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株式会社のみなし解散とは?|解散しても事業継続できるか?

最終更新日 2025年 06月30日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

株式会社のみなし解散とは?|解散しても事業継続できるか?

この記事を読むとわかること

 
長年会社の登記変更を行わずに放置していると、「みなし解散」として解散登記されることはご存知でしょうか。

みなし解散はいきなり行われるわけではなく、法務局より変更登記を促す通知書が届きます。

この通知書を無視していれば、みなし解散として会社が解散することになります。

みなし解散された株式会社は、解散後も事業を継続できるのでしょうか?

ここでは、株式会社のみなし解散の概要や、みなし解散への対処法、注意点など、みなし解散について詳しく解説します。

なお、一般社団法人・財団法人のみなし解散は割愛します。
 

なぜ「みなし解散」が起こるのか?

会社が「みなし解散」になれば、事業を継続できなくなる可能性があります。

長年休眠状態にしている会社だけではなく、事業を継続している会社にも起こり得ることなので注意が必要です。

まずは、みなし解散の意味や、みなし解散制度が設けられている目的について解説します。

みなし解散とは

みなし解散とは、会社が休眠状態で実質廃業状態であると法務局がみなした場合に、会社の解散手続きを強制的に法務局が行う制度です。

株式会社を設立する際には、法務局で商業登記を行うことが原則です。

役員や会社の所在地の変更など登記事項に変更があれば変更登記を申請しますが、長年何もしていない会社は休眠状態であると判断されます。

休眠状態のまま会社を放置することはできないため、法務局は長く変更登記をしていない会社を会社法第472条に基づいてみなし解散を行います。

みなし解散の目的

みなし解散という制度が設けられている目的は、休眠状態の会社を放置しないためです。

休眠状態の会社を放置することには、さまざまなリスクがあります。

1つ目のリスクは、登記の信頼性が失われるという点です。
事業を行っていないにも関わらず解散手続きをしない会社が増えれば、経済活動の把握をする障害になり、登記手続き対する信頼性が低くなってしまいます。

2つ目のリスクは、犯罪に休眠会社が利用されることです。
休眠会社を買収して詐欺などの犯罪の手段として利用されるケースがあるため、みなし解散をすれば犯罪の予防につながります。

みなし解散になれば株式会社は
どうなるのか?

法務局によってみなし解散が行われた場合、事業の継続の可否が代表者にとって大きな不安要素となるでしょう。

みなし解散になった株式会社はどうなるのでしょうか?

通常の解散と同じ

みなし解散になった株式会社は、通常の会社の解散と同様の手続きが行われます。

会社の解散とは、会社の事業を停止して法人格を消滅させるための法的手続きを指します。

個人事業主であれば廃業届を提出すれば廃業することができますが、株式会社はそうではありません。

会社の廃業には手順を踏んで手続きを進める必要があり、解散はその手続きを始める最初の工程に該当します。

つまり、みなし解散で解散登記されたからといって会社が廃業になるというわけではなく、法人格はまだ存続している状態です。

3年以内であれば事業を
継続できる

みなし解散になったとしても会社がすぐに廃業するわけではないため、事業を継続することは可能です。

みなし解散とされてから3年以内であれば、株主総会の決議によって会社を継続できることが法律でも認められています(会社法第473条)。

言い換えれば、みなし解散から3年を経過すれば事業は継続できず、会社を元の状態へ戻すことはできません。

解散と廃業の違い

そもそも解散と廃業は混同されやすく、同じ意味合いを持つと勘違いされることも少なくありません。

解散はあくまでも廃業までの工程のひとつであり、廃業とは異なります。

会社が廃業すれば資産や負債など全てが整理され、法人格は消滅します。
そのため、会社が行っていた事業を元に戻すことはできません。

一方で、解散は廃業までの手順のひとつであり、会社を廃業するための最初の手順になります。

会社の解散登記を行った後は、会社の資産や負債を整理するための清算手続が行われ、生産結了後に会社は廃業となります。

みなし解散の要件とタイミング

みなし解散は、一定の要件を満たす会社に対して行われる措置です。

みなし解散の対象になる要件や、みなし解散が行われるタイミングについてみていきましょう。

みなし解散の対象になる要件

みなし解散は、変更登記を行わずに長年放置している会社に対して行われます。

最後に登記してから12年経過している株式会社が対象です(会社法第472条)。

株式会社の取締役の任期は通常ならば2年、非公開会社であれば最長10年になるため、本来であれば新たな取締役の就任時には登記が必要になります。
同じ取締役が再任する場合も同様です。

そのため、取締役の任期が経過しても登記がなければ、事業をしていない休眠状態だとみなされます。

実際には取締役の任期が過ぎていたとしても、そのまま登記せず放置している会社も少なくありません。
なぜならば、次の取締役が就任するまでは、取締役の任期が過ぎても権利は保有されたままになるからです。

しかし、そのまま登記を放置することは、みなし解散の対象になるリスクがあるということを知っておきましょう。

みなし解散のタイミング

みなし解散はいきなり前触れもなく行われるものではありません。

みなし解散を行う前に法務大臣による官報公告および通知書が送付されます。

このタイミングは法律で定められていませんが、毎年10月頃になるとされています。
以前は毎年行われるものではありませんでしたが、近年では毎年行われる傾向にあります。

みなし解散の確認方法

登記を放置しており、みなし解散の対象になっている可能性があるという会社もあるでしょう。

みなし解散の対象かどうかを確認する方法は、法務局から届く通知だけではありません。
登記簿謄本(履歴事項全部証明書)で確認することができます。

登記簿謄本の中の「解散」という項目にみなし解散している旨が記載されます。
ただし、この方法で確認できるのは、みなし解散後からになります。

みなし解散が予告された場合の
対処法

みなし解散を予告された場合の対処法としては、「会社を継続する場合」と「会社を廃業する場合」に分けることができます。

事業を継続したいのかどうか検討し、状況に応じた対処を行いましょう。

会社を継続する場合

みなし解散を予告されたものの会社を継続したいという場合は、みなし解散からそのまま解散登記されてしまう前に手続きを行う必要があります。

会社を継続する場合に行う手続きは、法務大臣の官報公告から経過している期間によって方法が異なります。

官報公告から2カ月以内

官報公告がなされた日から2カ月以内の場合は、事業を廃止していない旨の届出書を提出します。

これにより、みなし解散を回避できます。

届出書はみなし解散の通知書に付属されており、下記の内容の記載を行います。
 

  • ・商号と本店、代表者の氏名と住所
  • ・まだ事業を廃止していない旨
  • ・記入した日付
  • ・登記所の表示
  • ・代理人が届出をする場合は代理人の氏名と住所

 
管轄登記所へ郵送または持参して提出します。

また、役員変更など登記に変更があった部分の変更登記を申請することでもみなし解散を回避できます。

官報公告から2カ月以上3年以内

官報公告から2カ月を過ぎればみなし解散として登記されてしまいますが、3年以内であれば会社を元に戻せる可能性があります。

株式会社を継続するには、株主総会決議によって解散していない状態へ戻します(会社法第473条)。

そのためには、まず清算人の就任と登記を行わなければなりません。
なぜならば、みなし解散によって既に清算会社になっているため、清算人を選任して登記する必要があります。

そして、清算人が株主総会で株主を招集し、会社を継続することについての特別決議を行います。

特別決議では、株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。

また、みなし解散によって取締役は全員退任していることになっているため、改めて取締役等の選任を行います。

会社を廃業する場合

株式会社がみなし解散になったタイミングで会社を廃業したい場合は、みなし解散の後に清算手続きを行う必要があります。

まずは清算人の選任と登記申請を行い、決算や税務署への申告、清算に向けた債権回収や資産の分配などを行ないます。

清算処理が終われば株主総会にて清算事務の結了を決議し、法務局や税務署など各機関に清算結了の登記を届出ます。

みなし解散における注意点

みなし解散はいきなり起こるわけではなく、その前に通知が届くので適切に対処すればみなし解散を回避することは可能です。

反対に、休眠状態の会社であれば、清算する機会になるでしょう。

ただし、みなし解散においては下記の点について注意しなければなりません。

過料が徴収される

会社には役員など登記事項に変更があった場合、登記変更をする義務があります。

そして、登記変更には、変更が生じたときから2週間以内という期限が設けられています(会社法第915条第1項)。
この期限を過ぎて申請をしても受理されますが、登記懈怠(とうきけたい)として代表者が100万円以下の過料を科せられます(会社法第976条第1項)。

過料の金額は変更登記の内容によって異なりますが、2万円~10万円前後になることが多いようです。
過料は代表者個人に科されるため、経費として扱うことはできません。

みなし解散になった場合、代表者は過料を支払わなければならないリスクがあることを知っておきましょう。

3年経過すれば会社は
復活できない

みなし解散になっても届出書や登記変更の提出によって事業を継続できますが、官報公告がなされた日から3年が経過している場合は会社を復活させることができません。

会社は清算手続を行い、廃業することになります。

みなし解散後も事業を継続したい場合は、できるだけ早く事業を継続する旨の届出書や変更登記を提出する必要があります。

みなし解散後に放置しても
廃業にならない

みなし解散の後に放置をしても会社は自動的に清算されるわけではないため、廃業にはなりません。

みなし解散から3年経過している場合でも、会社は復活できませんが清算会社として法人格は残ったままの状態になります。

法人格を残したままにすることには、さまざまなリスクがあります。

例えば、会社の財産を処分したいと考えても法人格が残ったままでは勝手に処分することはできません。
事業を継続しないのであれば、できるだけ早く清算手続きを行うべきです。

税金の支払いは続く

みなし解散をしても法人格は残っているため、税金の支払いは続きます。

法人税は所得に課せられているので、休眠状態で所得がなければ課せられません。

しかし、所得がなくても法人住民税の均等割りは課されます。
法人住民税の均等割りは毎年課されるため、事業を継続しない場合は早めに清算手続きを行うべきでしょう。

10年経過すれば登記が
閉鎖される

みなし解散から10年が経過すれば、登記官の職権によって登記簿が閉鎖されます(商業登記規則81条第1項)。

登記は現状を記録するための資料になるため、閉鎖されれば過去の資料として保存されることになります。
ただし、登記が閉鎖されても決算結了が済んでいなければ、解散会社として記録が保存されます。

申告をすれば閉鎖された登記を復活することができ、清算手続を行えます。
ただし、登記の閉鎖は税務署など各機関に連絡されるわけではないため、清算手続に進む場合は各所に個別の対応が必要です。

みなし解散を避けるために
できること

みなし解散になっても自動的に清算会社になるわけではないので事業は継続できますが、そのまま放置すれば清算手続に進むしか方法がなくなってしまいます。

みなし解散になってから対処するのではなく、みなし解散にならないように日頃から対処することも大切です。

変更登記は2週間以内に行う

登記事項に変更が起こった場合は、その都度変更登記を行うようにしましょう。

変更登記は、変更が発生してから2週間以内に行うことが原則です。
この期間を過ぎれば過料が科せられる可能性があります。

申請が面倒だからと後回しにするのではなく、できるだけ早く手続きを行ってください。

役員の任期を管理する

株式会社の役員の任期は、通常で2年、非公開会社で10年が最長です。

役員の任期満了後に再び同じ人物が役員に選任されることもありますが、この場合も役員の重任登記が必要です。
重任登記は必要ないと考えるケースや、登記を忘れてしまうケースも多いですが、必ず申請しなければなりません。

役員の任期をしっかり管理して登記を行っていれば、みなし解散になるような事態は避けられます。

まとめ

みなし解散になれば法務局によって強制的に解散登記されてしまい、さらにそのまま放置すれば会社の継続が難しくなります。

しかし、みなし解散の通知が届いた際にすぐ対処すれば解散を回避でき、事業の継続も可能です。

日頃から役員の任期の管理や変更登記を行っていれば、みなし解散になることはないため、予防策を講じておくことも大切です。
 

みなし解散でお困りの時は一人で悩まず、まずは一度、ご連絡ください。
 

 
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