の理由としてあり得るものの多くは、労働関連法ではっきりと禁止されています。

法律ではなく就業規則上の理由で解雇する場合も、個別の事情を労働契約法第16条にあてはめて「客観的・合理的で社会通念上相当とは認められない」と判断できれば、やはり不当解雇だと言わざるを得ません。

順を追って説明してみましょう。

法律で禁じられている解雇理由

法律ではっきりと「解雇してはならない」と定められる理由は、
以下A~Bのように分類できます。

A.労働者自身では変えられない事情による解雇
……国籍、信条又は社会的身分を理由とする解雇(労基法第3条)

 

B.傷病や妊娠・出産等を理由とする解雇
・女性労働者の婚姻、妊娠、出産を理由とする解雇(雇均法9条第2項・第3項)
・業務上の疾病による休業期間+後30日間の解雇(労基法第19条)
・産前産後休暇+後30日間の解雇(同上)
・裁判員裁判や投票等のための時間等を請求したことによる解雇
(労基法第7条・裁判員法第100条等)

 

C.会社にとって都合の悪い行動をとったことによる解雇
・労働組合の結成、加入、団体交渉参加等を理由とする解雇
(労組法第7条1号・4号)
・労基署への通報を理由とする解雇
(労基法第104条2項、労働施策総合推進法第30条の2第2項、雇均法11条2項)
・その他の会社の違法行為の通報を理由とする解雇
(公益通報者保護法3条柱書)

 

就業規則に則った解雇の取扱い

法律で禁止されていない理由だとしても、解雇するならその条件をあらかじめルールとして明確化されていなくてはなりません。

解雇事由を含む退職に関する事項は、労基法第89条で定められる就業規則の絶対的必要記載事項です。

さて、就業規則に基づく解雇には下記2種類があります。

1.普通解雇

普通解雇とは、労働者側のやむを得ない事情により、職責を果たせないと判断される場合の解雇です。

厚労省のモデル就業規則や過去の裁判例より、一般的な企業なら次のような事由が該当します。

加えて、普通解雇では原則30日前には労働者に予告し、解雇予告手当(最低30日分/労基法第20条1項)を支給しなければなりません。

・勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがない
・勤務成績等が著しく不良で向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない
・業務上の負傷または疾病により、療養開始後3年程度経っても治らない

なお「私用メールを送っていた」等と言った職場のルール違反等に関しては、
よほど能力不足であった等の事情がない限り、解雇が正当とはなかなか認められません(トラストシステム事件/東京地裁平成19年6月22日判決等)

2.懲戒解雇

懲戒解雇とは、労働者の非によって解雇される場合を指します。

この場合、会社が労基署の認定を受けることで、解雇する場合に支払うべきとされる解雇予告手当の支給が免除されることもあります。

・経歴詐称による入社(会社が正しい経歴を認識していれば採用しなかった場合)
・正当な理由なく無断欠勤が続いた時(目安は2週間)
・正当な理由なくしばしば欠勤、遅刻、早退をした時
・業務上横領や故意の情報漏えいにより、会社に損害を与えた時
・素行不良で社内の秩序及び風紀を乱した時(ハラスメント加害者も該当)

【関連記事】
突然の解雇は違法?!不当解雇になるケースや対処法を解説

 

経営難によるリストラにも要件がある【整理解雇の4要素】

会社の経営難によるリストラは「整理解雇」と呼ばれ、基本的には客観的・合理的な理由で社会通念上相当とされます。

ただし、下記4つの要素を総合考慮の上判断され、これらに基づいて不当解雇でないか厳しい判断がなされます。

1.人員削減の必要性は認められるか
……実際の経営状況等から判断
2.解雇回避の努力をしたか
……配置転換や希望退職者の募集等を事前に行ったか
3.人選の合理性
……解雇の人選が客観的・合理的で運用も公正か
4.解雇手続の妥当性は認められるか
……労働組合または労働者に対して、解雇の必要性とその時期、規模・方法について納得を得るために説明を行ったか

有期雇用の更新拒絶も不当解雇になる場合がある

期間の定めのある雇用では、突然契約更新の拒絶を言い渡されて仕事を失うケースがあります。

法律上、3回以上更新されている場合・1年を超えて継続勤務している人に以上の対応はあり得ず、無期雇用の人と同じように30日前までに解雇を予告しなければなりません(厚生労働省告示第357号より)。

その他、不当解雇には次のような形のものがあります。

契約期間中の雇止めは不当解雇にあたる

論外なのは、ここまで説明した客観的・合理的で社会通念上相当と認められる理由がないのに、契約期間の途中で会社を辞めさせられるケースです(労契法第17条)。

実質的に無期雇用と認められる場合の扱い

有期雇用を繰り返し更新して長く勤務している場合、実質的には無期雇用とされます。

つまり、法律で禁じられている解雇理由や普通解雇・懲戒解雇・整理解雇のルールに反していれば、不当解雇と判断される可能性が高いのです。

【関連記事】
違法な雇い止めは撤回させられる?雇い止めの撤回方法を解説

 

解雇の不服申立てに使える3つの手段

解雇の不服申立てに使える3つの手段
解雇に対する不服申立ての流れで説明したように、万一の時はまず会社との話し合いを試みます。

大抵の場合は応じないので、労基署や裁判手続を視野にいれておきましょう。
それぞれの方法を詳しく解説すると、次のようになります。

まずは会社に解雇の不当性を主張する

解雇の基準・ルールに沿って不当だと結論できた時は、まず会社に内容証明郵便を送り、不当解雇であると指摘しなければなりません。

送付する書面では、次のようなことを主張します。

・解雇が無効である
(今も雇用関係が続いている)
・以上の主張に伴い、今も賃金は発生し続けている

 
残る問題は「誰の名義で交渉するか」ですが、自分で交渉する自信がない場合は、代理人弁護士とするのが良いでしょう。

それだけで法的対処の用意があるとの情報が会社に伝わり、誠実な対応をするよう圧力をかける効果を持ちます。

労基署への相談・個別労働紛争解決制度の利用

会社が解雇の基準やルールを著しく逸脱しているようなら、最寄りの労基署や総合労働相談コーナーに事情を訴える手があります。

問題は、ただ相談しただけでは、労基署として何もしてくれない点です。

行政を通じて不当解雇問題を解決するには、個別労働紛争解決制度を利用する他ありません。本制度では、2つの手段を活用し、事業主と労働者との関係を調整してくれます。

・助言・指導:労働局長から事業主に対する改善の働きかけ
・あっせん:紛争調整委員会による当事者関係の調整+和解案の提示

 

会社を辞める方向で、ただ解雇予告手当や退職金等の相当の支払いを求めたいときは、あっせんが有効な手段です。

実際には制度自体にデメリットがあり、例えば、会社があっせんに応じないとしても罰則は何もありません。

そのため、令和2年度の調査では、あっせんで解決した労働トラブルは申請数のわずか3割程度に留まるとのデータが出ています。

裁判手続で解決する場合

会社がどうしても誠実な対応をしないようなら、裁判手続で解決するほかありません。

手続きの種類には「通常の訴訟提起」と「労働審判」の2つがあります。

いずれにしても、解雇の不当性(解雇権の濫用等)を証明する必要があるため、あらかじめどんな証拠を確保するのか・提出できるのか検討しておく必要があります。

労働審判とは

裁判官1名と労働審判員2名が加わり、事業主と労働者との話し合い(調停)で解決する仕組みです。

期日は3回あり、第1回の期日でトラブルについて整理した後に、第2回~第3回期日で双方の合意できるポイントを見つけます。

全体として、訴訟よりもスピーディな解決が望めます。

通常の訴訟(労働訴訟)とは

不当解雇につき「解雇無効・地位確認請求」や「損害賠償請求」のために行う民事訴訟の手続きです。

解決まで時間はかかりますが、しっかりと判例を検証して証拠を揃えることで勝訴すると、場合により経済的なメリットがあります。

未払いの解雇予告手当・残業代・年次有給休暇中の賃金等につき、付加金(労基法第114条)を獲得できる可能性があるのです。

【関連記事】
不当解雇を労働審判や訴訟(裁判)で解決するための手順を解説

 

勤務先に解雇された時の対応のポイント

勤務先に解雇された時の対応のポイント
勤務先に解雇された時は、焦らずに「今回の解雇の手続きの正当性は認められない」と主張することが大切です。

事業主が正しい手続きを踏んでいない=賃金は発生し続けているものとして、後々まとまった額の金銭で解決できる可能性が生まれるためです。

以降で解説する解雇直後の対応のポイントは、弁護士に依頼していれば漏れなく押さえられます。

就労継続の意志をはっきりと伝える

不当解雇だとある程度確信が持てる時は、そもそも処分が無効なのですから、はっきりと「就労し続ける意思がある」と伝えましょう。

労働者側の主張が認められつつも結果的に退職するとなった場合、最初の主張は、解雇予告手当や未払いの賃金等の請求根拠になります。

未払い賃金を計算する

次に行うのは、未払いとなっている賃金の計算です(下記一例)。

正当な理由なく解雇するような会社ですから、多くの場合は「頼まれなくても退職する」となるでしょう。

そうであっても、法律や雇用契約上で認められるお金はきっちり支払ってもらわなくてはなりません。

・解雇予告手当の金額
・休業手当(労基法第26条)
・残業代
(時間外・休日労働等の割増分等/労基法第37条)
・年次有給休暇中の賃金
(労基法第39条9項)
・支給規定に基づく退職金の額

 

【関連記事】
解雇された場合の慰謝料請求と解雇無効を勝ち取る方法

 

速やかに生活費確保のための手続きを行う

残る心配事はクビになった後の生活費ですが、結論を言えば、解雇の不当性等について争いが決着するまで受けられる補償はありません。

いったん使えるものとして考えられるのは、社会福祉協議会等で受け付けている給付金・貸付金等です。

ただし、退職勧奨で自己都合退職扱いにさせられてしまったケースは別です。

この場合は弁護士が介入し、会社都合退職(つまり正当な手続きを経た解雇)として扱いを変えることで、

解決金が支払われるまでの間に雇用保険の失業等給付で繋ぐ等、直近の生活費の問題を解決できる可能性があります。

おわりに│解雇された時はすぐ弁護士に相談を

解雇された時はすぐ弁護士に相談を
解雇には厳しいルールが設けられており、余程労働者の側に非がない限りはクビに出来ません。

また、解雇する場合も、予告期限や予告手当の支払いといった正当な手続きを踏む必要があります。

▼以下のような場合は弁護士に相談を
・差別による解雇
・結婚・出産・傷病を理由とする解雇
・産前産後休暇中または業務上の疾病等による休暇中の解雇
・上記期間後、30日以内の解雇
・会社にとって不都合な行為(労働組合加入や通報等)をしたことによる報復解雇
・その他、客観的・合理的で社会通念上相当とは認められない理由による解雇
・解雇予告手当等の未払い

 

いったん解雇して出社できなくなってしまうと、会社が労働者との連絡を断とうと逃げ回るかもしれません。不当解雇の証拠を掴むのも、きっと一苦労です。

もしもの時はすぐに弁護士に連絡し、今後の対応だけでも意見をもらうようにしましょう。

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