介護事故を弁護士に相談するメリットとは?弁護士ができることや弁護士の選び方を解説
高齢化が進み、介護施設や介護サービスの利用者は増え続けています。
その一方で、介護の人材は不足しており、十分な人材確保ができていないことなどが原因で介護事故や事件のニュースは後を絶ちません。
大切な家族が介護事故に遭った場合、原因究明や損害賠償請求を行いたいと考える方も多いのではないでしょうか。
介護事故が起こった場合は弁護士に相談・依頼することでさまざまなサポートを受けられます。
ここでは、介護事故を弁護士に相談するメリットや弁護士ができること、弁護士の選び方などについて解説します。
目次
介護事故で訴訟となる事例
介護の現場ではさまざまなトラブルや事故が起こり得ますが、全てのトラブルや事故が訴訟になるわけではありません。
訴訟になるような事例は、利用者の身体や精神に関わるような重大な事故が起こった場合です。
介護事故が訴訟となる事例には、以下のようなことが挙げられます。
- ・転倒・転落
- ・誤嚥・誤飲・誤薬
- ・火災・火傷
- ・送迎中の交通事故
- ・入浴介助中の事故
- ・感染症
- ・食中毒
- ・徘徊
介護施設や介護サービスの利用中に発生した事故であれば介護事故に該当しますが、「施設側の安全配慮義務の違反」と「職員の過失や故意」の有無が争点になります。
介護事故が起こった場合に被害者や家族が請求できるもの
介護事故が起こった場合、介護施設は刑事責任・行政責任・民事責任の3つの責任を負う可能性があります。
その中でも被害者やその家族が訴えることができるものは、民事責任の部分です。
介護事故があった場合、介護施設や介護サービス側に被害者やその家族は、損害賠償を請求することができます。
損害賠償は、被害者が被った損害や慰謝料を指します。
損害賠償を請求する際には、いきなり訴訟になるというわけではありません。
まずは内容証明を介護施設や介護サービスへ送達し、示談交渉から始めることが一般的です。
示談交渉で解決できなければ、裁判所へ申立てて訴訟を提起することになります。
介護事故において弁護士ができること
介護事故が起こった場合の相談先には自治体の窓口や地域包括支援センターなどもありますが、弁護士はこうした相談先よりもできることの範囲が非常に広いといえます。
介護事故において弁護士ができることについてみていきましょう。
証拠収集と保全
介護事故が発生した場合、介護施設や介護サービスは利用者の家族に対して事故発生の理由、経緯など事故の詳細を説明する責任があります。
しかし、介護施設や介護サービス側の説明は一方的な立場のものであり、正確な情報に基づいた説明なのかどうかは判断できません。
弁護士は証拠収集を行い、事故がどのように起こったものであるのか証拠から立証します。
裁判や示談交渉を見据えるのであれば客観的な証拠が必要であり、事故報告書や介護記録、介護保険認定調査票、防犯カメラなど多数の証拠を集めなければなりません。
こうした証拠は利用者やその家族が請求すれば開示してもらえますが、場合によっては証拠の隠滅や改ざんが行われることもあります。
証拠の隠滅や改ざんを防ぐには証拠保全の手続きが必要であり、弁護士ならばスムーズに手続きを行うことが可能です。
示談交渉
介護事故が起こった場合、裁判よりも前に示談交渉から始めることが一般的です。
裁判は時間とお金がかかるため、負担を減らすために示談交渉から開始し、解決できなかった場合に裁判で争うことになります。
示談交渉では法的な知識が必要になるため、弁護士のサポートがあれば、スムーズかつ有利に交渉を進めやすくなるでしょう。
また、弁護士に依頼することで交渉を任せることができ、利用者やその家族の精神的負担が軽減されます。
訴訟
示談交渉で解決できなければ、訴訟を視野に入れることになります。
訴訟では裁判所を介して話し合うことができ、何らかの結論を必ず出すことができます。
訴訟をするためには裁判所へ申立てをする必要があり、申立書や証拠などを提出しなければなりません。
こうした手続きも弁護士ならばスムーズかつ的確に行えます。
また、裁判では利用者やその家族の主張を代わりに伝え、根拠となる証拠を提示します。
介護事故を弁護士に相談するメリット
介護事故が起こった場合、利用者やその家族が自力で示談交渉や訴訟を行うという選択肢もあるため、弁護士に相談すべきか悩む方もいるでしょう。
専門家である弁護士に任せることには多くのメリットがあります。
介護事故を弁護士に相談するメリットには、次のようなものが挙げられます。
アドバイスから今後の見通しを立てられる
全ての介護事故が損害賠償請求できるというわけではなく、ケースバイケースです。
損害賠償請求ができるかどうか判断するには、法的な知識が必要になります。
弁護士に状況を説明すれば、損害賠償請求できるかどうか見通しを立てることができるでしょう。
そして、今後どのようにすべきかアドバイスを得られます。
損害賠償を請求できるようなケースであれば、迅速かつ的確に示談交渉や訴訟に向けて準備を行う必要があります。
適切な損害賠償額を請求できる
介護事故による損害賠償額は法律で決められているわけではなく、事故や損害の大きさ、被害者の精神的苦痛、過失割合などさまざまな観点から判断されます。
弁護士に相談すれば、過去の判例などから適切な損害賠償額を知ることができます。
また、示談交渉や訴訟で請求する際にも、法的な根拠から適切な損害賠償額を請求しているという主張が可能です。
介護施設や介護サービス側からの提示や訴訟で認容される金損害賠償額は低いことが多い傾向にあります。
弁護士が介入することで積極的に主張や立証を行えば、損害賠償額を引き上げられる可能性が高まるでしょう。
被害者やその家族の負担が軽減される
示談交渉や損害賠償請求を被害者自身やその家族が行うことは、手間や時間がかかります。
証拠集めや書類の作成などを行なう必要があり、知識が無ければ非常に大変な作業です。
介護事故によって精神的にも肉体的にも負担が大きくなっている中で示談交渉や損害賠償請求を行うことは、非常に負担が大きいといえます。
弁護士に依頼すれば、証拠集めや書類の作成、示談交渉、裁判手続きなど全てを任せることができ、手間や時間などの負担が大幅に軽減されます。
また、こうした手続きなどを任せられることや、介護事故への不安などが軽減されることで精神的な負担も軽くなるでしょう。
問題が大きくなることを防げる
介護事故が起こった場合、被害者やその家族だけで対応すれば問題が大きくなってしまう可能性があります。
被害者やその家族は感情的になってしまいやすく、不適切な対応や発言によって不利になってしまうことも珍しくありません。
弁護士という第三者が介入することで冷静になることができますし、対応は弁護士に任せることができます。
また、弁護士が早期に対応することで証拠の隠滅や改ざんを防ぎ、証拠を保全して被害者やその家族を守ることができます。
介護事故を弁護士に相談するデメリット
介護事故を弁護士に相談することは、メリットばかりがあるわけではありません。
デメリットもあるので、メリットとデメリットのどちらの面も理解した上で弁護士に相談しましょう。
弁護士に費用がかかる
弁護士に依頼すれば、費用が発生します。
示談交渉や裁判手続きを自力ですれば費用はかかりませんが、手間や時間がかかります。
費用面はデメリットになるものの、弁護士に依頼すれば費用はかかるものの、手間や時間を省くことができ、適切な損害賠償請求ができるでしょう。
弁護士に依頼する場合に発生する主な費用は、着手金と報酬金です。
依頼をした際に着手金を支払い、報酬金は問題解決後に得られた損害賠償金から引かれることになります。
タイムチャージや日当で報酬を計算する場合もあります。
相談は無料で行っている弁護士事務所も多いので、まずは無料相談を利用して相談を行い、相談時に見積もりをもらうようにしましょう。
心理的抵抗がある
弁護士に相談することは、ハードルが高いと考える方も多いのではないでしょうか。
日常生活の中で弁護士に携わることはなかなかないため、弁護士に相談するということに心的的抵抗は生まれやすいといえます。
弁護士に相談すれば「トラブルが深刻化するのではないか」「裁判しなければならない」と考える方もいるかもしれませんが、決してそうではありません。
弁護士は問題を円満に解決するために相手方と調整を行うものであり、問題への取り組み関してはあくまでも依頼主の意見を尊重します。
介護事故では介護施設や介護サービスが不誠実な対応をすることもありますが、弁護士が介入することで対応が変わるようなケースも多いです。
相談は無料で行える弁護士事務所もあるので、心理的抵抗を感じることなく相談することから始めてみてください。
介護事故を相談する弁護士の選び方
弁護士と一言でいっても全ての弁護士が同じような意見を持ち、同じように対応するわけではありません。
弁護士ごとに知識や経験、考え方は異なるため、相談する弁護士によってアドバイスや問題解決の結末が変わる可能性があります。
介護事故を相談する弁護士を選ぶ際には、以下の項目を確認しましょう。
介護事故に関する専門性
弁護士は国家資格を持つ法律の専門家ですが、弁護士ごとに得意とする分野や取り扱う分野が異なります。
離婚や遺産相続、交通事故、刑事事件などの分野に分けられており、介護事故の分野ももちろん存在します。
ただし、介護事故は弁護士が取り扱う分野の中でも件数が少なく、介護事件の担当経験の多い弁護士を見つけるのは簡単ではありません。
そこで、介護事故に限らず、交通事故や労災事故など人身事故の損害賠償に精通した弁護士を探す、という方法があります。そうすれば、比較的簡単に見つけることができるでしょう。
専門性の高い弁護士に相談すれば、法律や判例を熟知しているのでスムーズに的確な対応をすることができます。
介護事故の解決実績と経験の多さ
前項でも述べたように介護事故は件数が少ないため、経験している弁護士は多くないと想像します。そこで、相談する弁護士は介護事故の解決実績や経験がある程度ある弁護士に相談するのが望ましいでしょう。
介護現場の事情や実務を把握していれば、介護施設や介護サービス側への責任追及の可能がどうか適切に判断することができます。
また、実績の多い弁護士ほど過去の経験を基にさまざまな状況に柔軟に対処できるため、安心して問題解決まで任せることができるでしょう。
説明の分かりやすさ
日常生活では法律用語などを耳にすることが少なく、介護事故にあたって理解ができない専門用語が出てくるようなこともあるでしょう。
弁護士に相談した際に、どれだけ分かりやすく説明してもらえるかという点も弁護士選びでは重要なポイントになります。
難しい言葉を並べたり、一方的に話しをしたり、弁護士によっては説明が分かりにくいというようなケースもあるでしょう。
介護事故の解決に向けて弁護士とは多くの対話が必要です。
正しく話しを理解できないまま弁護士に任せてしまえば、自分達の希望とは異なる対処や解決法が選択されるリスクがあります。
弁護士相談では説明が分かりやすく、自分達の話に耳を傾けてくれるかどうかという点に着目すると良いでしょう。
料金設定の明確性
弁護士に依頼すれば料金がかかりますが、弁護士費用は一律ではありません。
弁護士事務所ごとに料金設定が異なります。
料金設定が明確な弁護士事務所を選びましょう。
着手金や報酬金が安く設定されている場合でも、最終的に追加料金が発生して高額になるようなケースもあります。
最初の相談の時点で見積もりを出してもらい、追加料金の発生の有無なども確認することが大切です。
弁護士の依頼は本人以外でも可能なのか?
介護事故の場合、被害者本人が認知症などで判断能力がなく、弁護士への依頼が難しいようなケースもあります。
弁護士に依頼して介護施設や介護サービスに損害賠償請求を行いたい場合、被害者が存命の場合は本人の意思が必要です。
ただし、被害者本人の判断能力がない場合には、家庭裁判所に成年後見人の申立てをすることで被害者家族が代わりに弁護士に依頼できるようになります。
成年後見人の申し立ては手続きが複雑なので、手続きについても弁護士に相談してみることを推奨します。
まとめ
介護事故は専門性の高くて複雑なので、知識や経験がなければ介護施設や介護サービスへ責任追及ができるのかどうか判断が難しいものです。
介護事故に精通した弁護士ならば適切に判断することができ、今後どのように対処すべきかアドバイスすることも可能です。
弁護士に相談することを負担に考えず、まずは相談することから始めてみてください。
損害賠償請求を行う場合には、弁護士に依頼することで示談交渉や訴訟を任せることができ、被害者やその家族の負担が軽減されるでしょう。
顧問弁護士についてのご相談も、いつでもお受けしていますので、まずは一度、気軽にご連絡いただければと思います。