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フリーランス保護法で発注者が注意すべきポイント

最終更新日 2024年 09月03日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

フリーランス保護法で発注者が注意すべきポイント

この記事を読むとわかること

 
「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等法)は2024(令和6)年11月1日に施行です。

この法律(フリーランス保護法)の目的は、取引の適正化を通じてフリーランスの労働環境を改善し、安定した労働条件を確保することです。

フリーランス保護法では、発注事業者のフリーランスに対する義務項目(「書面などによる取引条件」や「報酬支払期日の設定/期日内の支払」など)、さらには禁止事項(「成果物の受領拒否や返品」、「報酬の減額」、「買いたたき」など)が規定されています。

本記事では、取引でのトラブルが起きないよう、フリーランス保護法の内容や罰則、実施する際の注意ポイントなどについて詳しく解説していきます。
 

フリーランス保護法施行の背景と目的について

リモートワークの普及などもあり、働き方が多様化し、フリーランスでの仕事を選択する人が増えています。

フリーランスとは、特定の企業や団体に所属したりせず、雇用契約や労働契約の関係を結んで労働力を提供するのではなく、業務に応じて、個人で、企業や団体と自由に契約を交わして仕事をする人、またその働き方のことです。

企業側もフリーランスを積極的に活用しており、今後もさらにその流れは加速していくと考えられます。

しかし、フリーランスには労働基準法などの法律が適用されないため、法人に対して立場が弱く、取引上で不利な状況に置かれてしまうという現実があります。

たとえば、業務を委託する企業(発注事業者)から、

  • ・一方的に契約内容を変更される
  • ・報酬の支払いが遅れたり、ダンピングされる
  • ・約束にない仕事、業務を押しつけられる
  • ・不当に仕事の発注を減らされる

 
といったことなどを要求され、トラブルに発展したという事例も多く報告されています。

そこで、個人が事業者として受託した業務に安定的に従事することができる環境を整備するため、国は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス・事業者間取引適正化等法)を制定しました。
 

  • ・この法律は、取引の適正化を通じてフリーランスの労働環境を改善し、安定した労働条件を確保することを目的としています。
  • ・この法律では、フリーランスに対する禁止事項が定められており、発注事業者には一定の制限を課しています。

 
発注元である企業側は、この法律を理解して、順守する必要があります。

※なお本記事では、次のように表記を統一します。
特定受託事業者=フリーランス
発注元の企業=発注事業者
フリーランス・事業者間取引適正化等法=フリーランス保護法
 

【参考資料】:フリーランスの取引に関する 新しい法律が11月にスタート!(中小企業庁)

フリーランス保護法の内容を解説

ここでは、フリーランス保護法で義務づけられている項目や罰則について、詳しく見ていきます。

発注事業者の義務項目

書⾯等による取引条件の明示(第3条)

発注事業者がフリーランスに業務委託をする際は、口頭ではなく、書面やメールで取引条件を明確にすること、が求められています。

なお、LINEやSNSのメッセージでも認められますが、重要な条件を記載する場合は文書化したほうがいいでしょう。
 

<明示するべき取引条件の項目>

  • ・業務の内容
  • ・報酬の額
  • ・支払期日
  • ・発注事業者とフリーランスの名称
  • ・業務委託をした日
  • ・給付を受領/役務提供を受ける日
  • ・給付を受領/役務提供を受ける場所
  • ・検査を行なう場合は、検査完了日(検査を行なう場合)
  • ・報酬の支払方法に関する必要事項(現金以外の方法で支払う場合) など

報酬支払期日の設定/期日内の支払(第4条)

発注事業者が従業員を雇っている場合、報酬の支払いに関しては、原則として、次のことが求められています。
 

  • ・発注した物品等を、受け取った日から数えて60日以内の、
  • ・できる限り早い日に報酬支払期日を設定し、
  • ・期日内に報酬を支払うこと。

 
ここでは、起算日=発注した物品等を受け取った日、に注意してください。
たとえば、「月末締め/翌月末払い」の場合、60日以内での支払いになるので問題ありません。
しかし、「月末締め/翌々月末払い」の場合では60日を超えてしまう可能性があります。

ただし例外として、委託する業務が再委託の場合(発注事業者が他の者から受けた業務委託をフリーランスに再委託するようなケース)は、元委託契約の報酬支払期日から30日以内に、発注事業者からフリーランスへの報酬の支払期日を定め、それまでに報酬を支払わなければならないとされています。
その場合、成果物の受け取りから60日を超えるケースが認められます。

これらは「下請法の60日ルール」と関係するものですが、下請法との違いとしては上記の再委託の規定の他にも次のことがあげられます。

・下請法では、下請事業者の責めに帰すべき事由による支払の不払いや支払遅延は認めていませんが、フリーランス保護法ではフリーランスの帰責事由による支払遅延があり得ることを前提とした規定になっています(第4条5項)。

・また下請法では、不払いや支払遅延に対しては年14.6%の遅延利息が定められていますが、フリーランス保護法では遅延利息の規定はありません。
 

【参考資料】:支払期日を定める義務について(公正取引委員会)

 

フリーランスに対する禁止事項(第5条)

発注事業者(従業員あり)の一方的な都合でフリーランスが不利益を受けないために、業務委託期間が1か月を超える場合、次のことが禁止されています。
 

  • ・受領拒否
  • ・報酬の減額
  • ・返品
  • ・買いたたき
  • ・商品やサービス等の購入や利用の強制
  • ・金銭やサービス、その他の経済上の利益の不当な提供要請
  • ・成果物の内容の不当な変更、やり直し

 
なお、次のような場合に費用を負担せず作業をさせることも禁止されています。
 

  • ・やむを得ず業務内容を変更した場合
  • ・追加作業が発生した場合
  • ・成果物の受領後に修正などが発生した場合

募集情報の的確表示(第12条)

発注事業者(従業員あり)が、広告などにフリーランスの募集に関する情報を掲載する際には、 次のことが禁止されています。
 

  • ・虚偽の表⽰や誤解を与える表示をしてはならない
  • ・内容を正確かつ最新のものに保たなければならない

育児介護等と業務の両立に対する配慮(第13条)

発注事業者(従業員あり)は、6か月以上の業務委託では、フリーランスが育児や介護などと業務を両立できるように、フリーランスの申出に応じて必要な配慮をしなければいけません。

次のようなケースが例示されているので参考にしてください。

(例1)
「子供の急病により、予定していた作業時間の確保が難しくなったため、納期を短期間繰り下げたい」との申出に対し、納期を変更するケース。

(例1)
「家族の介護のため、特定の曜日はオンラインで就業したい」との申出に対し、一部の業務をオンラインに切り替えられるよう調整するケース。

ハラスメント対策のための体制整備(第14条)

発注事業者(従業員あり)は、フリーランスに対するハラスメント行為に関して、次のような措置を講じる必要があります。
 

  1. 1.ハラスメントを行なってはならない旨の方針の明確化、周知、啓発
  2. 2.相談や苦情に応じ、 適切に対応するために必要な体制の整備
  3. 3.ハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応 など

 
具体的な対応としては、ハラスメント防止のための研修の実施、ハラスメントに関する相談窓口の設置などがあげられます。

中途解除等の事前予告・理由開示(第16条)

発注事業者(従業員あり)は、6か月以上の業務委託を中途解除したり、更新しない場合は次の必要があります。
 

  • ・原則として30日前までに予告しなければならない。
  • ・予告の日から解除日までに、フリーランスから理由の開示請求があった場合は、理由の開示を行なわなければならない。

 

【参考資料】:フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ(厚生労働省)

発注事業者が満たす要件に応じて義務内容が異なる

上記の義務項目については、発注事業者が満たす要件によって、フリーランスに対する義務の内容が変わってくることに注意が必要です。

「フリーランスに業務委託をする事業者で、従業員を使用していない場合の義務内容」
(※フリーランスに業務委託するフリーランスも含む)
⇒①書⾯等による取引条件の明示

「フリーランスに業務委託をする事業者で、従業員を使用している場合の義務内容」
⇒①書⾯等による取引条件の明示
 ②報酬支払期日の設定/期日内の支払
 ④募集情報の的確表示
 ⑥ハラスメント対策のための体制整備

「フリーランスに業務委託をする事業者で、従業員を使用していて、⼀定の期間以上行なう業務委託の場合の義務内容」
⇒①書⾯等による取引条件の明示
 ②報酬支払期日の設定/期日内の支払
 ③フリーランスに対する禁止事項
 ④募集情報の的確表示
 ⑤育児介護等と業務の両立に対する配慮
 ⑥ハラスメント対策のための体制整備
 ⑦中途解除等の事前予告・理由開示

フリーランス保護法に違反した場合の罰則

一部の規定を除いて、発注事業者がフリーランス保護法に違反した場合は、行政による調査を受けることになり、さらに指導や勧告が行なわれます。

勧告に従わない場合には、命令を受けることになり、企業名を公表される場合があります。

命令に従わない場合は、50万円以下の罰金が科され(第24条)、発注事業者が法人の場合には行為者と法人両方が罰せられます(第25条)。

フリーランス保護法でおさえておくべき注意ポイント

フリーランス保護法と他の法律との関係性も理解しておく

フリーランス保護法は既存の法律との関係性から、その内容は、大きく2つのパート(章)に分けることができます。

フリーランスと発注事業者間の取引の適正化を図るための章

「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」や「独占禁止法」を参考に作成されており、主管官庁は公正取引委員会、中小企業庁になっています。

フリーランスの就業環境の整備を図るための章

「職業安定法」や、労働者に対するハラスメント対策などを参考に作成されており、主管官庁は厚生労働省です。

フリーランス保護法はすべての企業に適用される

下請法は、資本金が1,000万円以下の下請事業者を保護対象としています。
そのため、資本金1,000万円超の事業者が規制対象となります。

一方、フリーランス保護法は資本金額に規定はなく、すべての発注事業者が規制対象になります。
つまり、これまでは下請法の規制対象外となっていた中小・零細企業にも適用されることに注意してください。

業務委託する相手がフリーランス保護法の適用対象か確認する

フリーランス保護法の適用対象は、次のように規定されています。

フリーランス=業務委託の相手方である事業者で、従業員を使用しないもの。
発注事業者=フリーランスに業務委託する事業者で、従業員を使用するもの。

・ 「従業員」には、短時間や短期間などの⼀時的に雇用される者は含まれません。
「週労働20時間以上かつ31日以上の雇用が見込まれる者」が該当します。

・特定の事業者に従業員として雇用されている個人が、副業で行なう事業について、事業者として他の事業者から業務委託を受けている場合は、フリーランスに該当します。

・契約名称が「業務委託」であっても、働き方の実態として労働者である場合、フリーランス保護法は適用されず、労働基準法等の労働関係法令が適用されます。

発注事業者が業務委託する際は、フリーランス保護法の対象に該当するかどうか、すべてのフリーランスに確認する必要があります。

社内への周知と業務プロセスの整備を実施する

社員などの従業員に対しては、次の内容について研修などを実施して周知し、順守を徹底していくことが大切です。
 

  • ・フリーランス保護法の内容や禁止事項
  • ・発注書の形式や支払期日のルール
  • ・違反した場合の罰則
  • ・ハラスメント対策としての相談窓口等の設置 など

契約書の見直しをして新たに作成を行なう

社員などの従業員が口頭での連絡だけで業務を行なっていないかを確認し、契約書の必要性を周知徹底します。

現在の契約書や発注書がフリーランス保護法に対応しているかの確認をして、必要があれば修正します。

また、契約内容の変更が必要な場合は、フリーランスとの合意のうえで、新たな契約書による契約を取り交わす必要があります。

フリーランス保護法への対応は弁護士に相談・依頼してください!

ここまで、フリーランス保護法の内容について解説してきました。

今後、フリーランスの力も活用し、会社の業績を上げていくには、発注事業者が守るべき義務などを認識したうえで、トラブルが起こらないよう、法的な整備をしていく必要があります。

しかし、社内に適切な担当部署がなかったり、適任な責任者がいない場合もあるでしょう。
また、総務部などではリーガルチェックまではできない、という会社もあると思います。

そうした場合は、ぜひ弁護士に相談・依頼することも検討していただきたいと思います。

企業法務やコンプライアンス経営に精通した弁護士であれば、次のことが可能になります。
 

  • ・フリーランス保護法への対応について会社が抱える問題点を洗い出せる。
  • ・問題点や懸案ポイントを一つひとつ、細心の注意をもって法的にチェックできる。
  • ・制度設計から契約書の作成までを依頼することができる。

 
なお、いつでも、すぐに相談したい、費用を抑えたい場合は顧問弁護士をもつこともおすすめしています。
 

<顧問弁護士のメリット>

  • ・会社や経営者自身が抱える法的な問題を気軽に(電話やメールでも)相談できる。
  • ・法的な問題について必要な時に、しかも継続的・優先的に相談できる。
  • ・実際に起きた法的トラブルの緊急性を判断して、素早く解決してくれる。
  • ・法的トラブルを事前に予防できて、リスクを抑えることができる。
  • ・経営者が気づいていない会社の問題点を指摘してもらい、改善できる。
  • ・弁護士を探して依頼するなどの手間が省ける。
  • ・社内に法務部を設置するコストを削減できる。
  • ・通常の法律相談や簡単な書類作成は無料になる場合がある。
  • ・訴訟にまで発展した場合などの弁護士報酬は割引になる場合も多い。
  • ・自社のニーズに合った法務サービスを受けることができる。
  • ・法改正などの最新の法律の情報を教えてもらえる。
  • ・トラブルの相手方にプレッシャーをかけることができる。 など

 

 
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