「組合に便宜を供与せよ」との要求が来たら、どう対応すべきか?
労働組合が、会社に対して「便宜を供与せよ」と要求してくるものとしては、会社内における事務所の供与や、チェック・オフ、組合休暇、在籍専従などが考えられます。
労働組合法第7条第3号は、使用者が「労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること」を原則として禁止していますので、会社としては、労働組合が便宜供与を要求してきたとしても、それに応じる必要は原則としてありません。
もっとも、会社として労働組合に対する便宜供与を例外的に認める場合には、どの程度であれば認められるかという問題があります。
具体的には、次の4つの項目について検討していきます。
「最小限の広さの事務所の供与」
労働組合法では、最小限の広さの事務所の供与については、経理上の援助にはあたらないと規定しています。
しかし、規定があるからといって、労働組合に「事務所供与の請求権」が当然のようにあるとはいえません。
つまり、会社は労働組合に対して事務所を供与するかどうかについては、自由に決められるということです。
もっとも、会社が労働組合に対していったん事務所を貸与した場合には、①会社に明け渡しの具体的な必要性が存在する、②代替の事務所を用意する、などしない限り事務所の明渡しを求めることはできないと考えられています。
そのため、事務所を供与するかどうかについては慎重な判断が必要となります。
「チェック・オフの要求」
会社が、協定に基づいて組合員である社員の賃金から組合費を控除し、それらを一括して組合に支払うことを「チェック・オフ」といいます。
会社にはチェック・オフを行う義務はありませんが、仮にチェック・オフを行う場合には、労働基準法では「賃金全額払の原則」がありますので注意しなければなりません。
チェック・オフを行うには、当該事業場の過半数の労働者で組織されている労働組合との労使協定が必要になります。
「組合休暇の要求」
労働組合の業務を行うための休暇を「組合休暇」といいます。
組合休暇は、あくまで労働組合の業務を行うことが目的なので、会社がそれを認める義務はありません。
仮に組合休暇を認める場合は、労働協約によって、「年間の許可の回数」や「手続の方法」、「休暇期間は無給となること」などを明確にしておくことが重要なポイントとなります。
「在籍専従の要求」
社員が会社の社員としての地位を保持したまま組合業務のみを行うことを「在籍専従」といいます。
在籍専従については、会社の承諾があって初めて認められるものと考えられているので、仮に労働組合が求めてきたとしても、それを認めるかどうかについては会社側の自由であるということを覚えておいてください。