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突然、会社のオフィスや店舗の立ち退きを請求された場合の対処法

最終更新日 2024年 09月27日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

突然、会社のオフィスや店舗の立ち退きを請求された場合の対処法

この記事を読むとわかること

 
本記事では、会社や店舗の賃貸物件のオーナーや賃貸人から、突然に立ち退きを要求された場合の対処法について解説します。

【ポイント①立ち退き要求の正当事由の必要性】
賃借人(借りている側)に契約違反がない場合、正当事由がないかぎり、オーナーや賃貸人からの立ち退きや撤去要求は法的に認められません。

つまり、借主保護の観点から法的には貸主の「正当事由」が必要とされるのです。
 
【ポイント②立ち退き要求の正当事由の判断の流れを確認】
賃貸人の立ち退き要求の正当事由が認められるかどうかの判断は、次のような流れになります。
 

  • (1)「土地や建物の使用を必要とする事情」の存否や程度を確定
  • (2)土地や建物に関する「これまでの経緯」や「利用状況」を勘案
  • (3)「財産上の給付(立ち退き料の提供)」や「代替物件の提供」などにより、正当事由が充足したと認められるかどうか判断

 
【ポイント③物件を継続して使用することの必要性を主張する】
賃借人には、その物件を継続して使用することについての必要性を具体的に主張することが重要になります。
 
【ポイント④立ち退き料の請求と増額を主張する】
賃貸人側の法的な正当事由が認められないなら、賃借人は立ち退き要求に応じる必要はありませんが、最終的に立ち退き要求を受け入れる場合、賃借人は「立ち退き料」を請求することができます

ただし、オーナーや賃貸人は低い金額を提示してくるのが通常のため、立ち退き料の増額を主張して、認めさせる必要があります。
 

会社や店舗の立ち退きとは?

賃貸物件を会社や店舗として利用している場合、オーナーや賃貸人などから立ち退きを求められるケースがあると思います。

「突然、何の前触れもなく更新を拒絶された」
「提示された立ち退き料に納得がいかない」
「条件に合う移転先がなかなか見つからない……」

こういった状況に直面したり、事業運営に影響が出てきてしまい、困っている方もいらっしゃるでしょう。

そもそも、本稿で立ち退きとは次のようなことをいいます。
 

  • ・賃貸借契約において、
  • ・オーナーが建物の建て替えや取り壊しなどの理由から、
  • ・契約違反などのない賃借人に対して、
  • ・契約期間の更新拒絶や解約申し入れを行ない、
  • ・物件からの退去を要求すること。

 
※賃料不払いや使用方法違反などによる賃貸借契約解除などは除きます。

会社や店舗の立ち退きで重要な「正当事由」の注意ポイント

正当事由がなければ立ち退きは認められない

賃借人(借りている側)に契約違反がないのに、賃貸人(貸している側)が賃貸借契約の更新拒絶をしたり、賃貸借契約を解約する(立ち退きを求める)際には、正当事由(せいとうじゆう)がないと法的に認められません。
 

借地借家法
第二十八条(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

 
賃貸借契約において「期間の定め」があっても、それは「更新が前提」となっているので、貸主側の都合で更新しない(立ち退きを求める)場合は、借主保護の観点から、貸主に「正当事由」が必要とされます

つまり、賃借人は「借地借家法」により守られている、ともいえるわけです。

正当事由が認められる条件について

では、どういった場合に貸主の正当事由が認められるのか、条文には次のように規定されています。
 

借地借家法
第六条(借地契約の更新拒絶の要件)
前条の異議は、借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む。以下この条において同じ。)が土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過及び土地の利用状況並びに借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、述べることができない。

 
条文にある「前条の異議」とは、借地契約の賃借人からの更新請求や使用継続に対して、賃貸人は異議を述べることができるということです(第五条)。

つまり、「異議を述べる」ことが更新を拒絶することになるわけです。

次に、立ち退きが認められる正当事由の条件について詳しく見ていきます。

賃貸人(オーナー)側の事情

次のようなケースが該当します。
 

  • ・オーナーやその家族が、自らの住居やテナントとして建物を使用したい場合
  • ・現在の建物を取り壊して、建て替えをしたい場合
  • ・再開発を目的とする場合 など

 
以前では、たとえば再開発に関わるケースなどは正当事由として認められない傾向がありました。

しかし近年では、建物が老朽化していない場合でも、再開発が土地の有効利用のために正当なものとして評価されて、正当事由として認められるケースが増えている傾向にあります。

賃借人(経営者等)側の事情

まず考慮されるのは、賃借人の居住や営業の必要性です。

たとえば長期間、居住していた建物を立ち退くことによって生活の基盤を失ってしまう場合、また店舗や事務所として使用して、地域に根差した商売を行なっているなどの事情があれば、「この物件を賃借し続ける」理由になる可能性があります。

ただし、次のようなケースでは賃借人の必要性が認められない可能性があります。
 

  • ・その建物が長期間にわたり使用されていないようなケース。
  • ・建物の腐朽や損傷が著しく、賃借の効用を十分に発揮できていないようなケース。
  • ・賃借人が多くの不動産を所有しており、あえてその土地や建物を使用する必要が認められないようなケース。

これまでの経緯や経過期間

賃貸人の立ち退き要求に正当事由があるかどうかを判断する場合、次の内容なども考慮されます。
 

  • ・契約における賃借人の債務の履行状況
  • ・賃料の額や改定の状況
  • ・権利金などの一時金
  • ・更新の有無や内容
  • ・建物の賃貸借に関する経緯や事情
  • ・賃貸借の経過期間
  • ・信頼関係破綻事実の有無 など

 
ここでは次のような、「賃貸人にとって有利な事情」がある場合は、正当事由が認められやすくなります。
 

  • ・建て替える予定があることを知りながら賃貸借契約を締結した場合
  • ・家賃を滞納している場合 など

借地借家の利用状況

次のような事情がある場合も、立ち退き要求の正当事由として考慮されます。
 

  • ・借地借家が法律に違反するような使われ方をしている
  • ・本来の用途に沿って利用されていない
  • ・賃借人が利用する必要性が認められない

代替物件や立ち退き料の提供(財産上の給付)

最終的に、賃貸人の立ち退き要求の正当事由が認められるには、次のポイントが重要になります。
 
<代替物件の提供>
賃貸人が代替物件として同条件の建物を賃借人に提示すれば、立ち退き要求が認められやすくなります。
 
<立ち退き料の提供>
実際、多くの場合では、「賃貸人が立ち退き料を支払う意思を示していること」、また「いくらの立ち退き料を提示しているか」が重要になってきます。

つまり、賃借人の不利益を緩和することで、立ち退き要求の正当事由が認められやすくなるわけです。

立ち退き要求の正当事由の判断の流れ

上記の内容をまとめると、賃貸人の立ち退き要求の正当事由が認められるかどうかの判断のプロセスは、次のような流れになります。
 

  • ①「土地や建物の使用を必要とする事情」の存否や程度を確定
  • ②土地や建物に関する「これまでの経緯」や「利用状況」を勘案
  • ③「財産上の給付(立ち退き料の提供)」や「代替物件の提供」などにより、正当事由が充足したと認められるかどうか判断

立ち退き料の適正な相場金額とは?

立ち退き料の相場と内訳

前述したように、賃借人に重大な契約違反がないかぎり、立ち退き料が争点になることが多いので、賃借人は必ず要求するべきです。

法的には立ち退き料の金額について規定があるわけではなく、案件によって金額が変わってくるため、相場金額を提示するは難しいのですが、次の要素を考慮しながら算定されるのが通常です。

借地権・借家権の補償

借地権や借家権には、財産的価値が存在します。

借地権の場合、該当する土地を使用して得られる経済的利益を金銭として割り出すことで、賃借人はその金額を立ち退き料として受け取ることが可能です。

移転費用

引っ越し、移転で発生する費用(新居に関わる初期費用や敷金、礼金等)は、賃借人にとっては損失にあたります。

これらの費用は賃貸人、賃借人のいずれかが負担するという規定は法律で定められてはいませんが、立ち退き料に含まれることが多いといえます。

精神的損失に対する補償

これまで使い慣れていたオフィスや店舗を移転するのですから、精神的な負担やストレスが発生することも考えられます。

これらは実害にはあたりませんが、立ち退き料に反映される場合もあります。

提示された立ち退き料に不服なら増額を求めることは可能

一般的に、オーナーや賃貸人が提示してくる立ち退き料は低額であることが多いといえます。

そのため、話し合いが複雑になり、交渉するのが面倒だからといった理由などで、すぐに提示金額で妥協すると、賃借人は損をしてしまうことになります。

ですから、オーナーや賃貸人から提示された立ち退き料に納得できない場合は増額請求をするべきです。

特に、立ち退き要求が再開発にかかわる場合などでは、最終的に当初の提示額から数十倍で解決した例もあるのが現実なのです。

しかし増額交渉は、当事者同士で行なっていても、なかなか解決しないという現実があるのも事実です。

そうした場合に強力な味方となれるのが、立ち退き交渉に強い弁護士という存在です。

立ち退き問題を弁護士に相談・依頼するメリット

オーナーや賃貸人から立ち退き要求を受けた場合は、できるだけ早めに弁護士に相談・依頼してください。

弁護士に相談・依頼すると、次のようなメリットがあります。
 

  • ・オーナーや賃貸人と交渉する際、弁護士を代理人として立てることによって受け取れる立ち退き料が増額する可能性がある。
  • ・厄介な交渉を弁護士に任せることで、精神的な負担やストレスを軽減することができる。

 
なお弁護士に、「いつでも、すぐに相談したい」「費用を抑えたい」「いろいろな法的相談も定期的に依頼したい」という場合は、あなたの会社の顧問弁護士をもつこともおすすめです。
 

<顧問弁護士をもつことのメリット>

  • ・会社や経営者自身が抱える法的な問題について気軽に(電話やメールでも)相談できる。
  • ・法的な問題について必要な時に、しかも継続的・優先的に相談できる。
  • ・実際に起きた法的トラブルの緊急性を判断して、素早く解決してくれる。
  • ・法的トラブルを事前に予防することができ、リスクを抑えることができる。
  • ・経営者が気づきにくい会社の問題点を指摘してもらい、改善できる
  • ・弁護士を探して依頼するなどの手間やコストが省ける。
  • ・社内に法務部を設置するコストを削減できる。
  • ・通常の法律相談や簡単な書類(契約書)作成は無料になる場合がある。
  • ・訴訟にまで発展した場合などの弁護士報酬は割引になる場合も多い。
  • ・自社のニーズに合った法務サービスを受けることができる。
  • ・法改正などの最新の法律の情報を教えてもらえる。
  • ・トラブルの相手方にプレッシャーをかけることもできる。 など

 

 
弁護士法人みらい総合法律事務所では随時、無料相談を行なっています。(※事案によるので、お問い合わせください)

顧問弁護士についてのご相談も、いつでもお受けしていますので、まずは一度、気軽にご連絡いただければと思います。

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