就業規則と契約・法令・労働協約の関係は?
会社と社員の間の労働条件については、基本的には労働契約、すなわち、両者の間の合意によって決まります。
しかし、社員1人ひとりと契約書を交している会社がどれだけあるでしょうか?
じつは、会社が社員1人ひとりと契約書を交わさなくても「就業規則」があれば、問題はありません。
なぜなら、就業規則の規定は、それが「合理的」なものであり、かつ、社員に「周知」されていれば、労働契約の内容となるからです。
このように、就業規則は労働契約の内容と同様の効力を持つ、会社の頼れる守護神ともいえます。
今回は、就業規則の重要性について解説していきます 。
ところで、ひとつの疑問がわいてきます。
例えば、就業規則と個別の労働契約の内容に差異が生じた場合、契約内容はどちらに従うことになるのでしょうか?
つまり、就業規則と個別の労働契約ではどちらが優先するのかということです。
この場合は、2通りに分けられます。
まずは、個別の労働契約が就業規則で定める条件に達しない場合です。
例えば、就業規則では、時給1000円と規定されているのに、契約では時給900円と規定されているケースです。
こうしたケースでは、就業規則で定める条件に達しない部分については無効となり、無効となった部分は就業規則で定める基準がそれにとってかわることになります。
すなわち、就業規則が優先するということになります。
上記の例では、就業規則の「時給1000円」という条件が優先されることになります。
では、個別の労働契約の内容が就業規則で定める基準を上回る場合はどうでしょうか。
例えば、就業規則では、時給1000円と規定されているのに、契約では時給1200円と規定されているケースです。
この場合、個別の労働契約の内容が労働条件となります。
上記の例では、個別の労働契約の「時給1200円」という条件が優先されるわけです。
以上のように、個別の労働契約が就業規則よりも不利な定めをしている場合は、就業規則が優先します。
では次に、就業規則と法令や労働協約との関係はどうでしょうか?
じつは、労働契約との関係とは異なっています。
「就業規則は、法令や労働協約に反してはならない」とされており、法令や労働協約は就業規則よりも優越するものとされているのです。