顧問弁護士とは?|費用や相場・メリットについて
●毎月の顧問料を支払うことで、いつでも気軽に法的な相談ができ、サービスを受けることができるのが、顧問弁護士です。
●顧問弁護士は、通常の弁護士のように目の前にある法的問題の解決を行ないますが、かかりつけのホームドクターのように、自社のことを理解してくれるので、経営者の方が気づかない会社の問題を察知し、適切なアドバイス、対応を行なうことができます。
●最大のメリットは、将来的なリスクの芽を事前に摘み取り、法的なトラブル防止ができることです。
●「労働問題」「損害賠償問題」「債権回収」「契約書作成やリーガルチェック」「企業紛争」「不動産取引」「相続問題」「事業承継やM&A」など、自社の状況やニーズに合った顧問弁護士と契約することで、さまざまなメリットを得ることができます。
本記事では、顧問弁護士についての疑問や不安が解決するよう、「顧問弁護士と契約するメリット」や「顧問契約料の相場金額」「顧問弁護士の選び方」などについて、できるだけわかりやすく、詳しく解説していきます。
目次
顧問弁護士とは?
会社を経営していると、資金繰りや人材確保など、さまざまな問題に直面します。
法的なトラブルも、そのままにはしておけない問題の一つです。
近年では、コンプライアンス(法令遵守)が問題になることも多く、法的なリスクへの対応は企業にとって欠かせないものになっています。
法務部を設置して、弁護士資格のある人材を採用している企業もありますが、そこまでは手が回らないという経営者の方も多いと思います。
そこで頼りになるのが顧問弁護士という存在です。
顧問弁護士は、通常の弁護士のように目の前にある法的問題の解決を行ないますが、同時に将来的なリスクの芽を事前に摘み取り、トラブル防止も行ないます。
法律事務所や弁護士というと敷居が高いと感じてしまう方もいると思いますが、そんなことはありません。
顧問弁護士は、かかりつけの医師やホームドクターにも似ているといえます。
契約して、毎月の顧問料を支払うことで、いつでも気軽に法的な相談ができ、サービスを受けることができます。
【参考資料】:顧問弁護士(日本弁護士連合会)
顧問弁護士と契約するメリットとは?
(1)顧問弁護士と契約するメリット12選
顧問弁護士というと、みなさんはどのようなイメージを持たれているでしょうか。
- 「顧問弁護士がいてくれれば助かるとは思うが、本当に必要だろうか?」
- 「税理士とは顧問契約しているが、弁護士との契約となると躊躇する……」
- 「契約料が高いのではないか?費用対効果(コストパフォーマンス)に疑問を感じる」
会社を守ってくれる存在だけれど、顧問弁護士は本当に必要なのか、費用に見合うサービスを受けることができるのか、という疑問を持っておられる経営者の方もいらっしゃるでしょう。
そこで、まずはメリットから考えてみたいと思います。
<顧問弁護士から得られる主なメリット>
- ●会社や経営者自身が抱える法的な問題を気軽に(電話やメールでも)相談できる。
- ●法的な問題について必要な時に、しかも継続的・優先的に相談できる。
- ●実際に起きた法的トラブルの緊急性を判断して、素早く解決してくれる。
- ●法的トラブルを事前に予防できて、リスクを抑えることができる。
- ●経営者が気づいていない会社の問題点を指摘してもらい、改善できる
- ●弁護士を探して依頼するなどの手間が省ける。
- ●社内に法務部を設置するコストを削減できる。
- ●通常の法律相談や簡単な書類作成は無料になる場合がある。
- ●訴訟にまで発展した場合などの弁護士報酬は割引になる場合も多い。
- ●自社のニーズに合った法務サービスを受けることができる。
- ●法改正などの最新の法律の情報を教えてもらえる。
- ●トラブルの相手方にプレッシャーをかけることができる。など
(2)顧問弁護士のメリット・優位性を詳しく解説
次に、これらのメリットについて詳しく見ていきます。
①法的問題について気軽に、いつでも、継続的に相談できる
会社に法的な問題が起きた場合、通常は弁護士を探して相談し、依頼する必要があるため、手間がかかってしまいます。
しかも、迅速な対応が取れないといったリスクがあります。
その点、顧問弁護士と契約していれば、気軽に、いつでも、継続的・優先的に相談することができ、法的リスクへの迅速な対応が可能になります。
②緊急性の高いトラブルの判断と対応が可能になる
法的なトラブルが発生した際、すぐに顧問弁護士に依頼することができれば、緊急性の高いトラブルかどうかの判断ができ、緊急の場合は解決に向けた迅速な対応が可能になります。
顧問弁護士の場合、企業とはつねに委任関係にあるので顧問先企業の弁護士業務が優先されます。
問題解決が長引いてしまえば、時間や費用の面でも損害が拡大してしまうので、顧問弁護士に解決を依頼するのが、最善の選択といえるでしょう。
③法的トラブルを事前に予防することでリスク管理ができる
法的な問題は当然、発生後の対応が大切です。
しかし、そもそも起こらなければトラブルにはならないわけで、事前のリスク管理が重要になってくるのは言うまでもありません。
医療では病気の予防、早期発見・治療が大切なように、法的な問題についても事前に予防することが重要で、顧問弁護士であればそれが可能になります。
従業員の労務問題、取引先との契約や契約書作成など事前に対応していれば防げるトラブルはたくさんあるのです。
事前に法的なアドバイスを受けることができるのは、顧問弁護士と契約することの最大のメリットの一つともいえます。
④企業コンプライアンスへの適切な対応ができる
近年では、企業のコンプライアンス(法令・社内規定・社会倫理などの遵守)が社会的に重要になっています。
コンプライアンスについて、企業はもはや誤魔化しながら経営をしていける時代ではなくなりました。
法的に大きな問題になる前に、顧問弁護士から適切な知識と対応へのアドバイスをもらうことも重要になっています。
⑤じつはリーズナブルに法務サービスを受けることができる
会社では、さまざまな経費が必要になりますが、人件費は支出額が大きくなるものの一つです。
会社に法務部を設置して、法的知識のある有資格者を雇用するとなると、やはり大きな支出を覚悟しなければいけません。
そこで顧問弁護士と契約するという選択肢があるわけですが、じつは顧問弁護士の費用はそれほど高額なものではありません。
弁護士は高額な報酬を得るといったプロトタイプな描かれ方をする場合がありますが、それは映画やドラマ、小説などの世界のことであって、顧問弁護士には当てはまらないのです。
また、通常の法律相談や簡単な書類作成などは無料になりますし、訴訟にまで発展した場合などの弁護士報酬は正規料金から割引になる場合も多いです。
つまり、会社の法務部を運営していくよりも格段にリーズナブルで、いつでもすぐに法務サービスを受けたり相談できるのも顧問弁護士のメリットなのです。
なお、顧問弁護士の費用については、のちほど詳しくお話します。
⑥自社のニーズに合った必要な法務サービスを受けることができる
経営者は孤独だといわれます。
特に中小企業であれば、会社に関わるすべてを自分で判断し、最後は一人で決断しなければならないからです。
その点、顧問税理士は顧問先の会社の税務状況を詳しく把握しているので、経営者のよき理解者であり相談相手といわれますが、顧問弁護士も同様の役割を担います。
顧問弁護士は、会社の状況や経営者の方のニーズを把握することができるので、法的トラブルへの迅速な対応だけでなく、その会社にとって必要な法務サービスの提供や、経営相談もできるのです。
⑦トラブルの相手側に心理的なプレッシャーをかける
弁護士の意見を介在させるなどして、自社の顧問弁護士の存在を紛争の相手方に知らせることにより、心理的なプレッシャーをかけることができます。
また、いやがらせ行為など悪意のある相手方に対しては弁護士が前面に立ちますので、経営者の方は安心して経営に専念することができるのです。
なお、自社のホームページ、会社概要などに顧問弁護士に関する表記が可能になるため、法務対応やコンプライアンスについて、しっかり取り組んでいることを取引先や顧客など外部に対してアピールすることもできます。
また、悪質なクレームやカスタマーハラスメントへの抑止・予防にもなるでしょう。
企業ニーズ別:顧問弁護士に相談できる内容一覧
(1)自社のニーズに合わせて顧問弁護士を選ぶ
弁護士にも得手不得手があり、専門分野には当然強く、不慣れな分野には弱いものです。
やはり顧問弁護士への相談・依頼を検討される際は、その法律事務所や所属弁護士の専門分野や実績のあるジャンルをホームページなどで事前に調べておくことは大切です。
ここでは、みらい総合法律事務所でお受けしている相談内容について主な内容をご紹介します。
①労働問題
- ・従業員が逮捕・拘留された場合の雇用関係、解雇などに関する対応。
- ・従業員の加入する労働組合からの団体交渉の申入れに対する対応。
- ・従業員から残業代請求(労働審判・裁判)をされた時の対応。
②債権回収
取引先の売掛金の支払いが滞っている場合の早期回収の対応。
③損害賠償問題
自社で製造販売している商品について、消費者からクレームが入り、損害賠償を求められた場合の対応。
④会社法
- ・会社法に関する経営全般へのアドバイス。
- ・新規事業を始めるにあたっての法的問題の有無などへのアドバイス。
- ・後継者への事業承継やM&Aに関する法的問題の相談。
⑤契約書作成やリーガルチェック
- ・取引先から提示された契約書に、自社に不利な内容が含まれているかどうかのリーガルチェック。
- ・業務提携における手続き内容や必要な契約書、内容の相談。
⑥不動産取引
購入した不動産の瑕疵に対する損害賠償請求や契約解除への対応。
⑦企業紛争
取引先企業、同業他社などとの企業紛争解決。
⑧相続紛争
相続問題で起こった争いの解決など。
⑨破産手続き
会社の破産手続き、再生手続きの実務。
⑩税務訴訟
税務で起きた訴訟への手続きや解決実務。
(2)経営における契約書の重要性
経営を行なっていくうえでは、たとえば「労働契約書」「守秘義務契約書」「売買契約書」「金銭消費貸借契約書」などのさまざまな種類の契約書を締結します。
契約書の作成の仕方によっては、法律トラブルが発生した場合には交渉や裁判で、自社が不利な立場に立たされることもあります。
そうした事態にならないためには、事前に弁護士にリーガルチェックをしてもらい、法的に問題のない契約書を作成してもらうことが有益です。
その際、弁護士が会社の事情を知らないと、あくまで書面上の内容に対してしかアドバイスができません。
しかし、顧問契約を締結した弁護士であれば、あなたの会社の事情をわかっているので、書面上には表れてこないような特有の事情にも配慮したアドバイスが可能になるのです。
04.顧問弁護士の顧問料の相場金額を解説
(1)顧問弁護士と契約するデメリット
顧問弁護士と契約する場合のデメリットというなら、やはり顧問料がかかってしまうこと、になるでしょう。
通常、「月額顧問料●●万円」というように契約することがほとんどだと思いますが、各法律事務所、弁護士によってこの月額は変わってきます。
後ほど、顧問料の相場金額については詳しくお話しますが、平均的には5万円程度のケースが多いようです。
この金額を安いと感じるか、高いと感じるかは経営者の方の価値観や会社の状況などにもよるでしょう。
ただ、前述のメリットと自社の状況を考え合わせた時に、経営上、顧問弁護士の必要性を感じる、メリットは大きい、と感じるのであれば費用対効果は大きいといえるのではないでしょうか。
なお、顧問弁護士にかかる費用は必要経費や損金として控除の対象となります。
税務申告では、「支払手数料」「業務委託料」「支払顧問料」などの勘定科目で処理します。
その他にも、国税庁のサイトが参考になります。
<源泉徴収関連>
源泉徴収関連:No.2798 弁護士や税理士等に支払う報酬・料金
源泉徴収関連:No.2798 弁護士や税理士等に支払う報酬・料金等
(2)顧問弁護士費用の相場金額
顧問弁護士費用の月額については、日本弁護士連合会(日弁連)が公表している情報を参考に考えてみます。
【日弁連のアンケート内容】
「月3時間程度の相談については月額顧問料の範囲とする」という内容の顧問契約を中小企業との間で締結する場合の月額顧問料はいくらか?
【弁護士の回答】
【弁護士の回答】 | |
5万円 | 52.7% |
3万円 | 33.5% |
2万円 | 4.9% |
4万円 | 2.2% |
10万円 | 2.2% |
この結果から、顧問弁護士の月額顧問料の相場は5万円がもっとも多いことがわかります。
【参考資料】:弁護士報酬について(日本弁護士連合会)
(3)顧問内容以外の依頼では別途料金が発生
顧問弁護士の業務には、それぞれの弁護士によって違いがあります。
定期的な相談は、月に3時間程度、週に1回程度、とさまざまです。
また、簡単な契約書のリーガルチェックなどはサービス内容に含む場合もあります。
ただし、依頼する業務によっては顧問料以外に別途費用が発生するのが通常です。
その場合、顧問弁護士であれば、通常の依頼料金(弁護士報酬)よりも割引される場合が多く、他の案件よりも優先的に対応するので、これもメリットだといえます。
なお、案件ごとの弁護士報酬(顧問契約あり/なし)の相場金額については、次の日弁連のサイトを参考にしてみてください。
参考記事:売掛金2,000万円の回収の着手金・報酬金はいくらか?
参考記事:取引額3,000万円の契約書作成の手数料はいくらか?
参考記事:資産5,000万円の事業承継に関する相続の遺言作成料、遺言執行手数料はいくらか?
顧問弁護士の正しい探し方・選び方・注意ポイントとは?
(1)自社が必要とする法的サービスを提供できる弁護士を選ぶ
顧問料が高いからといって、その弁護士が有能で、自社に役に立つとは限りません。
また顧問料が安ければ、やはりそれなりのサービス内容、クオリティという場合もあります。
まずは、自社の抱える問題、必要としている法的サービスをよく考えて、それに見合った弁護士と顧問契約することが大切です。
①自社の事業・業界に知見があり詳しい弁護士
弁護士であれば誰でもいいわけではありません。
やはり、自社の事業、属する業界の知見があり、実績がある弁護士を選ぶのが望ましいといえるでしょう。
②自社のニーズに合った実績のある弁護士
たとえば病気であれば、風邪をひいたら整形外科には行かないように、自社の状況を考え、ニーズに合った実績がある弁護士に依頼するのがいいでしょう。
③レスポンスがよく説明がわかりやすい弁護士
説明がわかりにくい、連絡をしてもレスポンスが遅い、質問してもしっかり回答しないといった弁護士は顧問弁護士としてはふさわしくありません。
特に緊急性の高い問題には速やかに対処しなければ被害が拡大する可能性が高くなるので、対応が早く、正確な弁護士を選ぶべきです。
④人間的な相性が合う弁護士
仕事でも人間関係が重要なのは言うまでもないことでしょう。
人間ですから、やはり相性が合わない人というのは一定の割合でいるものです。
まず面談をした段階で、どうも相性が悪い、合わないと感じたなら契約しないほうがいいでしょう。
(2)顧問弁護士の選ぶ際の注意ポイント
費用に見合った、しかも自社のニーズに最適の弁護士を選ぶ際は、次のポイントに注意してください。
①弁護士のランキングサイトや口コミサイトは安易に信じてはいけない
こうしたサイトは民間企業が営利目的で運営していることが多いので、簡単に信じてはいけません。
多くの場合、掲載者から広告費を得ているため、都合の悪いことは書かれませんし、金額によって順位が決まっていることがあるからです。
顧問弁護士を選ぶ際は、次の4つのポイントを重視してください。
- ・解決実績などが豊富
- ・法務・労務などに関する専門書を執筆している
- ・弁護士の経験年数がある
- ・報道番組などから取材や出演依頼を受けている
②実際に会ってから契約するかどうか決める
インターネットで検索すると、さまざまな法律事務所のサイトが表示されます。
中には、いいことばかりを書いていたり、実際には解決していない案件を実績として掲載している事務所がないとは限りません。
やはり、サイトの内容だけから判断するのではなく、実際に会って面談をしてみることは大切です。
実際に会えば人となりもわかりますし、これまで実績について資料などを見せてもらうこともできます。
逆にいえば、これまでの実績を説明できない、あるいは自社の業界に関する質問をしても答えられないような弁護士とは契約してはいけない、ということになります。
弁護士へのご相談の流れ
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