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従業員にSNSで会社の悪口や誹謗中傷をされた場合の対応

最終更新日 2024年 07月19日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

従業員にSNSで会社の悪口や誹謗中傷をされた場合の対応
 

この記事を読むとわかること

 
SNSで個人が誰でも情報発信できるようになったこともあって、悪口や誹謗中傷の書き込みなどが問題になっています。

会社運営においても、従業員による不適切なSNS投稿は問題になっており、会社はさまざまなリスクを負う可能性があります。

不特定多数の人に情報が拡散してしまうと……
会社の信用や企業価値の低下を招いてしまい、金銭的損失を負ったり、予期せぬトラブルを被ってしまうこともあります。

そこで本記事では、従業員が会社の悪口や誹謗中傷を書き込んだ場合に会社が負う損害や、投稿の削除請求、発信者情報開示請求、損害賠償や刑事告訴、従業員の懲戒解雇など会社がとるべき対応について解説します。
 

従業員がSNSで会社を誹謗中傷した場合のリスクとは?

現代では誰でも簡単にSNS上で情報発信ができるために、さまざまなトラブルや問題が起きています。

従業員が会社の悪口や誹謗中傷、暴言、不適切発言を投稿するのも、その1つです。

会社への誹謗中傷などがSNSに投稿された場合、会社は次のような損害を被る可能性があります。
 

  • ・不特定多数の人に情報が拡散してしまう
  • ・会社の信用や企業価値の低下を招いてしまう
  • ・金銭的損失を被る
  • ・予期せぬトラブルが発生する

過去にあった従業員の不適切なSNS投稿例

これまでに、たとえば次のような不適切なSNS投稿が確認されています。
 

  • ・従業員が店内の食品や備品でふざけて遊ぶ様子をSNSに投稿
  • ・飲食店で買った商品に髪の毛や虫などの異物が混入していたとして嘘の写真をネットに投稿
  • ・従業員が会社に対する不満や悪口などをSNS上に投稿
  • ・実際はなかったのに、上司や同僚などからパワハラ、セクハラされたとの虚偽の主張を投稿
  • ・社内の人間の不倫など嘘のうわさを投稿
  • ・従業員が会社の秘密情報(顧客情報・技術データなど)をSNS上に漏洩
  • ・従業員が他の従業員の個人情報をSNS上に掲載
  • ・会社の公式アカウントを使って従業員が不適切発言を投稿

 

従業員の不適切SNS投稿に対して会社がとるべき対応とは?

従業員の不適切なSNS投稿などが発見された場合、会社はできるだけ速やかに対応する必要があります。

そのために会社側が行なうべきことと流れは、一例として次のようになります。

投稿内容を保存する

証拠として、投稿内容をスクリーンショット、紙にプリントアウトなどして保存しておきます。

投稿者を特定して事情聴取を行なう

投稿者を特定したら、事情聴取(ヒアリング)をして事実確認をしておきます。

投稿内容の削除を要請する

SNSなどに投稿された内容を放置していると、インターネット上で拡散していくリスクがあります。
そのため、従業員(投稿者)に速やかに削除するよう要請します。

自社の公式サイトなどで公表して謝罪する

SNSなどに投稿された内容が会社の信用問題に大きく関わるもので、かつすでにある程度、拡散してしまっているようなケースでは、会社は信用回復のために、自社の公式サイトなどで事実関係を公表し、謝罪する必要もあります。

再発防止策を策定して周知する

今後、同じようなトラブルが発生しないように再発防止策を検討・作成して周知する必要があります。

  • ・SNSへの投稿を行なった従業員に対する注意、指導、懲戒の検討と実施
  • ・SNS利用における社内勉強会などの実施
  • ・SNS利用に関するガイドラインの策定

不適切投稿の削除方法を解説

SNSなどに投稿された内容を削除するには次のような方法があります。

フォームなどから違反報告・削除請求する

自社についての誹謗中傷などを削除するよう、直接サイト管理者に対して依頼する方法です。

フォームが用意されている場合は、そこから違反報告や削除請求をします。
ただし、あくまで投稿内容の削除を求めるだけのものであるため、投稿者の情報開示は請求できないことに注意が必要です。
 

<メリット>
メリットとしては、費用がかからず手軽に請求できるところでしょう。

<デメリット>
デメリットとしては次のことがあげられます。
・サイト管理者側としては調査・分析が必要なため、対応が遅いケース、削除請求を拒否されるケースなど、サイトによって対応が異なる。
・手軽に削除請求できるといっても、その理由を法的に説明する必要がある。

法的手段により投稿の削除請求をする

サイト管理者やプロバイダーが、自ら削除や発信者情報開示に対応することはほぼないのが現状です。
そのため、投稿の削除や発信者情報の開示を強く求める場合には、訴訟を提起して民事での裁判に進みます。
 

  • ・サイト管理者などに対して、投稿削除を求めて仮処分の申請
  • ・プロバイダーに対して、発信者情報を開示させるための仮処分の申請や民事訴訟を提起

 

<メリット>
投稿削除や発信者情報開示の主張が裁判で認められれば、管理者やプロバイダーも対処することが多いですし、応じない場合は判決内容にしたがった執行手続もあります。

<デメリット>
裁判となると期間やコストがかかります。

 

【参考資料】:インターネット上の誹謗中傷等への対応(警察庁)

逆SEO対策で表示を制限

インターネットでの検索順位表示を上げるための手法を「SEO」といいます。

このSEOを逆に使い、検索エンジンで上位に表示されないようにすることは「逆SEO対策」などとも呼ばれます。

そこで、逆SEO対策を行なうことで不適切な誹謗中傷などが検索されて表示されないようにすることもできます。
 

<メリット>
検索されにくくなることで、一定の効果が見込めます。

<デメリット>
専門的な技術・知識が必要なため、コストがかかってしまいます。
逆SEO対策を実施したからといって、不適切発言などが表示されなくなるわけではありません。
正しい方法で対策を行なわない事業者がいる可能性に注意が必要です。

 
いずれにせよ、情報開示請求に詳しい弁護士に相談しながら対応していくことが望ましいでしょう。

従業員(投稿者)に損害賠償請求や刑事告訴はできるのか?

発信者(投稿者)を特定するには?

従業員が行なった会社への誹謗中傷などの不適切SNS投稿に対して、会社側がとることができる対応として、損害賠償請求や刑事告訴などがあります。

ただし、その前にまずは発信者を特定する必要があります。

この場合、「プロバイダ責任制限法」第5条により発信者情報開示請求をすることができます。

もともと、発信者を特定するには2回の裁判手続が必要でした。

さらに、会社側(被害者)が害者に損害賠償請求する裁判手続も含めると、計3回の裁判手続が必要となっていました。

そこで、簡易かつ迅速に発信者情報の開示手続きを行なえるようにプロバイダ責任制限法が改正され、令和4年10月に施行されています。

そのため現在では、発信者情報の開示請求を1つの手続で行うことが可能になっています。
 

【参考資料】:インターネット上の違法・有害情報に対する対応(プロバイダ責任制限法)

損害賠償請求

不適切SNS投稿をした従業員(加害者)が特定できた場合、民事上、会社から損害賠償請求をすることができます。
 
その場合、次のような流れと段取りをとるのが一般的といえます。

  • ・加害者に通知書を送る(処分の通知)
  • ・損害賠償請求を行なう
  • ・支払いなどがされない場合は訴訟を提起する

 
ただし、最終的に解決に至るまでには1年以上、さらには長期間かかることもあるため、慎重に検討するのがいいでしょう。

また、会社から従業員に対する請求は一定程度の制限がなされる傾向にあることに注意が必要です。

刑事告訴と権利侵害

民事における損害賠償請求の他には、刑事告訴をして刑事事件において従業員(投稿者)に刑事罰を求めることもできます。

会社に損害を与えるような誹謗中傷や情報漏洩などのSNS投稿については、再発防止のためにも投稿者に一定の刑罰を求めることも重要です。

刑事訴訟を検討する場合は、まずは弁護士に相談されることをおすすめします。

なお、第三者への権利侵害には次のものが該当する可能性があります。
 

  • ・名誉棄損
  • ・侮辱
  • ・脅迫行為
  • ・知的財産権の侵害
  • ・営業権の侵害

 
主な刑事罰は次のようになっています。
 

  • ・名誉棄損罪(刑法第230条)/3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金
  • ・侮辱罪(刑法第231条)/1年以下の拘禁刑若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料
  • ・脅迫罪(刑法第222条)/2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金
  • ・営業秘密侵奪罪(不正競争防止法第21条)/「10年以下の懲役、もしくは2000万円以下の罰金に処し、またはこれを併科

 

【関連記事】 
訴訟・紛争解決

従業員の懲戒処分で注意するべきポイント

懲戒処分の種類

社内的な処分として、誹謗中傷のSNS投稿などが就業規則上の懲戒事由に該当する場合は、悪質性や被害の程度なども踏まえつつ、懲戒処分の検討が必要となる場合もあるでしょう。

懲戒処分を行なうための必要条件は、あらかじめ就業規則等に懲戒の種類や事由を定めておくことです。

懲戒処分には次のような種類があります。
 

  • ・けん責・戒告
  • ・減給
  • ・降格
  • ・出勤停止
  • ・諭旨解雇
  • ・懲戒解雇

 
※「けん責」は始末書を提出させるもので、戒告では始末書の提出はありません。
※「懲戒解雇」がもっとも重い処分になります。
 

懲戒解雇で注意するべきポイント

すぐに懲戒解雇ができるわけではなく、裁判で権利濫用として無効と判断される場合もあります。

それは、日本の労働法では懲戒解雇に対するハードルが高くなっているからです。

対応としては、次のことに注意してください。
 

  1. ①客観的な証拠資料を十分に収集する。
  2. ②SNSに投稿された内容の重要性や秘匿性、会社が被った損害の程度などを慎重に検討する。
  3. ③懲戒解雇する従業員に、弁明の機会を与える。
    ※本人の言い分を聞かずに懲戒解雇をすると、無効と判断される可能性がある。
  4. ④従業員を解雇する場合は、懲戒解雇であっても解雇予告を行うか、解雇予告手当を支払う義務がある。
    ※解雇予告とは、少なくとも30日前までに解雇することを伝えるもの。
    ※解雇予告手当は、解雇予告から解雇までの期間が30日に満たない場合、足りない日数分の手当を支給するもの。
  5. ⑤懲戒解雇にともない退職金を不支給とする場合は、退職金規定などに明記する必要がある。
    ※ただし、判例には退職金の減額や不支給が社内規定に基づくものであっても無効とされたものもある
  6. ⑥従業員を懲戒解雇する場合、未消化の有給休暇があっても取得させたり、買い取る必要はない。

会社側が負わなければいけない責任・・・使用者責任とは?

従業員がSNS上で顧客の個人情報を漏洩(ろうえい)させた、第三者の名誉を棄損する内容を投稿した、という場合は従業員自身が責任を負う可能性があることは当然です。

しかし、ここで知っていただきたいのは、この従業員を雇用している会社も民法上の「使用者責任」の規定に基づいて、損害賠償責任を負う可能性があることです。
 

「民法」
第715条(使用者等の責任)
1.ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

誹謗中傷などによるトラブルを未然に防ぐために必要なこと

誹謗中傷など、不適切なSNS投稿によるトラブルを未然に防ぐため、会社側は必要な施策を行なうことが肝要です。
 

  • ・就業規則やガイドラインにSNS利用に関する規則や懲戒解雇などの規定を明示しておく。
  • ・従業員への研修や勉強会などを実施して、理解を促す。
  • ・誓約書の提出を義務づける。
  • ・内部通報制度を設けるなど、社内体制を整備する。 など

 
なお、これらの防止策を実行する際は、顧問弁護士がいると大きなメリットになります。
 

  • ☑ 顧問弁護士と契約し、毎月の顧問料を支払うことで、いつでも気軽に法的な相談やサービスを受けることができます
     
  • ☑ 通常の弁護士と同様、顧問弁護士は目の前にある法的問題の解決を行ないますが、かかりつけのホームドクターのように、あなたの会社のことをよく理解してくれるので、経営者の方が気づかない会社の問題を察知し、適切なアドバイス、対応を行なうことができます。
     
  • ☑ 顧問弁護士の最大のメリットは、将来的なトラブルを未然に防ぎ、法的なリスクへの万全の対応ができることです。
    そのため、従業員の不適切SNS投稿に関する諸問題でも経営者の方の心強い味方になれるのです。
     
  • ☑ 不適切SNS投稿への対応以外でも、「契約書の作成とリーガルチェック」「労働問題」「損害賠償問題」「債権回収」「企業紛争」「不動産取引」「相続問題」「事業承継やM&A」など、自社の状況やニーズに合った顧問弁護士と契約することで、さまざまなメリットを得ることができます。

 

 
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