労働時間とは何か?
「労働時間」とは、休憩時間を除いた、現に労働させる時間(実労働時間)をいいます。
労働基準法は、「使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない」「使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない」と規定し、労働時間の上限を規制しています(労働基準法32条)。
また、「休憩時間」については、「使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない」と規定しています(労働基準法34条)。
労働時間と休憩時間を合わせた時間は、「拘束時間」と呼ばれます。
行政解釈(昭和22年9月13日 発基17)によれば、休憩時間とは、単に作業に従事しない手待時間を含まず、労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間をいうとされています。
したがって、実際には作業を行っていないけれど、使用者からいつ就労の要求があるかわからない状態で待機している場合は、休憩時間に含まれず、労働時間になります。
就業規則等に記載された始業から終業までの時間で、休憩時間を除いたものを、「所定労働時間」といいますが、この所定労働時間外に行われる業務の準備や後片付けなどの時間も、一定の場合には労働時間となることがあります。
判例によると、労働時間は、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではない」とされています(三菱重工業長崎造船所事件 最高裁一小平成12年3月9日民集54巻3号801頁)。
したがって、労働時間といえるか否かは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれた時間といえるか否か」によって判断されることになります。
また、使用者の指揮命令は、明示だけではなく、黙示の場合も含みます。具体例としては、業務の準備、後片付け、事業所の掃除、休憩時間中の電話番や店番などは、使用者の指揮命令下にある時間と評価でき、労働時間にあたると考えられます。
また、所定労働時間外の社内研修等の参加時間も、出席が義務付けられている場合はもちろん、実質的に出席の強制があると思われる場合には、労働時間にあたると考えられます。
仮眠時間については、完全に労働から解放されている場合には労働時間にあたりませんが、例えば、警備の業務に従事している労働者が、仮眠中でも警報が鳴った場合等には直ちに業務に就くことを求められているような場合には、使用者の指揮命令下にあるといえ、仮眠時間も労働時間にあたるとされています(大星ビル管理事件 最高裁一小平成14年2月28日民集56巻2号361頁)。