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広告を出す時に知っておくべき法律知識

最終更新日 2025年 02月27日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

広告を出す時に知っておくべき法律知識

この記事を読むとわかること

 
自社の製品・商品・サービスなどを広く知ってもらい、売上をアップさせるため、さまざまな業界の事業者(企業)が広告活動を展開しています。

ところで、広告の制作や出稿(さまざまなメディアに掲載・配信すること)をする際には、法律で定められた一定のルールや規制があります。

広告に関わる法律には次のようなものがあります。
 

  • ・景品表示法
  • ・不正競争防止法
  • ・著作権法
  • ・薬機法 など

 
これらの法律は、「消費者の保護」、「事業者の公正な競争」、「著作物の権利保護」などを目的としているため、事業者とその担当者は内容を知っておかないと、法律違反になってしまいかねません。

抵触する法律によっては、措置命令、課徴金納付、刑事罰(懲役や罰金)が科される可能性もあること、また社会的な信用度の低下から業績の悪化を招く恐れもあることを、広告に関わるすべての人は知っておくべきです。

そこで本記事では、これらの法律を中心に、その概要や表示に関するルール、規制内容などについてわかりやすく解説していきます。

ぜひ最後まで読んでいただき、正しい法律知識を身につけてください。
 

広告の作成・出稿で知っておくべき4つの法律を解説

景品表示法

景品表示法とは?

事業者(会社)は消費者(ユーザー)に、商品やサービスをより魅力的に見せ、訴求するため、虚偽や誇大な表示をしたり、過大な景品(おまけ)を提供するケースがあります。

すると、消費者が実際より質の低い商品やサービスを購入してしまい、不利益を被ってしまう可能性があります。

景品表示法は、「不当な表示」や「過大な景品類」を規制し、公正な競争を確保することで消費者が適正に商品やサービスを選択できる環境を保護するための法律となっています。

そのため、一般消費者向けのビジネス(BtoC型ビジネス)を行なうすべての事業者は、景品表示法の内容について知っておく必要があります。
 

【参考資料】:景品表示法(消費者庁)

景品表示法で規制されている
不当表示とは?

景品表示法が定める規制は、「不当表示規制」「景品規制」に大きく分けられますが、ここでは不当表示について解説します。

不当表示規制には3つの種類があるので見ていきましょう。

1.優良誤認表示の禁止(第5条1号)
商品やサービスの品質、規格その他の内容についての不当表示に関する規定で、次の2点があります。
 

  • ・内容について、実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示
    ※「著しく」=誇張・誇大の程度が社会一般に許容されている程度を超えていること
  • ・内容について、事実に相違して競争業者に係るものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示

 
具体例などについては、こちらの資料を参考にしてください。
 

【参考資料】:優良誤認とは(消費者庁)

 

<コラム①不実証広告規制について>
消費者庁が優良誤認表示の判断をする際、必要であれば、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を事業者に対して求めることができます。

これら資料が提出されない場合は、不当表示とみなされます。
これを「不実証広告規制」といいます。

表示した効果の裏づけとなる合理的な根拠を示すことができれば、優良誤認表示とは判断されません。

 

【参考資料】:不実証広告規制(消費者庁)

 
2.有利誤認表示の禁止(第5条2号)
商品・サービスの価格、その他取引条件についての不当表示に関する規定です。
 

  • ・取引条件について、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示
  • ・取引条件について、競争業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示

 
具体例などについては、こちらの資料を参考にしてください。
 

【参考資料】:有利誤認とは(消費者庁)

 
3.商品・サービスの取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがあると認められ内閣総理大臣が指定する表示(第5条3号)
正しい判断ができないような紛らわしい表示広告、たとえば「誇大広告」「おとり広告」、「ステルスマーケティング広告(ステマ広告)」などが当てはまります。

なお、次の7つのケースが、一般消費者に誤認されるおそれのある表示として指定され、禁止されているので注意が必要です。
 

  • ・無果汁の清涼飲料水等についての表示
  • ・商品の原産国に関する不当な表示
  • ・消費者信用の融資費用に関する不当な表示
  • ・不動産のおとり広告に関する表示
  • ・おとり広告に関する表示
  • ・有料老人ホームに関する不当な表示
  • ・一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示

 

【参考資料】:表示規制の概要(消費者庁)
表示に関するQ&A(消費者庁)

 

<コラム②ステルスマーケティング広告(ステマ広告)について>
実際は事業者による広告や宣伝であるのに、それを隠して一般消費者からわかりにくいように表示しているものを、「ステルスマーケティング広告(ステマ広告)」といいます。

2023(令和5)年から、ステルスマーケティングは景品表示法違反になるため注意が必要です。

なお、規制の対象となるのは、商品・サービスを供給する事業者(広告主)だけで、企業から広告・宣伝の依頼を受けたインフルエンサーなどの第三者は規制の対象にはなっていません。

 

【参考資料】:令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。(消費者庁)

 

 

<コラム③比較表現について>
景品表示法では、競争事業者の商品・サービスとの比較自体は禁止・規制はされていません。

しかし、比較広告が不当表示に該当する例があります。
 

  • ・この機能は当社製品にしかついていません。
  • ・この技術は日本では当社製品だけが採用!
  • ・大学合格実績NO.1
  • ・地域最安値 など

 
比較広告が不当表示にならないようにするには、一般消費者に誤認を与えないようにする必要があり、次の3つの要件をすべて満たす必要があることに注意してください。
 

  • ・比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること。
  • ・実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること。
  • ・比較の方法が公正であること。

 

【参考資料】:比較広告(消費者庁)

景品表示法違反の罰則

1.消費者庁や都道府県から措置命令を受ける

  • ・消費者庁や都道府県から広告表示や景品の提供の停止を命じられます(第7条)。
  • ・すでに違反行為をやめていても再発防止のために、措置命令が発令される場合があります。
  • ・措置命令では、罰金や営業停止などは科されません。

 
2.違反企業として社名等を公表・報道される

  • ・消費者庁や都道府県のWEBサイトに違反企業として社名や違反内容が公表されます。
  • ・また、新聞などのメディアでも社名等が報道される場合があります。

 
消費者庁のホームぺージで公表された事例は、こちらを参考にしてください。
 

【参考資料】:景品表示法関連報道発表資料 2024年度

 
3.課徴金を科される

  • ・課徴金納付命令(行政処分)を受ける可能性があります。
  • ・課徴金は、刑事罰の罰金とは別のもので、「優良誤認表示」か「有利誤認表示」に違反した場合に科されるものです。
  • ・課徴金の対象となる違反行為による売上額に3%を乗じた額の納付が命じられます。

 
4.刑事罰と罰金が科される
措置命令に違反した場合、事業者は2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される可能性があります。

さらに法人については、3億円以下の罰金が科される可能性があります。
 

【参考資料】:景品表示法違反行為を行った場合は
どうなるのでしょうか?(消費者庁)

景品表示法への課徴金制度導入について(消費者庁)

 
景品表示法の具体的内容や事例などについては、こちらの資料や記事を参考にしてください。
 

【参考資料】:よくわかる景品表示法と公正競争規約(消費者庁)

 

不正競争防止法

不正競争防止法とは?

不正競争防止法には、事業者間の公正な競争を確保するため、「不正競争の防止」と「不正競争に関係する損害賠償等の措置」などを講じることで、国民経済の健全な発展に寄与するという目的があります(第1条)。
 

  • ・営業秘密の漏洩や不正コピー、ブランド表示の盗用・形態模倣など、不正に利益を得る目的や、営業秘密保有者に損害を加える目的で行なう行為が禁止されています。
  • ・不正競争に関わる差し止めや損害賠償などの措置について定めています。

 

広告に関わる項目について

不正競争防止法で広告に関わる項目は、おもに次の3つです。

周知表示混同惹起行為
(第2条1項1号/第21条2項1号)

他人の商品や営業の表示・デザインとして広く認識されているものと同一、または類似の表示を使用することで、その他人の商品・営業と混同を生じさせる行為です。

たとえば、商品のパッケージや店舗の看板、鞄や洋服などの類似商品やコピー商品などが該当します。

著名表示冒用行為
(第2条1項2号/第21条2項2号)

他人の商品や営業の表示として著名なものを、自己の商品・営業などの表示として使用する行為です。

「著名な」とは、全国的に、世間一般に知られていることが必要とされます。

誤認惹起行為
(第2条1項20号/第21条2項1号・5号)

商品や役務、またはその広告などに、その原産地、品質・質、内容などについて誤認させるような表示をする行為、またはその表示をした商品を譲渡などする行為です。

たとえば、「牛肉100%」と表示した商品が、じつは豚肉や鶏肉を混ぜ合わせたものだった事例や、原産地表示を偽った事例などがあります。
 

【参考資料】:不正競争防止法の概要(経済産業省)

不正競争防止法違反の罰則

不正の目的をもって、不正競争防止法が禁止する表示を行なった場合、刑事罰においては、違反行為者は5年以下の懲役、もしくは500万円以下の罰金、またはこれらの両方が科される可能性があります。

また、法人には3億円以下の罰金が科される可能性があります。

さらに、民事では競合他社から損害賠償請求を受けたり、信用回復のための措置を講じるよう求められる場合もあるでしょう。

著作権法

著作権法とは?

著作権法は次のように定義されています。
 

著作権利者と利用者との利害調整を図り、文化の発展に寄与することを目的とし、
著作物を創作した著作者などに対して、著作物の利用に関して独占的な権利を与えて保護を図りつつ、同時に、著作物の利用についての自由を確保する規定を定めた法律。

 
たとえば、他社が広告として使用している文章、写真などは、著作権法で「著作物」として保護されている可能性があるわけですが、これを無断で使用すれば著作権侵害にあたる可能性があるわけです。

なお、著作権法で定められている著作物とは、次のように定義されています。

「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」(第2条1項1号)

著作権法への対応は?

他社の著作物や、著作権者がいる著作物を自社の広告に使う場合は、著作権法上のルールを守る必要があります。

著作物を使用する場合には、著作者や著作権を持つ権利者と交渉をして、ライセンスについての契約を結ぶ必要があります。

著作権法違反の罰則

著作権を侵害した場合、告訴されれば警察・検察により刑事責任の追及がなされる可能性があります

刑事罰は、10年以下の懲役、もしくは1,000万円以下の罰金、またはこれらの両方が科される可能性があるため注意が必要です(第119条)。
 

【参考資料】:著作権侵害への救済手続(特許庁)

薬機法

薬機法とは?

薬機法は、正式名称を「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」といい、以前は薬事法と呼ばれていた法律です。

2014(平成26)年11月25日の、薬事法等の一部を改正する法律の施行により改名されています。

なお、規制対象と規制内容がより広範囲かつ明確に改正されています。

薬機法の目的は、第1条に次のように規定されています。

医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、および再生医療等製品の品質、有効性、および安全性の確保、ならびにこれらの使用による保健衛生上の危害の発生、および拡大の防止のために必要な規制を行なう。

指定薬物の規制に関する措置を講ずるほか、医療上特にその必要性が高い医薬品、医療機器、および再生医療等製品の研究開発の促進のために必要な措置を講ずることにより、保健衛生の向上を図る。

薬機法では、医薬品や医薬部外品、化粧品、医療機器などについて、承認や製造、販売、広告などに関するルールが細かく定められているため、これらに関わる場合は必ず知っておかなければいけない法律です。

なお、薬機法は頻繁に改正が行われるため、つねに最新の情報を確認してアップデートしていく必要があります。

薬機法の広告要件と規制事項について

薬機法では、適用される製品や対象者が幅広く規定されているため、自社で扱っている製品が医薬品等に該当するか、また広告を作成・出稿する際には規制内容に違反していないかを必ずチェックする必要があります。

<薬機法の広告要件>

  • ・顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること
  • ・特定医薬品等の商品名が明らかにされていること
  • ・一般人が認知できる状態であること

【参考資料】:薬事法における医薬品等の広告の
該当性について(平成10年9月29日医薬監第 148号 都道府県衛生主管部 (局)長あて
厚生省医薬安全局監視指導課長通知)

<薬機法の広告規制>
虚偽広告や誇大広告の禁止(第66条)
医薬品等の効果や製造方法などについての虚偽・誇大広告は禁止されています。

また、医師が保証していると誤解されるような表現なども禁止されています。

特定疾病用の医薬品および再生医療等製品の
広告の制限(第67条)

特定疾病(がんや肉腫、白血病など)の治療薬については、一般への広告は禁止されています。

承認前の医薬品、医療機器および再生医療等
製品の広告の禁止(第68条)

承認を受けていない医薬品等については、名称、製造方法、効能、効果、性能などの広告は禁止されています。

禁止されている例としては、「〇〇が完治する」、「副作用がない」、「絶対やせる!」などの表現があります。

また、性的な表現や他社製品への誹謗中傷も禁止されています。
 

【参考資料】:医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等(厚生労働省)

 
なお、広告規制の対象となるのは広告主の事業者だけでなく、広告代理店や制作会社、インフルエンサーやアフィリエイター、外注のWebライターなども含まれます

関わるすべての人に適用されるため、社内外で薬機法の知識・情報を共有して、遵守の徹底をしていくことが望まれます。
 

【参考資料】:医療広告ガイドラインに関するQ&A(厚生労働省)
医薬品等の広告規制について(厚生労働省)

薬機法違反に対する行政処分や罰則について

薬機法に違反した場合、「措置命令・中止命令」、「課徴金」「刑事罰」などを受ける可能性があります。

厚生労働大臣や都道府県知事から違反行為の中止や排除、再発防止策の実施が命じられる可能性があります(第72条の5)。

2021(令和3)年の改正薬機法の施行により、課徴金については、課徴金対象期間に取引をした課徴金対象行為に係る医薬品等の対価の合計額(売上額)に4.5%を掛けた金額が課される可能性があります(第75条の5の2)。

刑事罰としては、2年以下の懲役、200万円以下の罰金、またはこれらの両方が科される可能性があります。

上記以外にも、業界・業種によっては「宅建業法」や「健康増進法」などの法律の広告規制も関わってきます。

関係する事業者や広告制作担当者などは、つねに最新の情報と知識をアップデートしていくことが大切です。

広告の制作・出稿で不安があるなら弁護士に相談してください!

ここまで、広告の制作・出稿をする際に事業者や制作担当者などが知っておくべき法律知識について解説してきました。

思ったよりも幅広く、複雑だと感じた方も多いのではないでしょうか。
実際、すべての法律を熟知するのは現実的ではないと言わざるを得ないでしょう。

そこで、広告の作成・出稿で法的な問題に不安を抱えている場合は一度、広告関係に強い弁護士に相談されることをおすすめします。

弁護士法人みらい総合法律事務所では随時、無料相談を行なっています。(※事案によるので、まずはお問い合わせください)。

なお、顧問弁護士についてのご相談も、いつでもお受けしています。
顧問弁護士を持つことのメリットなどについては、こちらの記事も参考にしていただければと思います。
 

 

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