パワハラ・セクハラは犯罪!?職場の違法行為まとめ

 

 

このエントリーをはてなブックマークに追加    LINEで送る

パワハラ・セクハラは犯罪

 

最近、ニュースなどで「ハラスメント」という言葉をよく目にします。

 

そもそも、英語のハラスメントとは、苦しめること、悩ませること、迷惑などを意味する言葉で、これが嫌がらせや、いじめの意味で使われています。

 

ところで、あなたはハラスメントには一体どのようなものがあるか知っていますか?

 

たとえば、「モラル・ハラスメント(モラハラ)」は、職場や家庭内で行われる言葉によるハラスメントで、相手を精神的に支配して追い詰めていくものです。

 

「アカデミック・ハラスメント(アカハラ)」は、学校や大学、研究室などで行われるハラスメントで、教授が単位や研究テーマを与えないというようなもの。

 

その他にも、妊娠や出産を理由に職場で行われる「マタニティ・ハラスメント(マタハラ)」や、医師などが患者に対して高圧的な態度をとったり暴言を吐いたりする「ドクター・ハラスメント(ドクハラ)」、体臭や香水で周囲の人に不快感を与える「スメル・ハラスメント(スメハラ)」など、25種類以上のハラスメントがあるともいわれています。

 

その中でもよく知られているものに、「パワハラ」と「セクハラ」がありますが、近年の傾向としては、労働トラブルとなって裁判にまで至るケースが増えています。

 

そこで今回は、何をしたらパワハラ・セクハラなのか? どんな罪になる可能性があるのか? などについて法律的に解説したいと思います。

 

【パワハラが成立する3つの要件とは?】

 

厚生労働省が公表している「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」では、パワハラについて以下のように定義しています。

 

「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。」

 

「上司から部下に行われるものだけでなく、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して様々な優位性を背景に行われるものも含まれる。」

 

パワハラでは? と思われる行為を検討するには次の3つの要件を考えていきます。

 

①それが同じ職場で働く者に対して行われたか?
②職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に行われたものであるか?
③業務の適正な範囲を超えて、精神的・肉体的苦痛を与え、また職場環境を悪化させるものであるか?

 

【パワハラとなる6つの行為とは?】

 

次に、パワハラとなる行為については、具体的に以下の6つに分類されます。

 

①身体的な攻撃(暴行・傷害)
②精神的な攻撃(脅迫・暴言等)
③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
⑤過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

 

【パワハラ裁判で高額賠償金が支払われる?】

 

パワハラが行われた場合、被害者は損害賠償を求めて民事で訴訟を起こすことができます。
それは、会社には社員に対して以下のような義務や責任があるからです。

 

「職場環境配慮義務」
会社は、従業員との間で交わした雇用契約に付随して、職場環境を整える義務=職場環境配慮義務を負います。
社員等にパワハラやセクハラなどの被害が発生した場合、職場環境配慮義務違反(債務不履行責任<民法第415条>)として、会社はその損害を賠償しなければいけません。

 

「使用者責任」
ある事業のために他人を使用する者は、被用者(社員)が第三者に対して加えた損害を賠償する責任があります(民法第715条)。

 

過去の判例では、職場で行われた壮絶なパワハラによって社員が自殺したケースで高額な損害賠償金が認められています。

 

           

 

【パワハラをすると犯罪になる?】

 

上記のように、パワハラによる損害賠償請求は民事事件として裁判で判決が下されます。

 

一方、パワハラが刑事事件として犯罪になってしまうことはあるのでしょうか?

 

じつは、犯罪となる可能性があります。

たとえば、殴る・蹴るなど身体的な攻撃をした場合、「傷害罪」や「暴行罪」になる可能性があります。

 

「刑法」
第204条(傷害)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

 

第208条(暴行)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

 

傷害罪の場合、最高刑は15年の懲役にもなりますから十分な注意が必要です。

 

 

           

 

【職場での教育・指導でもパワハラになる?】

 

ところで、会社の社長や、部下を指導する立場の管理職の人からこんな質問を受けることがあります。

 

「仕事上、必要な指導や注意で部下を叱責することもあるのですが、それもパワハラになってしまうのでしょうか?」

 

「ミスをした社員を叱るのは当然です。でも、そうしたことまでパワハラにされたら、どう接していいのかわかりません……」

 

確かに、最近では仕事上で叱責すると、すぐに「パワハラだ!」と言われることがあるようですが、果たして、仕事上の叱責はパワハラになるのでしょうか?

 

じつは、社員の能力不足や職務怠慢の場合、会社は社員を教育指導してからでないと解雇などの懲戒処分はできないことになっています。

 

あまりに度を超えた人格への攻撃はパワハラになりますが、通常の仕事上の叱責はパワハラにはならないことは覚えておいてください。

 


           

 

【パワハラを防ぐための5つの措置】

 

厚生労働省が公表した統計データ「平成25年度個別労働紛争解決制度施行状況」によると、総合労働相談のうち、民事上の個別労働紛争の相談内容では「いじめ・嫌がらせ」が59,197件と、「解雇」や「退職」をおさえ、2年連続で最多となりました。
いかにパワハラやセクハラの相談やトラブルが増えているのかがわかります。

 

そこで次に、職場のパワハラを防ぐための5つの措置を紹介します。

 

①会社のトップが、職場からパワハラをなくすべきという明確な姿勢を示す。
②就業規則をはじめとした職場の服務規律において、パワハラやセクハラを行った者に対して厳格に対処するという方針や、具体的な懲戒処分を定めたガイドラインなどを作成する。
③社内アンケートなどを行うことで、職場におけるパワハラの実態・現状を把握する。
④社員を対象とした研修などを行うことで、パワハラ防止の知識や意識を浸透させる。
⑤これらのことや、その他のパワハラ対策への取り組みを社内報やHPなどに掲載して社員に周知・啓発していく。

 

適切な対応と措置をすれば職場からパワハラをなくすことは可能ですし、確実になくしていかなければ、社員は肉体的・精神的苦痛を受け、会社にも大きな損害が発生してしまいます。

 

会社と社員の双方が幸福な関係で仕事に全力を尽くしていけるように、会社の社長や管理職の人、さらにはすべてのビジネスパーソンには、これらの知識を知って、ぜひ実践していってほしいと思います。

 

jiji22

 

では次に、セクハラについて解説します。
普段、あなたが何気なくやっている行為、じつはセクハラで訴えられる可能性があります……。

 

【社会のセクハラへの目は厳しくなる?】

 

2015年2月、あるセクハラ裁判の判決が最高裁で言い渡されました。

 

じつは、セクハラ問題が最高裁まで争われるケースは珍しく、判決の行方は世間の注目を集めるものでした。

 

 

大阪の水族館で、2010年から2011年にかけて、管理職の社員が女性派遣社員に対して、「俺の性欲は年々増すねん」「結婚もせんでこんな所で何してんの、親泣くで」などのセクハラ発言を続けたことで、会社が下した懲戒処分を不服として争われたこの裁判では、主な争点は次の2点でした。
・どのような言動がセクハラになるのか?
・企業側の下した懲戒処分は適切なものだったのか?

 

判決の内容からわかってきたのは、次の4点です。
①セクハラ行為に対して会社が初めから重い処分を科すことの正当性が法的に認められ、企業側に幅広い裁量が許される。
②セクハラ被害者への救済の道が開かれていく。
②セクハラ行為への甘い対応は、企業イメージを傷つけ、業績悪化にも影響を及ぼしかねない。
③今後、企業は社内体制の整備とともに、セクハラへの対応の厳格化が求められていく。

 

つまり今後、セクハラ行為に対する世の中の目が厳しくなるとともに、企業側はセクハラ行為をした社員に対して厳しく対処することができるようになったということです。

 

今まで、「これくらいならセクハラにはならないだろう」と思っていた言動がセクハラとして厳しく罰せられる可能性が高くなったのです。

 

【セクハラになる行為とは?】

 

セクハラに関連する法律は、「男女雇用機会均等法」に定められています。

 

職場での行為がセクハラにあたるかどうかの判断には、まずは次の3点を検討します。

 

①「職場において行われるものかどうか」
職場とは当然、社員等(労働者)が所属する会社の事務所などの「働く場所」です。
しかし、ここで注意が必要なのは、法律上は会社の事務所だけでなく、労働者が業務を遂行する場所も「職場」とみなされるという点です。
たとえば、取引先の会社の事務所、打ち合わせでの飲食店、顧客の自宅なども職場となります。

 

②「労働者の意に反するものかどうか」
厚生労働省の「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」では、セクハラには「対価型」と「環境型」があるとしています。

 

〇対価型セクハラ
職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否したことで解雇、降格、減給などの不利益を受けるもの。

 

典型的な例として以下のような行為があげられます。
・女性社員に性的関係を強要した社長が、拒否されたため社員を解雇した。
・営業所内で社長や上司が日頃から社員等に性的な発言をしていたが、抗議されたため社員を降格させた。
・出張中の車中で上司が部下の体を触り、抵抗されたために不利益な降格や配置転換を行った。

 

〇環境型セクハラ
性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に大きな悪影響が生じるもの。

 

典型的な例として以下のような行為があげられます。
・上司のセクハラ的言動のため、部下が苦痛に感じ就業意欲が低下した。
・社員等に関する性的な内容の情報を同僚社員や上司などが意図的かつ
継続的に取引先で流布したため、苦痛に感じた社員等が仕事に手がつかなくなった。
・労働者が抗議したのに上司が事務所内にヌードポスターを掲示しているために苦痛を感じ業務に専念できなくなった。

 

③「行われた言動が性的なものかどうか」
どのような行為がセクハラになるのか、具体例を以下にまとめました。

 

〇性的な事実関係を尋ねること
〇性的な内容の情報を意図的に流布すること
〇性的な冗談やからかい
〇食事・デートなどへの執拗な誘い
〇個人的な性的体験談を話すこと
〇性的な関係を強要すること
〇必要なく身体に触ること
〇わいせつな図画(ヌードポスターなど)を配布、掲示すること
〇強制わいせつ行為、強姦等

 

 

【セクハラに対する損害賠償も高額化?】

 

パワハラの場合と同様に、セクハラ行為についても会社は社員に対して「職場環境配慮義務」と「使用者責任」を負います。

 

近年では、損害賠償金が高額化している傾向があります。

 

 

男性従業員から繰り返しセクハラを受けた女性従業員が、精神的苦痛を受け、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症し、退職を余儀なくされたとして損害賠償を求めた訴訟では異例の高額賠償金が認められました。

 

社内の危機管理をおろそかにしていると、会社の損害も大きくなっていくので注意が必要です。

 

【セクハラも犯罪になる可能性が…】

 

さらには、パワハラ同様、セクハラも犯罪になる可能性があります。

 

現在、セクハラに直接抵触する法律はありませんが、加害者の刑事責任を追及する法律には次のようなものがあります。

 

〇「傷害罪」(「刑法」第204条)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
※これケガをさせた場合ですが、精神を衰弱させるような精神的傷害にも適用されます。

 

〇「強要罪」(「刑法」第223条)
1.生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。

 

〇「名誉棄損罪」(「刑法」第230条)
1.公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

 

〇「侮辱罪」(「刑法」第231条)
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。

 

その他、場合によっては、「暴行罪」や「強制わいせつ罪」、「強姦罪」などが適用される可能性もあります。

 

【会社がとるべきセクハラ防止策】

 

では、会社がとるべきセクハラ防止策にはどのようなものがあるでしょうか?

 

厚生労働省が定める、「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」から抜粋しますので、ぜひ参考にしてください。

 

①「会社の方針の明確化及びその周知・義務」
・就業規則を含めた服務規律を定めた文書や社内報、パンフレット、ウェブサイトなどにセクハラ防止の方針を明文化して、研修や講習などの社員教育を徹底する。
・セクハラを行った者への懲戒規定を定め、その内容を社員に周知する。

 

②「相談対応の明確化」
・相談窓口の設置や担当者を明確にして周知する。
・相談を受けた場合のマニュアルや体制を整備する。

 

③「セクハラ事案の事後処理の迅速化と適切化」
・セクハラ被害にあった者と行為を行った者双方から聞き取りを行う。
・被害者と行為者双方への迅速かつ適切な対応。(紛争解決に向けた調停や配置転換、懲戒処分など)

 

④「相談者・行為者のプライバシー保護」
・プライバシー保護のための適切な措置。
・相談者や証言者が不利益にならないための措置など。

 

 

さて、ここまでパワハラとセクハラについて解説してきました。

 

裁判の流れからも、今後は会社側と社員双方に、厳格な対応と、高い倫理観が求められていくことになりそうです。

 

もし、「これくらいなら許されるだろう」などという甘い考えがあるならば、これを機会に正しい知識を身につけてください。

 

パワハラ・セクハラという違法行為で、会社員人生どころか、人生そのものを棒に振ることのないように十分注意していただきたいと思います。

 

このエントリーをはてなブックマークに追加    LINEで送る