業務委託と偽装請負とは?
偽装請負とは、実質的には労働者派遣にあたるが、業務委託(請負)を偽装して行われているものをいいます。
労働者派遣とは、「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする」と定義されています(労働者派遣法2条1号)。
請負とは、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うこと内容とする契約をいいます(民法632条)。
請負の場合、注文者が請負人に対して仕事の内容について具体的に指揮命令をすることはできません。
また、注文者と請負人は雇用関係にはないため、請負人に労働基準法の適用はありません。
これに対し、労働者派遣の場合は、派遣元が派遣労働者に対して指揮命令を行います。
また、派遣元と派遣労働者は雇用関係にあるため労働基準法の適用があり、労働者派遣法では、派遣可能期間の制限(労働者派遣法40条の2)や、その他派遣元・派遣先が講ずべき措置として様々な事項が規定されています(労働者派遣法30~41条)。
したがって、偽装請負は、実質的には派遣元が指揮命令を行う労働者派遣でありながら、請負を偽装することで、労働法上の義務を免れることを目的として行われているのです。
偽装請負の典型例としては、
・A会社がB会社から業務処理を請け負い、Aの雇用する労働者XをBの事業場に派遣し就労させている状況において、Xの就労に関する指揮命令をBが行っているもの
・A会社がB会社から業務処理を請け負い、Aの雇用する労働者XをBの事業場に派遣し就労させている状況において、AがXの就労に関する指揮命令を行う責任者を置いてAが指揮命令を行う形式をとってはいるものの、実質的にはBが指揮命令を行っているもの
などがあります。
偽装請負と判断された場合は、偽装請負における派遣先は、労働者派遣事業主としての許
可や届出を行っていない業者から労働者派遣を受けていたことになりますので、派遣元事
業主以外の事業主からの労働者派遣の受入れの禁止規定(労働者派遣法24条の2)に違
反し、行政指導(労働者派遣法48条)や勧告(労働者派遣法49条の2第1項)の対象
となり、勧告に従わなかった場合は企業名公表の対象となります(労働者派遣法49条の
2第3項)。
なお、2012年3月に成立した労働者派遣法改正では、労働者派遣法の適用を免れる目
的で、請負その他労働者派遣以外の名目で契約を締結し、労働者派遣の役務の提供を受け
た場合には、当該偽装請負が開始した時点において、当該労働者派遣の役務の提供を受け
る者から当該労働者派遣に係る派遣労働者に対し、その時点における当該派遣労働者に係
る労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたものとみなすという規
定が新設されました(労働者派遣法改正40条の6第1項、2015年10月1日施行)。