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退職願の撤回は認められるか?

最終更新日 2014年 09月30日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

退職願を提出した場合、法的には、労働者からの労働契約の合意解約の申込である「依願退職」の意味と、労働者から一方的に意思表示をして労働契約を終了する「辞職」の意味の2つが考えられます。

 

依願退職の場合は、労働契約を終了させるためには使用者の承認が必要なので、使用者の承諾があるまでは撤回ができますが(白頭学院事件 大阪地判平成9年8月29日)、辞職の場合は、その意思表示が使用者に到達した時点で解約告知としての効力が発生するため、撤回することができなくなります。

 

そこで、依願退職の場合と辞職の場合の意思表示をどのように区別するのかが問題となりますが、裁判例では、使用者の態度にかかわらず確定的に労働契約を終了させる意思が客観的に明らかな場合に限って辞職の意思と解釈し、それ以外の場合は合意解約の申込みと解釈する傾向にあります(大通事件 大阪地判平成10年7月17日)。

 

また、実際上は、就業規則で、労働者が退職をしようとする場合には使用者の承認を必要とする旨明記したり、引き継ぎなどのために退職日まで一定の期間あけていたりする場合が多いです。

 

したがって、退職願の提出は、通常は依願退職の意思表示であり、労働契約の解約にあたって使用者の承認が必要となりますので、使用者に不測の損害を与えるなど信義則に反すると認められるような特段の事情のない限り、使用者が承諾の意思表示をするまでは退職願の撤回が可能であると考えます。

 

なお、使用者の承諾の意思表示の形式については、就業規則に定めがあるなど特段の事情がない限り、一定の方式をとる必要はないとされていますが、裁判例をみると、承諾の権限をもつ者による承諾が必要とされており、直属の上司などに提出し承諾されたとしても、その上司が最終決定権限を持っていないような場合には、使用者の承諾として認められない可能性があります(岡山電気軌道事件 岡山地判平成3年11月19日)。

 

実務では、トラブルを防止するために、退職の承認の権限を有している者が誰かを明確にし、実際に承認がなされた場合には、承諾通知を出すなど形に残る方法で行うのが望ましいでしょう。

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