内定通知書や誓約書に記載がなくても取り消せる場合 内定の取り消しができる場合(2)
逆に、内定通知書や誓約書に記載がなくても取り消せる場合もあります。
裁判例では、採用内定当時知ることができず、または知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取り消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができる場合に採用内定を取り消せるとしています。
以下、具体的な例をみていきます。
目次
・履歴書などの提出書類に虚偽の記載をしていたことが発覚した場合
虚偽記載であることが内定後明らかになった場合、虚偽であることを内定当時知ることができず、または期待できず、虚偽記載の内容や程度が重大で、業務や企業の秩序維持に支障をきたすおそれがあるようなときには、内定を取り消すことが合理的といえるので、取り消しが認められる可能性が高いと考えられます。
反対に、虚偽があったとしても、軽度であり、業務に支障をきたすおそれがない場合には、取り消すことが合理的とはいえないので、それのみで内定取り消しはできないと考えられます。
・内定者が犯罪行為を行い逮捕された場合
内定者が内定後に逮捕された場合、逮捕の事実は採用内定当時知ることができず、または知ることが期待できないような事実です。
したがって、犯罪が重大で、仕事の遂行に支障がある場合などは、これを理由として採用内定を取り消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができると考えられますので、取り消すことができると考えられます。
・内定者の健康状態が悪化した場合
内定後に、業務を行うことができない程度に健康状態が悪化したような場合、健康状態の悪化を予測することが内定当時期待できず、健康状態の悪化が業務を遂行することが困難なほどに重大で、内定を取り消すことが客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができる場合には、内定を取り消すことができると考えられます。
・企業の経営が悪化し、内定者を採用することが困難になった場合
企業の経営が悪化し、内定者を採用することが困難になったような場合、内定者には採用が困難になったことについて何の責任もありません。
ですので、厳しい要件を満たさなければ内定取消は認められず、具体的には整理解雇に準じた要件(内定取消の必要性、回避努力、人選、説明)を満たす必要があります。