状況によって違う問題社員への対処法
問題社員への対処は、状況に応じていくつかの方法が考えられます。
目次
まずは穏当な方法で注意する
問題が極めて重大であれば、後述のように最初から解雇に踏み切ることも考えられますが、多くのケースでは、いきなり解雇に踏み切ると違法と判断されるでしょう。
現行の労働法及び裁判例に照らすと、社員は非常に手厚く保護されており、一度雇用した社員を解雇するのは非常に難しいのです。
その中で、まず会社が行うべきは、多くのケースでは事実上の「注意」ということになります。注意をする際のポイントは、口頭で行うだけでなく、注意内容を書面で交付し、それを記録として残しておくことです。
後述の懲戒権の行使や解雇を適法に行うことの前提として、「会社としては何度も注意したのに改善されなかった!」という証拠を残しておくことが重要なのです。
異動・転勤・出向で職場から排除する
問題の内容が、例えば男性社員から女性社員へのセクハラの場合、問題の男性社員を、女性のいない部署へ異動させたり、支店への転勤や関連会社への出向等させれば問題が解決するように思えます。
しかし、職種変更を伴う異動命令は権利濫用にならないか慎重に検討する必要があります。
また、セクハラの事案で転勤を命じ適法とされた裁判例は存在しますが、その判断の中で「管理体制がしっかりしている点で女子職員に接触する機会が少ない」ということが考慮されている点に注意が必要です。
つまり、セクハラを理由として転勤を命じる場合、転勤先がセクハラを抑止できる環境でないならば、その転勤は「合理性のない命令で違法」と判断される可能性があります。
さらに、出向ともなると、社員の同意が原則として必要となるため、出向をもって職場から排除するのは非常に難しいものとなります。
懲戒権で一刀両断!!
注意しても問題が改善しない場合、就業規則に定められる懲戒を検討することになるでしょう。就業規則に懲戒に関して定めていない会社は存在しないと思いますが、懲戒事由に形式的にあたるからといって、いかなる懲戒処分も許されるわけではないことに注意が必要です。
懲戒解雇や諭旨解雇については後述しますが、減給や賞与減額、降職・降格、出勤停止という懲戒権の行使も、社員の生活に多大な影響を及ぼすことから、問題の重大性や頻度に照らして必要相当な懲戒権行使を行わなければなりません。会社としては慎重な判断が求められます。
合意退職のススメ
問題社員への対処方法の最終手段として解雇が考えられます。
しかし、解雇に踏み切る前に合意退職という解決ができないか模索してみてください。
解雇は、その有効性が争われるリスクがありますが、合意退職の場合そのリスクは低く、また万が一、労働審判や裁判で争われたとしても社員は合意して(ほとんどの場合は一定の金員を受け取って)退職していった以上、会社に不利な判断がなされる可能性は減るでしょう。