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労働審判で会社側が提出する証拠書類

最終更新日 2015年 08月03日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

労働審判とその準備

社員によって労働審判が申立てられ、答弁書作成期限記載された呼出状が送付されます。

 

申立日から40日以内に指定される第1回期日において、会社側は約1か月で事実を確認するとともに、必要であれば反論のための証拠を吟味した上で事案の見通しにしたがった解決方針を決定し、答弁書を作成しなければなりません。

 

労働審判では、当事者が早期に主張及び証拠の提出をし、労働審判手続の計画的かつ迅速な進行に努め、信義に従い誠実に労働審判手続を遂行しなければならないことからしても、会社としては、第1回期日までにすべての主張及び証拠の提出をするよう努めなければいけません。

 

そして、労働審判を行う裁判所(労働審判委員会)は、第1回期日に大まかな心証を持つことになりますので、提出された答弁書や証拠の巧拙が審尋の際の質問の組立や心証形成にも大きな影響を及ぼすことを十分に理解しながら短期間で証拠を検討し、答弁書の内容を充実させる必要があります。

 

では、会社が短期間で作成しなければならない答弁書において主張する事実を証明するための証拠書類としてはどのようなものがあるでしょうか。

 

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今回は、懲戒処分の有効性が争われる事案と残業代が請求された場合の事案について、会社側が提出する証拠書類をご紹介したいと思います。

 

懲戒処分の有効性が争われている事案

懲戒処分の有効性が争われる事案では、主な争点としては、懲戒処分の根拠規定の有無や、企業秩序違反とされる行為があるか、その行為が懲戒事由に該当するか、そして懲戒処分としての合理性が争点となるケースが多くなります。

 

懲戒処分の根拠規定としては、就業規則や労働契約書が上げられます。

 

ただし、懲戒処分当時に有効な就業規則に規定されたものでない場合には、懲戒処分の根拠規定として認められません。特に懲戒解雇の場合には、後にその有効性が争われることも少なくありませんので、現在適用されている就業規則が有効であるかどうか、特に就業規則を労働者に不利益に変更しているような場合には特に注意が必要です。

 

また、就業規則を労働基準監督署に届け出ていたとしても、それが労働者に周知されていない場合には効力を発しませんので注意してください。

 

次に、企業秩序違反とされる行為の有無についてです。

 

この点については、企業秩序違反とされる行為として主張する内容によって、提出する証拠は異なりますが、例えば遅刻や欠勤が多いことを立証するような場合には出勤簿やタイムカード、取引先からの苦情が多いことを立証するのであれば取引先からの苦情のメールや手紙等、能力不足のような場合には人事考課に関する書類や取引先からの苦情等の書類、経歴詐称であれば履歴書や求人広告等など、できるだけ客観的に立証できることが望ましいといえます。

 

また、それらを補うためには、上司や同僚の陳述書を作成することも多いでしょう。

 

次にこれらの企業秩序違反とされる行為が、懲戒事由に該当していることが必要です。

 

懲戒事由について、どのように定めるかについては、会社の規模や業容により異なるといえますが、その範囲で想定することができる事由について必ず定めるようにするとともに、「前各号に準ずる程度の不都合な行為があったとき」というような包括規定を定めることにより、完全に就業規則や労働契約書において定めた懲戒事由に該当しない場合であっても処分が可能となるようにしておくことが重要です。

 

最後に、懲戒処分としての合理性についてです。特に出勤停止や降格、解雇等の重大な処分を行う場合には、特にこの合理性が重要となってきます。

 

過去に業務命令違反や能力不足等で注意を行った場合には、それが口頭で行われているような場合には立証が困難と言わざるを得ません。そこで、社員に対し、注意や指導を行うような場合には、書面やメールで行うことによって、後に労働審判等で提出することができるようにすることが重要といえるでしょう。

 

以上、見てきたとおり、懲戒処分の有効性が争点となる場合には、後に証拠として提出することを想定して、就業規則が有効かつ十分に規定されているかを見直すことと、問題となる行為については記録をとり、その証拠を残しておくことが重要といえるでしょう。

 

残業代を請求された事案

会社が退職者や現在も会社に従業員として勤務している者から残業代を請求するケースが増加してきています。

 

労働者は、タイムカードやパソコンのデータ更新記録、運行記録、毎日の業務時間を記録した手帳等に基づいて残業代の請求がされることが一般的です。

 

これに対して、会社としては、残業が行われていないことや、残業代が既に支払われている等の反論が考えられます。

 

しかし、労働審判や裁判では、残業代の算出の基礎となる社員の労働時間を、具体的かつ客観的な事実として証明をすることができない場合には、従業員が主張するとおりの残業時間が認定されてしまう可能性が高く、その残業代を支払わなければならなくなります。

 

そこで残業が行われていないと主張する場合には、上司や同僚の陳述書だけでなく、会社の電子メールの記録や、インターネット等の閲覧履歴、職場内の防犯カメラ等の映像等の客観的な証拠を提出することで、会社にはいたが労働時間にはあたらないと主張していくことが必要となります。

 

また、固定残業代制を導入して、残業代が既に支払われていると反論することも考えられます。

 

しかし、有効な固定残業代としての支払いと主張するためには、残業代に相当する賃金であることや差額精算等の記載のある就業規則や労働契約書を証拠として提出するとともに、支給時に時間外労働時間と残業代の額が明示されている給与明細書等を提出する必要がありますが、私達の経験では、有効な固定残業代として認められる程度に就業規則等が整備されている会社は極めて少ないといえます。

 

したがって、会社としては、残業代が請求される場合に備えて、現在の就業規則等で有効な固定残業代の支払いとなっているかを見直すことが必要といえるでしょう。

 

以上のとおり、労働審判が申し立てられた場合には、様々な証拠を準備して反論を行う必要がありますが、一番重要なことは、日頃から労働審判や裁判が起こされた場合に備えて、就業規則や社員の管理方法について、弁護士等の専門家を交えて見直しをすることが極めて重要であるということがおわかりいただけたと思います。

 

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