採用の際、ハローワークの求人票と異なる労働条件に変更することは可能か?
ハローワークに求人をだすときには、業務の内容、賃金、労働時間その他の労働条件を明示することが義務付けられていますので、使用者は、求人票にこれらの労働条件を記載しなければなりません(職業安定法5条の3第2項)。
しかし、労働条件については、労働契約の締結時に正式に決定するのが原則です。
使用者が求人を出し、労働者が応募した時点では、労働契約が成立するわけではありませんので、求人票に記載した労働条件が自動的に労働契約の内容とはなるわけではありません。
ですので、求人票に記載した労働条件を労働契約締結時に変更したとしても、労働者が、変更された労働条件を承知した上で労働契約が締結されたときには、変更後の労働条件が労働契約の内容となります。
したがって、結論としては、求人票と異なる労働条件に変更することは可能です。
ただし、労働契約の締結の際に、合理的な理由もなく求人票記載の賃金よりも著しく低い賃金とするなど、労働条件を引き下げた場合には、使用者は信義則違反として損害賠償義務を負う可能性があります。
労働条件の引き下げに合理的な理由がある場合でも、求人票と異なる労働条件で労働契約を締結する場合には、変更の内容や理由について、労働者に対して説明を行う必要があります。
説明を行わずに労働契約を締結した場合、求人票記載の労働条件で労働契約が締結されたとみなされる可能性が高くなります。
あるいは、労働者に精神的苦痛を与えたとして、慰謝料を請求されることも考えられます。
裁判例では、採用の際、賃金に関する説明が不十分であったことと、配置転換に問題があったことをあわせて、慰謝料100万円を認めたものもあります。
ですので、求人票と異なる労働条件で労働契約を締結する場合には、変更の内容や理由について労働者に対し十分に説明し、なおかつ、労働者が変更を承知の上で労働契約を結んだことを証明する承諾書などの書面を残しておいた方がいいといえます。
なお、厚生労働省は、ハローワークでの求人票と実際の労働条件が異なる場合の対策を強化するとの方針を示しています。
具体的には、ハローワーク求人ホットラインを開設、専用窓口を設置し、申出を一元的に受付、申出についての事実確認と必要な指導を徹底し、さらに申出の集計・分析を行い、未然防止策の検討・実施に活用するとの対策を打ち出しています。