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私生活上の非行を理由に懲戒処分できるか?

最終更新日 2014年 09月30日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

労働契約上の労働者の義務は労務の提供であり、労働時間外の私生活上の言動は労働者の自由です。

 

ですので、私生活上の非行は本来懲戒処分の対象にはならないといえそうです。

 

しかし、実際上は、懲戒事由として、「不名誉な行為をして会社の体面を汚した場合」や「犯罪行為を犯した場合」等の条項が就業規則で定められており、私生活上の非行についてもこれらの条項を根拠に懲戒処分の対象となるケースが見受けられます。

 

裁判例では、「従業員の職場外でされた職務遂行に関係のない所為であっても、企業秩序に直接の関連を有するものもあり、それが規制の対象となりうることは明らかであるし、また、企業は社会において活動するものであるから、その社会的評価の低下毀損は、企業の円滑な運営に支障をきたすおそれなしとしないのであって、その評価の低下毀損につながるおそれがあると客観的に認められるがごとき所為については、職場外でされた職務遂行に関係のないものであっても、なお広く企業秩序の維持確保のために、これを規制の対象とすることが許される場合もありうるといわなければならない」と判示し、労働組合活動に関連した公務執行妨害を理由とする懲戒免職処分を有効としたものがあります(国鉄中国支社事件 最高裁一小昭和49年2月28日)。

 

したがって、企業秩序に直接関連する行為や、企業の社会的評価を低下させるおそれがあると客観的に認められる行為については、私生活上の非行であっても懲戒処分の対象となると考えます。

 

実際には事案ごとの個別具体的な事情によって、当該懲戒処分が有効か否かを判断することになります。

 

上記裁判例の他に、懲戒処分を有効とした裁判例には、社宅における会社に関する誹謗中傷のビラ配布行為について、当該行為は労働者の会社に対する不信感を醸成して企業秩序を乱し、又はその恐れがあったとし、けん責処分を有効としたものがあります(関西電力事件 最高裁一小昭和58年9月8日)。

 

これに対し、懲戒処分を無効とした裁判例には、従業員が深夜酩酊して他人の家に入り込み、住居侵入罪として逮捕され2500円の罰金刑に処せられた事案で、行為の態様、刑罰の程度、職務上の地位等の理由から、懲戒解雇処分を無効としたものがあります(横浜ゴム事件 最高裁三小昭和45年7月28日)。

 

また、従業員が在日米軍基地反対運動で逮捕起訴された事案で、懲戒解雇について、「当該行為の性質・情状のほか、会社の事業の種類・態様・規模、会社の経済界に占める地位、経営方針及びその従業員の会社における地位・職種等諸般の事情から総合的に判断して、右行為により会社の社会的評価に及ぼす影響が相当重大であると客観的に評価される場合でなければならない」と判示し、従業員3万人を有する大企業の一従業員の当該行為が会社の体面を著しく汚したとは認められないとして、懲戒解雇処分を無効としたものがあります(日本鋼管事件 最高裁二小昭和49年3月15日)。

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