問題社員に対抗するための証拠作りの重要性
今まで、さまざまな問題社員に会社側の立場から対処してきましたが、社員を解雇するのは非常に大変です。よほど重大な違反行為でないと、1回の問題行為だけで解雇できるケースはほとんどありません。多くのケースでは、注意を繰り返し、軽い処分から徐々に重い処分に移っていくことになります。
実際、会社の社長や担当者の方が相談に来る段階では、「今まで散々注意してきたのに改善されない!」、「もう我慢の限界だ!解雇にしたい!」とおっしゃいます。
時代が変わってきたとはいえ、いまだに日本の会社では、終身雇用制度が根強いのか、多少の問題があったからといってすぐには解雇や退職勧奨には踏み切らず、社員を注意しては様子をみる、ということがよく行われています。
それ自体は悪いことではないのですが、問題は「今まで散々注意してきたのに改善されない!」という事実を何ら記録に残していないことです。普通解雇や懲戒解雇が有効とされるためには、必要相当な注意や処分を繰り返し、適切な指導・教育を行い、問題社員に弁明の機会も与え、それでも改善されなかったといえることが必要になってきます。
しかし、そのような対処をしてきたことが何ら記録に残っていないと、労働審判や裁判で苦しい戦いを強いられます。自分の問題行為を棚に上げて、会社に対して、社員としての地位確認や賃金支払いを求めてくるような社員は、往々にしてずる賢く、会社が解雇までに行ってきた上記のような対処をすべて否定し、さらにはそもそも問題行為があったことすら否定してくるのです。
したがって、「今まで散々注意してきたのに改善されない!」という事実を何ら記録に残さないでご相談に来られた会社の方に対しては、どうしても「念のため、再度証拠作りをしていきましょう」とアドバイスせざるを得ないことが多いのです。
「証拠作り」とは、例えば、業務日誌等に問題行為を記録する、注意や処分を行う場合には書面を交付し、同内容のものを会社に保管する(受け取ったことを承認する社員の署名等を取得しておくとなお良いでしょう)、社員に反省及び再発防止について念書を提出させるなどです。
これらを揃えたうえで、軽い処分を重ね、最終的に解雇等に踏み切るのです。