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内部通報窓口・公益通報窓口を弁護士に依頼するメリットとデメリット

最終更新日 2024年 09月04日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

内部通報窓口・公益通報窓口を弁護士に依頼するメリットとデメリット

この記事を読むとわかること

 
会社内で水面下に発生している不正行為や違法行為、倫理違反(各種ハラスメントなど)を見過ごしていたり、放置したままにしていると、社会的信用度が低下し、業績悪化という結果を招きかねません。

そこで重要なのが、内部通報により、企業内部の問題を知る従業員などから、不正リスクなどの情報を入手し、早期に是正を図ることです。

その仕組みが「内部通報制度」で、そのために必要なのが「内部通報窓口・公益通報窓口」を社内に設置して、適切に運用していくことです。

本記事では、会社内での内部通報制度の導入や、内部通報窓口・公益通報窓口の設置について注意するべきポイントやメリット、欠かすことのできない知識と情報などについて詳しくお伝えしていきます。

 

目次

社内の不正や不祥事は会社の存続に大きく影響する

会社などの組織は、不正や不祥事を内部に抱えている場合があります。
たとえそれを知ったとしても、役員や従業員には「隠したい」「面倒なことに関わりたくない」といった心理が働いて、見て見ないふりをしてしまったり、口をつぐんでしまうといったことが過去、繰り返されてきました。

しかし、不正や不祥事を見過ごしてしまったり、そのまま放置していると、社会的信用度の低下や業績悪化を招いてしまい、会社を大きく揺るがす事態に発展する可能性があります。

コンプライアンス(法令遵守)の観点からも、経営者としては、リスクの芽が小さいうちに摘み取り、不正や不祥事が発見された場合はすみやかに対処して、できるだけ損害を拡大させないための管理や対策が必要になってきます。

そこで大切なのが、内部通報制度を導入し、内部通報窓口・公益通報窓口を社内に設置して、適切に運用していくことです。

内部通報と公益通報、内部告発の違いについて

内部通報とは、会社の従業員などが組織内で発生している不正行為や違法行為、倫理違反、その他の問題点を上司や特定の窓口に報告することです。

たとえばハラスメントには、さまざまな種類がありますが、暴行や脅迫、不同意わいせつなどの犯罪行為にあたる場合は、公益通報者保護法によって保護される内部通報に該当します。

公益通報とは、①会社の従業員などが、②不正の目的でなく、③勤務先における、④刑事罰・過料の対象となる不正を、⑤一定の通報先(事業者が定める内外の通報窓口、行政機関・報道機関など)に通報することをいいます。

なお、会社に属する役員や従業員が、その職務上で知り得た会社の不正行為などを捜査機関や報道機関などにリークする行為は一般的に内部告発となります。
すべての内部告発が公益通報に当たるわけではありません。

内部通報制度と公益通報者保護法の関係について

内部通報制度とは?

内部通報により、企業内部の問題を知る従業員などから、その情報を入手し、未然に防止し、早期に是正を図る仕組みが「内部通報制度」で、ホットラインなどと呼ばれる場合もあります。

法的には、以前は会社が内部通報制度を設けなければならないといった義務はありませんでしたが、現在ではコンプライアンス経営が厳格に求められる上場企業や大企業を中心に多くの企業が整備・設置しています。

内部通報は、企業の健全な経営を維持するうえで一定の効果があり、これまで多くの不正行為が明らかになってきました。
しかし一方で、通報者への報復などが行われる例もあり、課題も多いことから国も法改正などの対策を講じてきた流れがあります。

そこで、通報者を不当解雇などの不利益な扱いから保護し、事業者のコンプライアンス経営を強化するために、2006(平成18)年4月に「公益通報者保護法」が施行されました。

公益通報者保護法で重要な9つのポイント

さらに、公益通報者保護法による通報者の保護をより実効的に強化するため、2022(令和4)6月に「改正公益通報者保護法」が施行されています。
 

<改正公益通報者保護法による変更点>

  • ・内部通報に適切に対応するために必要な体制の整備義務
  • ・内部調査に従事する者の情報の守秘義務
  • ・行政機関等への通報の要件緩和
  • ・保護される通報者と通報の範囲の拡大
  • ・通報者の保護の内容の拡大

 
ここでは改正公益通報者保護法を踏まえながら、その内容を詳しく見ていきます。

【参考資料】:公益通報者保護法と制度の概要(消費者庁)
公益通報ハンドブック(消費者庁)

公益通報者保護法の目的

公益通報者保護法には、社会に広く悪影響をおよぼす恐れのある、企業による不祥事を未然に防いだり、被害の拡大を抑える目的があります。

公益のために通報を行なった従業員や役員が不利益な取扱いを受けることがないよう、保護をする目的があります。

公益通報者保護法が義務づけられている企業

従業員数(アルバイトや契約社員、派遣労働者等も含む)が300人を超える(301人以上)企業。
(※公益通報者保護法第11条1項により、これらの企業は、公益通報に係る通報対象事実を調査し、是正に必要な措置をとる業務に従事する者を選任する必要があります)

従業員数が300人以下の企業にも、内部通報制度の整備に努めること(努力義務)が求められています。

消費者庁による行政措置と刑事罰

企業の規模や従業員数にかかわらず、内部通報制度を整備していない場合
⇒消費者庁による報告徴収、助言、指導、勧告の対象となり、企業名が公表される場合もあります。

報告徴収に応じない、又は虚偽報告をした場合
⇒20万円以下の過料を科される場合があります。

公益通報対応業務従事者、または公益通報対応業務従事者であった者が、正当な理由なく公益通報者を特定させる事項を漏らす行為
⇒30万円以下の罰金

※「過料」は、行政罰のうちの秩序罰の一種。
「罰金」は刑事訴訟法の手続による刑罰の一種。

公益通報者とは?

公益通報者保護法第2条1項各号、および2項により、公益通報者は次のように規定されています。
 

  • ・正社員・アルバイト・パートタイマーなど(労働基準法第9条に規定される労働者)
  • ・派遣労働者
  • ・請負契約などに基づき業務に従事する者、従事していた労働者
  • ・上記の者で、退職後1年以内の者
  • ・公務員
  • ・役員

通報の対象となる法令違反

公益通報者保護法第2条3項により、通報の対象となる法令違反(通報対象事実)は次のように規定されています。
 

  • ・犯罪行為/(公益通報者保護法が定める)法令に違反する行為
  • ・過料対象行為/同法が定める法令で、過料の対象とされている行為
  • ・上記行為につながるおそれのある行為/同法が定める法令で、刑罰・過料につながる可能性のある行為

公益通報の対象とされている法令

<公益通報者保護法別表に掲げられたもの>

  • ・刑法
  • ・食品衛生法
  • ・金融商品取引法
  • ・日本農林規格等に関する法律
  • ・大気汚染防止法
  • ・廃棄物の処理及び清掃に関する法律
  • ・個人情報の保護に関する法律

 
<公益通報者保護法別表8にて、政令に定められたもの>

  • ・不正競争防止法
  • ・不当景品類及び不当表示防止法
  • ・特定商取引に関する法律
  • ・私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
  • ・下請代金支払遅延等防止法 など

 

【参考資料】:公益通報者保護法別表第八号の法律を定める政令(e-GOV)

公益通報を行なうことができる窓口

会社が定めた社内窓口/社外窓口

・社内窓口としては、内部通報窓口が該当しますが、管理職や上司も通報先になる場合もあります。
(※内部通報窓口では、匿名の通報を受け付ける必要があります)
・社外窓口には、会社が委託する法律事務所や内部通報窓口対応業者などがあります。

保護の条件:社内の不正などが実際に生じている、または生じようとしていると思われる場合

行政機関等

通報のあった事実について、処分・勧告等の権限を有する行政機関、またはその行政機関が定めた外部窓口などが該当します。
 

保護の条件:不正があると信じるに足りる相当の理由(目撃情報、証拠など)がある場合。
不正があると思い、かつ氏名などを記載して提出した場合。

報道機関等

・通報することが、被害の発生や被害拡大の防止に必要と認められる機関、団体者(通報対象事実により被害を受ける者・受けるおそれがある者を含む)であり、報道機関や消費者団体、労働組合などが該当します。

・なお、これらの通報窓口には優先順序はないので、通報者は自由に通報先を選んで通報することができます。

禁止されている行為

公益通報をしたことを理由とする解雇

公益通報者保護法第3条により、公益通報をしたことを理由として、使用者(会社など)が労働者(従業員など)を解雇した場合は、違法・無効となります。

公益通報をしたことを理由とする労働者派遣契約の解除

公益通報者保護法第4条により、派遣労働者が公益通報をしたことを理由として、派遣先の事業者が労働者派遣契約を解除した場合は、違法・無効となります。

公益通報をした労働者などに対する不利益な取扱い

公益通報者保護法第5条により、労働者・派遣労働者・役員が一定の公益通報をしたことを理由として、事業者が次のような不利益な取扱いをすることは禁止されています。
 

  • ・労働者に対する降格・減給・退職金の不支給など
  • ・派遣元事業者に対して派遣労働者の交代を求めることなど
  • ・役員に対する報酬の減額など

公益通報をした役員の解任

公益通報者保護法第6条により、公益通報をしたことで解任された役員は、事業者に対して解任によって生じた損害賠償を請求することができます。

公益通報者に対する損害賠償請求

公益通報者保護法第7条により、公益通報によって事業者が損害を受けた場合であっても、公益通報者に対して損害賠償を請求することはできません。
(※民法第709条により、会社が公益通報に当たらない内部告発によって損害を受けた場合は、内部告発者に対して、不法行為に基づく損害賠償を請求できる可能性があります)
 

【参考資料】:内部公益通報対応体制の整備に関するQ&A(消費者庁)

事業者が公益通報に関して講じるべき措置

公益通報者保護法では、事業者は次のような措置が求められています。

内部公益通報受付窓口の設置等

事業者は社内に公益通報の窓口を設置して、担当部署・責任者を明確化する必要があります。

組織の長その他幹部からの独立性の確保

会社の取締役などの幹部に関する通報事案は、当事者から独立した窓口・担当部署で取り扱う必要があります。

公益通報対応業務の実施

会社が公益通報を受けた場合、次のことが求められます。
 

  1. 1.必要な調査の実施
  2. 2.法令違反行為が明らかになった際の速やかに是正措置
  3. 3.実際に講じた措置の検証・改善

利益相反の排除

公益通報事案の関係者は、調査などの業務に関与させないことが求められます。

公益通報者に対する不利益な取扱いの防止

不利益な取扱いへの防止措置を講じたうえで、実際に不利益な取扱いが発生しているのであれば、救済・回復の措置を適切にとる必要があります。
また、不利益な取扱いを行なった当事者に対しては、懲戒処分なども検討すべきです。
 

【参考資料】:公益通報者保護法第 11 条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関し て、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(内閣府)

 

範囲外共有等の防止

公益通報者を特定させる事項については、必要最小限の範囲を超えて共有しないことが求められます。

労働者・役員・退職者に対する教育・周知

従業員・役員・退職者に対して、公益通報者保護法・自社の内部通報体制についての教育・周知を行なうことが求められます。

是正措置等の通知

公益通報者に対しては、次の範囲で、調査結果や是正措置等の内容を速やかに通知することが求められます。
 

  • ・適正な業務遂行の範囲
  • ・利害関係がある人の秘密・信用・名誉・プライバシー等の保護に支障がない範囲

内部通報に関する調査記録等の作成・保管

次の内容を記録・保管する必要があります。
 

  • ・内部通報を受けた後に実施した調査の結果
  • ・実際に講じた是正措置の内容 など

対応体制の定期的な評価・点検・改善・開示

内部通報への対応体制を定期的に評価・点検し、必要に応じて改善を行なうこと、また従業員や役員などに対して内部通報制度の運用実績の開示が求められます。

内部通報に関する社内規程の作成

内部通報制度を適切に運用するために必要な事項を定めた社内規程を整備する必要があります。
 

【参考資料】:内部通報制度(公益通報制度)の整備・運用に関する 民間事業者向けガイドライン(消費者庁)

内部通報窓口や公益通報窓口を設置するメリット/デメリット

前述したように、会社はコンプライアンス経営の実現に向けて、社内の不正行為や違法行為、各種ハラスメント等の倫理違反などを防止し、対処することが求められています。

そのためには、公益通報者保護法に基づく内部通報制度(公益通報制度)を導入し、「内部通報窓口」や「公益通報窓口」を設置する必要があります。

内部通報窓口や公益通報窓口は法的に必ず設置しなければいけないものではありませんが、会社や従業員などにとって大きなメリットがあるので、実際のデメリットもあわせて解説していきます。

内部通報窓口や公益通報窓口を設置するメリットは大きい

社内の不正の早期発見への対処や防止ができる

消費者庁が実施した調査結果によると、不正発見のきっかけの第一位は「内部通報」(58.8%)になっていて、「内部監査」を上回っています。
 

【参考資料】:消費者庁「平成28年度 民間事業者における内部通報制度の実態調査報告書」(消費者庁)

社外の行政機関や報道機関等への通報リスクを回避できる

内部通報制度を導入しておらず、会社が定めた社内窓口や社外窓口がないと、社内で起きた違法行為を発見した従業員などは社外の行政機関や報道機関等に通報する選択をする場合があるでしょう。

そうなると、不正情報が社会的に公表されてしまい、会社や社員などの社会的評価が著しく低下するそれがあります。
内部通報窓口や公益通報窓口を設置することで、こうしたリスクを未然に防ぐこともできます。

企業の社会的な信頼性が向上する

社内に内部通報窓口や公益通報窓口があれば、自浄作用がある企業として評価されますし、不正リスクへの対処ができる企業として社会的な信頼性が向上します。

また、仮に不正などが行われたとしても、早急に対応することで、一定の社会的評価を得ることもできるでしょう。

業績アップにもつながる

取引をするべき企業か、取引をしたい企業かの判断基準として、内部通報制度の導入や通報窓口の設置を考慮する会社も増えています。

つまり、これらの施策に取り組んでいる企業は取引先からも信頼されるため、業績アップにもつながるのです。

内部通報窓口や公益通報窓口を設置するデメリットとは?

一方で、デメリットとして考えられるのは、時間や手間、費用がかかってしまうことでしょう。

しかし、内部通報制度の導入や通報窓口の設置をしないことのリスク、起こりうるトラブルとその結果を考えるなら、やはり得られるメリットに目を向けて、導入・設置を検討することが重要だといえます。

内部通報窓口や公益通報窓口を設置するプロセスとフロー

社内で内部通報制度を導入して、内部通報窓口や公益通報窓口を設置するまでのプロセスとフロー(流れ)」は、次のようになります。

1. 会社の経営陣による検討会議

2. 内部通報対応の責任者と窓口設置の担当部署の決定

3. 通報担当者を選定して研修を実施

4. 社内規定・対応マニュアルなど必要な資料等を準備

5. 役員・従業員に周知して研修等を実施
 

【参考資料】:はじめての公益通報者保護法(消費者庁)

内部通報窓口や公益通報窓口を設置する際の注意ポイント

通報に関する秘密保持を徹底する

次のポイントに注意し、徹底することが大切です。

  • ・通報者の特定につながる情報について必要最小限の範囲を超えて共有しない
  • ・通報者を特定しようとする行為を防止するための措置をとる
  • ・上記について社内規定で定めたうえで、周知、実施のための社内教育等を行なう
  • ・通報があったこと自体も秘密にする
  • ・秘密厳守のために通報窓口の環境を整備する

経営陣から独立した通報窓口を設置する

健全かつ適正に通報窓口が機能するためには、総務部などに社内通報窓口を設置するほかに、経営陣から独立した通報窓口(たとえば法律事務所)を設置することも重要になってきます。

通報したことが不利益にならないことを明確にして周知する

安全性が確保されなければ、通報窓口を設置しても従業員などは通報をためらってしまうでしょう。

従業員などの通報者に対しては、通報したことで不利益を被ることがないことを明確にして、確実に周知していくことが大切です。

内部通報窓口や公益通報窓口を設置する際は弁護士に相談・依頼してください!

今や、社内で内部通報制度を導入して、内部通報窓口や公益通報窓口を設置することは会社にとって必須とっても過言ではありません。

その際の法的な整備は欠かせませんが、社内に適切な担当部署がなかったり、総務部などではリーガルチェックまではできない会社もあるでしょう。

そこで頼りになるのが弁護士です。

企業法務やコンプライアンス経営に精通した弁護士であれば、次のことが可能になります。
 

  • ・内部通報制度の導入や内部通報窓口・公益通報窓口の設置に関する問題点を洗い出せる。
  • ・問題点や懸案ポイントを一つひとつ、細心の注意をもって法的にチェックできる。
  • ・制度設計から実際の運用までを任せることができる。

 
なお、顧問弁護士をもつこともおすすめしています。

<顧問弁護士のメリット>
・顧問弁護士と契約し、毎月の顧問料を支払うことで、いつでも気軽に法的な相談ができ、サービスを受けることができます

・顧問弁護士は、通常の弁護士のように目の前にある法的問題の解決を行ないますが、あなたの会社のことをよく理解してくれるので、経営者の方が気づかない会社の問題を察知し、適切なアドバイス、対応を行なうことができます。

・顧問弁護士の最大のメリットは、将来的なリスクの芽を事前に摘み取り、法的なトラブル防止ができることですから、内部通報制度の導入や内部通報窓口・公益通報窓口の設置に関しても経営者の方は大きなメリットを受けることができます。
 

 
弁護士法人みらい総合法律事務所では随時、無料相談を行なっています。(※事案によるので、お問い合わせください)

顧問弁護士についてのご相談も、いつでもお受けしていますので、まずは一度、気軽にご連絡ください。

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