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建設アスベスト(石綿)による労災と損害賠償請求

最終更新日 2024年 08月22日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

建設アスベスト(石綿)による労災と損害賠償請求

この記事を読むとわかること

 
本記事では、アスベスト(石綿)被害により発症した、石綿肺(じん肺)や肺がん、中皮腫などの疾病に苦しんでいる労働者の方やご遺族が受け取ることができる損害賠償金や労災給付金などについて解説していきます。

「訴訟と損害賠償金について」

  • ・損害賠償金を受け取るためには、アスベスト訴訟を国に対して提起し、和解する必要があります。
  • ・アスベスト訴訟には「工場型アスベスト訴訟」と「建設型アスベスト訴訟」があります。
  • ・なお、「建設型アスベスト訴訟」については、2021(令和3)年に最高裁判決で国敗訴の判決が言い渡され、「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律」が成立したことにより、被害者の方やご遺族は損害賠償請求訴訟を起こさずに国から最大1,300万円の給付金を受け取ることが可能になっています。

 
「労災保険と給付金について」

  • ・国からの損害賠償と労災保険は別の制度のため、労災保険給付を受給している方も、アスベスト訴訟により国から損害賠償金を受け取れる可能性があります。
  • ・労災給付金を受け取るためには、認定要件や請求期限があります。
  • ・受け取ることができる給付金の種類や注意ポイントについても解説します。

 
「その他の給付金や損害賠償金について」

  • ・労災給付金を受け取ることができない方には、「石綿健康被害救済制度」が設けられており、「救済給付」と「特別遺族給付金」を受け取ることができます
  • ・さらに、労働者の方やご遺族は、使用者(会社)に対して損害賠償請求をすることも可能です。

 

アスベスト(石綿)による健康被害問題とは?

過去、アスベスト(石綿)は耐火性や耐腐食性、耐薬品性、保温断熱性、電気絶縁性などに優れていることから、建材や電気製品など、さまざまな製品に使用されてきました。

その用途は、約3,000種類ともいわれています。

ところが、その裏でアスベスト(石綿)工場や建設現場の労働者の方が大気中に飛散したアスベスト(石綿)の繊維を長期間、大量に吸い込むことで、肺がんや中皮腫(ちゅうひしゅ)などの疾病を発症するといった健康被害の問題が浮上。

さらに、そうした労働者の方が、アスベスト(石綿)が作業着などに付着したまま帰宅したことなどにより、それを吸い込んだご家族にまで健康被害がおよんでいきました。

しかし、国はこうした実態を把握していたにもかかわらず、健康被害の防止に向けた措置を企業側に義務づけるなどの抜本的な対応や法律の整備などを行なっていませんでした。

アスベスト訴訟の種類と概要について

アスベスト訴訟とは?

その後、被害者の方やご遺族が国を相手取って訴訟を起こするという事態に発展していきます。
こうした訴訟を「アスベスト訴訟」といいます。

アスベスト訴訟には、「工場型アスベスト訴訟」と「建設型アスベスト訴訟」があるので、次に詳しく見ていきましょう。

工場型アスベスト訴訟とは?

アスベスト工場で作業をしていたために、アスベストの健康被害にあった労働者の方やそのご遺族による訴訟が「工場型アスベスト訴訟」です。

代表的な事例には、「大阪泉南アスベスト(石綿)訴訟」があります。

石綿産業が集中していた大阪府南部・泉南地域のアスベスト(石綿)工場で、仕事に従事していた元労働者や遺族、近隣住民が、「石綿による健康被害を被ったのは、国が規制権限(局所排気装置の設置義務付け、防じんマスクの着用義務付けなど)を適切に行使しなかったためである」として、損害賠償を求めて国を提訴。

そこで、最高裁は2014(平成26)年10月9日、「昭和33年5月26日から昭和46年4月28日までの間、国が規制権限を行使して石綿工場に局所排気装置の設置を義務付けなかったことは、国家賠償法1条1項の適用上、違法である」と判断しました。

(大阪泉南アスベスト訴訟(第1陣)については、国の責任を全部否定した大阪高等裁判所の判決を破棄・差戻し、大阪泉南アスベスト訴訟(第2陣)については国の責任を一部認めた大阪高等裁判所の判決を維持)

その後、大阪泉南アスベスト訴訟(第1陣)については、差戻し後の大阪高等裁判所において、和解の成立に向けた協議を行ない、同年12月26日に原告との和解が成立した、というものです。

これにより、現在では労働者の方とご家族は国を相手に裁判を起こしたうえで、証拠資料により一定の要件を満たすことが確認された場合には、国は訴訟の中で和解手続を進めることとなり、被害者(原告)は賠償金を受け取ることができるようになっています。
 

【参考資料】:石綿(アスベスト)工場の元労働者やその遺族の方々との和解手続について(厚生労働省)
アスベスト訴訟(工場労働者型)

建設型アスベスト訴訟とは?

建設現場での作業に従事していたために、アスベストの健康被害にあった労働者の方やそのご遺族による訴訟が「建設型アスベスト訴訟」です。

2005(平成17)年、新聞がアスベスト(石綿)を使用した建材の製造会社の従業員が肺がんや中皮腫で死亡していたこと、また工場近隣の住民や従業員の家族も中皮腫(ちゅうひしゅ)などを発症し、死亡していたことを報道したことで社会問題化していきます。

そこで、建設業務に従事していた元労働者と遺族が、「アスベスト(石綿)による健康被害を被ったのは、国が規制権限を適切に行使しなかったからである」として提訴。

国家賠償法に基づく損害賠償を請求した裁判で、最高裁判所は「2020(令和2)年12月14日以降、国の上告受理申立てを受理しない」との決定を行なったことにより、国の責任を一部認めた高裁判決が確定し、2021(令和3)年5月17日の最高裁判決で、国敗訴の判決が言い渡されたものです。

同年5月18日、これらの判決と「与党建設アスベスト対策プロジェクトチーム」における検討を踏まえ、厚生労働大臣と建設アスベスト訴訟原告団および弁護団との間で、基本合意書が締結。

さらに、与党において法案化が進められ、同年6月9日には議員立法により「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律」が成立。
2022(令和4)年1月19日には、同法が完全施行となりました。

これにより、①アスベスト(石綿)にさらされる建設業務に従事することにより、②石綿関連疾病にかかった、③労働者や一人親方・中小事業主(家族従事者等を含む)の方々やご遺族は「建設アスベスト給付金」を受け取ることができるようになっています。
 

【参考資料】:建設アスベスト給付金制度について(厚生労働省)
建設アスベスト給付金制度の概要(厚生労働省)

工場型アスベスト訴訟で損害賠償金を受け取る方法

まずは、アスベスト(石綿)工場の元労働者の方とご遺族が損害賠償金を受け取る方法について解説していきます。

工場型アスベスト訴訟における国との和解要件とは?

損害賠償金を受け取るためには、まず国を相手に国家賠償請求訴訟を提起します。
そこで、国と裁判上の和解をするためには次の要件を満たす必要があります

和解の要件

1.昭和33年5月26日から昭和46年4月28日までの間に、局所排気装置を設置すべき石綿工場内において、石綿粉じんにばく露する作業に従事したこと。
※労災保険や石綿健康被害救済法による給付を受けている方でも、上記期間内に労働者として石綿粉じんにばく露する作業に従事した方は対象となります。

2.その結果、石綿による一定の健康被害を被ったこと。
※石綿による一定の健康被害とは、「石綿肺」「肺がん」「中皮腫」「びまん性胸膜肥厚」などです。

3.提訴の時期が損害賠償請求権の期間内であること。

必要とされる書類

  • ・日本年金機構発行の「被保険者記録照会回答票」(当時の勤務先等が表示される)
  • ・都道府県労働局長発行の「じん肺管理区分決定通知書」
  • ・労働基準監督署長発行の「労災保険給付支給決定通知書」
  • ・医師の発行する「診断書」 など

 
これらを証拠として、要件の確認を行ない、和解の手続きが進められていきます。

アスベスト(石綿)が原因のおもな疾患と発症までの期間

1.石綿(アスベスト)肺
肺が線維化してしまう肺線維症(じん肺)という病気の一つで、石綿のばく露によっておきた肺線維症が石綿肺と呼ばれています。
仕事でアスベスト粉塵を10年以上吸入した人が発症するとされ、発症までの期間(潜伏期間)は15~20年といわれています。

2.肺がん
アスベストばく露から肺がん発症までの潜伏期間は15~40年と考えられており、ばく露の量が多いほど発生率が高いとされます。

3.悪性中皮腫
胸膜(肺を取り囲む)、腹膜(肝臓や胃などの臓器を囲む)、心膜(心臓や大血管の起始部を覆う)などにできる悪性の腫瘍で、若い時期にアスベストを吸い込んだほうが発症しやすいとされます。
発症までの潜伏期間は20~50年と考えられています。

4.びまん性胸膜肥厚
胸膜の慢性線維性胸膜炎の状態で、発症までの潜伏期間は30~40年と考えられています。
 

【参考資料】:アスベスト(石綿)に関するQ&A(厚生労働省)
石綿(アスベスト)関連疾患(環境再生保全機構)

損害賠償請求権の期限(消滅時効)

消滅時効については、国家賠償法4条により、民法724条が準用されるため「被害者又はその法定代理人が損害および加害者を知った時から3年間」、「不法行為の時から20年間」なります。

ただし、民法724条の2では、「人の生命または身体を害する不法行為」に基づく損害賠償請求権の消滅時効は、5年間」とされていることに注意が必要です。

また、2020年4月1日に改正民法が施行されたことにより、改正前民法の消滅時効(3年間)が完成していない場合は、改正民法の規定である「5年間」が適用されていることにも留意してください。
 

  • ・2020年3月31日以前に被害者または、その法定代理人が損害および加害者を知った場合⇒3年の時効
  • ・2020年4月1日以降に被害者または、その法定代理人が損害および加害者を知った場合⇒5年の時効

 
損害賠償請求の権利がなくなってしまう消滅時効は複雑なため、一度、弁護士に相談されることをおすすめします。
 

【参考資料】:2020年4月1日から事件や事故によって発生する損害賠償請求に関するルールが変わります(法務省)

損害賠償金額について

国から支払われる賠償金額は、条件により次のようになっています。

じん肺管理区分の管理2で合併症がない場合 550万円
管理2で合併症がある場合 700万円
管理3で合併症がない場合 800万円
管理3で合併症がある場合 950万円
管理4、肺がん、中皮腫、びまん 性胸膜肥厚の場合 1,150万円
石綿肺(管理2・3で合併症なし) による死亡の場合 1,200万円
石綿肺(管理2・3で合併症あり又 は管理4) 肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚による死亡の場合 1,300万円

 
※「じん肺管理区分」=じん肺健康診断に基づいて、じん肺を区分したもの(じん肺法4条2項)。
※「じん肺」=粉じんを吸入することによって肺に生じた線維増殖性変化を主体とする疾病(同法2条1項1号)。

なお、上記金額の他に、遅延損害金と弁護士費用相当額が別途に支払われる可能性があります。
 

【参考資料】:じん肺法(厚生労働省)

建設型アスベスト訴訟で損害賠償金を受け取る方法

建設型アスベスト訴訟は必要なくなった!?

建設現場での仕事に従事していたために、建材に含まれているアスベスト(石綿)による健康被害を負った方が損害賠償金を受け取るためには、以前は国に対して損害賠償訴訟を起こして和解する必要がありました。

しかし前述したように、「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律」が成立し、2022(令和4)年1月19日に完全施行となっているため、現在では国に対する訴訟・和解は必要なくなっています。

建設アスベスト給付金の主な内容について

そのため、要件を満たす方は、550~1,300万円の「建設アスベスト給付金」を受け取ることができます。

対象者の要件

次の1~3の要件を満たす方が対象になります。

  1. 1.下記の表の期間ごとに、記載しているアスベスト(石綿)にさらされる建設業務に従事することにより、
  2. 2.石綿関連疾病にかかった、
  3. 3.労働者や一人親方・中小事業主(家族従事者等を含む)であること。
期間 業務
昭和47年10月1日~昭和50年9月30日 石綿の吹付けの作業に関する業務
昭和50年10月1日~平成16年9月30日 一定の屋内作業場で行なわれた作業に関する業務

※ご本人が亡くなっている場合には、ご遺族のうち、①配偶者、②子、③父母、④孫、⑤祖父母または⑥兄弟姉妹の順位で請求が可能。

給付金額

認定審査会の審査の結果に基づき、病態区分に応じて次の表のように 給付金が支給されます。

1.石綿肺管理2で、じん肺法所定の合併症のない方 550万円
2.石綿肺管理2で、じん肺法所定の合併症のある方 700万円
3.石綿肺管理3で、じん肺法所定の合併症のない方 800万円
4.石綿肺管理3で、じん肺法所定の合併症のある方 950万円
5.中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、石綿肺管理4、良性石綿胸水である方 1,150万円
6.上記1および3により死亡した方 1,200万円
7.上記2、4および5により死亡した方 1,300万円

※給付金を支給された後、症状が悪化した方には、請求に基づき、追加給付金(表における区分の差額分)が支給される。
※じん肺法所定の合併症は、「肺結核」「結核性胸膜炎」「続発性気管支炎」「続発性気管支拡張症」「続発性気胸」の5つの疾病。

給付金額の減額・調整の注意事項

<給付金の減額について>
※石綿にさらされる建設業務に従事した期間が一定の期間未満の方は給付金額が1割減額される。

肺がん、石綿肺 10年未満
著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚 3年未満
中皮腫、良性石綿胸水 1年未満

肺がんの方で喫煙の習慣があった場合は給付金額が1割減額される。
「短期ばく露による減額」と「喫煙の習慣による減額」のいずれにも当てはまる場合は、給付金の19%が減額される。
 

<給付金の調整について>
すでに国から和解金の支払いを受けた方、裁判の判決により損害賠償等がなされた方も給付金の請求ができます。
ただし、国から支払いを受けた価額を限度として給付金の支給額の調整が行なわれます。

国以外(勤務先の企業等)から和解金の支払いを受けた方、判決による賠償が行なわれた方も給付金の請求を行なうことができます。
ただし、その金額に応じて給付金の支給額が調整されることがあります。

給付金の請求期限

1. 次のいずれか遅い方の日から起算して20年

  • ・石綿関連疾病にかかった旨の医師の診断があった日
  • ・石綿肺についてのじん肺管理区分の決定(管理2~4のみ)があった日

 
2.石綿関連疾病により死亡した日から起算して20年
 

アスベスト(石綿)による疾病では労災給付金も受け取れる

アスベスト訴訟の損害賠償と労災保険の違いについて

アスベスト(石綿)による健康被害にあった労働者の方が受け取ることができるものには、「労災保険給付金」もあります。

アスベスト訴訟による損害賠償と労災保険の違いは次のようになります。

「アスベスト訴訟による損害賠償」

  • ・司法上の手続きによってアスベスト被害者の救済を図るもので、国に対して訴訟を提起する必要がある(工場型アスベスト訴訟の場合)。
  • ・建設型アスベスト訴訟については、和解による損害賠償金ではなく、建設アスベスト給付金を受け取ることができる。
  • ・アスベスト工場・建設現場の元労働者の方またはご遺族が対象。

 
「労災保険」

  • ・行政上の手続きによりアスベスト被害者の救済を図るもので、訴訟を提起する必要はない。
  • ・業務上疾病にかかった方が対象。

労災保険給付金とは?

業務中に負った傷害(ケガ)や疾病、後遺症、死亡を労働災害(労災)といいます。

労働者の方が発症した肺がんや中皮腫などの疾病が、アスベスト(石綿)ばく露作業に従事していたことが原因である(業務上疾病)と認められると、労災保険から給付金などを受け取ることができます。

労災保険で受けられる給付金には次のものがあります。
 

  • ・療養(補償)給付:必要な療養を給付
  • ・休業(補償)給付:休業4日目から休業1日につき給付基礎日額の60%を支給
  • ・傷病(補償)年金:療養開始から1年6か月経過後、傷病が治癒していない場合に傷病等級に応じて年金を支給
  • ・障害(補償)給付:障害が残った場合に、障害等級に応じて、年金または一時金を支給
  • ・介護(補償)給付:重い後遺障害が残り介護が必要となった方に対し、介護費用としてかかった実費を現金支給
  • ・遺族(補償)給付及び葬祭料(葬祭給付):遺族に対し年金または一時金及び葬祭料を支給

労災保険給付金での注意ポイント

認定要件に注意

労災保険給付金を受け取るための疾病の認定要件は細かく指定されているので、厚生労働省が公表している資料で確認してください。
 

【参考資料】:石綿(アスベスト)による疾病の労災認定(厚生労働省)

請求期限に注意

労災保険給付を受けるには、被災労働者やご遺族などが所定の保険給付請求書に必要事項を記載して、被災労働者の所属事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長に提出します。

なお、労災保険給付には時効があり、次のような請求期限があるので注意してください。
 

  • ・療養(補償)給付:療養の費用を支出した日ごとに請求権が発生し、その翌日から2年。
  • ・休業(補償)給付:賃金を受けない日ごとに請求権が発生し、その翌日から2年。
  • ・遺族(補償)年金:被災労働者が亡くなった日の翌日から5年

 

【参考資料】:7-5 労災保険の各種給付の請求はいつまでできますか。(厚生労働省)
労災保険給付(労災保険制度)(環境再生保全機構)

労災保険給付を受けていても損害賠償金を受け取れる

アスベスト訴訟と労災保険は別の制度ですから、労災保険給付を受給している方であっても、アスベスト訴訟により国から損害賠償金を受け取れる可能性があることを覚えておいてください。

アスベスト訴訟の前に労災認定を受けておく

アスベスト訴訟で国との和解により損害賠償金を受け取るためには、労災認定を受ける際に必要な労災資料一式が、和解要件を満たしていることを証明する重要な証拠にもなります。
そのため、アスベスト訴訟を提起する前に労災認定を受けておいたほうが有利になるといえます。

石綿健康被害救済制度について

労災保険給付金を受け取れない方のために、2006(平成18)年から「石綿健康被害救済制度」が設けられており、「救済給付」と「特別遺族給付金」を受け取ることができる可能性があります。

この制度には次のような特徴があります。
 

  • ・アスベスト訴訟のように提訴をする必要はなく、また労災保険より対象者が広く設定されています。
  • ・日本国内においてアスベストの吸入により指定疾病にかかった方が対象となります。
  • ・救済給付では、労災保険の対象にならない方のうち、中皮腫や肺がんなど指定疾病療養中の方への医療費や、そのご遺族への遺族給付が支給されます。
  • ・特別遺族給付金は、時効により労災保険の給付を受けられなくなった労働者のご遺族に支給されるものです。

 
詳しい内容は、こちらのサイトを参考にしてください。
 

【参考資料】:石綿による健康被害を受けたかたへ。「石綿健康被害救済制度」があります(政府広報オンライン)

会社に対して損害賠償請求する方法

使用者の安全配慮義務とは?

ここまで、アスベスト訴訟による損害賠償や労災保険給付、救済給付と特別遺族給付金などについて解説してきましたが、これらの他にも労働者の方やご遺族が損害賠償金を受け取れる可能性があります

それは、企業に対して損害賠償請求をするという方法です。

アスベストの健康被害の責任は国だけではなく、被害を受けた労働者の方を雇用していた企業や、さらにはアスベスト建材を製造していたメーカーにもあるといえます。
 

「労働契約法」
第5条(労働者の安全への配慮)
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

 
使用者(会社)には、アスベストの粉じんが飛散する可能性のある工場や建設現場で作業する労働者に対して、粉じんの飛散防止などの措置を講じて、生命・身体の安全を確保すべき「安全配慮義務」があるということです。

和解か?訴訟か?弁護士の必要性

使用者である企業に対して損害賠償請求する手続きとしては、「和解」と「訴訟」があります。

一般的には、まずは使用者である企業に対して和解交渉を提案します。
交渉に入った場合は、損害賠償の要否や損害賠償金額、支払方法などについて話し合います。

しかし企業側は、「証拠が不十分」と主張してきたり、そもそもの交渉を拒否する場合もあるでしょう。
また、弁護士を立てて争ってくることも考えられます。

そうした場合、労働者(被害者)の方が自力で和解交渉をまとめるのは、かなり難しいと言わざるを得ません。
やはり、和解交渉がもめる、あるいは決別した場合は、損害賠償請求に強い弁護士に相談・依頼することを検討されるのがいいと思います。

損害賠償や労災申請は弁護士にご相談ください!

アスベスト(石綿)による健康被害にあわれた労働者の方、ご遺族は損害賠償金や労災給付金を受け取る権利があります。

しかし訴訟を提起し、国や企業と和解して損害賠償金を受け取るのも、労災給付の申請をするのも、簡単なことではありません。

そこで、アスベスト(石綿)による健康被害で苦しんでいる労働者の方やご遺族には、弁護士に相談・依頼をすることを検討していただきたいと思っています。

弁護士に相談・依頼すると次のことが可能になります。
 

  • ・国や企業への提訴を実現して、裁判により損害賠償金を受け取ることができる。
  • ・労災給付申請のアドバイスを受けたり、必要書類を用意してもらえる。
  • ・裁判や申請に必要な手続きや企業との交渉など厄介な手続きを代行してもらえる。
  • ・精神的な負担やストレスから解放される。

 
みらい総合法律事務所では随時、無料相談をお受けしています。
アスベスト(石綿)による健康被害でお困りの方は一度、ご連絡ください。

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