懲戒処分では済まされない!職場での犯罪行為と7つの罪

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職場の犯罪

 

法律? 犯罪? 自分には関係ない…そんなふうに考えている人、いませんか?

 

じつは普段、職場で何気なくしていることが犯罪になることがあります。

 

「悪気はなかった」、「わざとではない」、「知らなかった」…そんな言い訳は法律には通用しません。
「バレなければOKだろう」、「少しくらいなら大丈夫」、そんな気のゆるみが命取りになる可能性があります。

 

では、職場で何をすると犯罪になるのでしょうか? 
法律上どんな罪になり、どんな刑罰を科される可能性があるのか、知らない人も多いのではないでしょうか。

 

そこで今回は、職場ですると犯罪になる行為について解説しますが、その前に、まずは会社から下される制裁罰である「懲戒処分」について見ていきましょう。

 

会社の懲戒処分にはどんな種類があるのか?

 

私たちビジネスパーソンは、かなりの時間を会社で過ごしています。

 

総務省発表の「労働力調査」によると、主な産業の正社員(男性)の平均就業時間は年間2300時間以上にもなるそうです。
実際には、もっと多くの時間働いている人もいると思いますが、いずれにせよ、人生の3割近くは会社や職場で過ごす人が多いということです。

 

であるならば、会社や職場での過ごし方が重要になってきます。
気持ちよく働き、キャリアアップして、プライベートも楽しむ。
そのために、まずは会社のルールも大切です。

 

悪気がなくてやった行為でも、故意であっても、会社に損害を与えれば懲戒処分の対象になるでしょう。

 

懲戒処分とは、使用者(会社)が労働者(従業員)に対して行う労働関係上の不利益措置のうち、企業秩序違反に対する制裁罰のことをいいます。

 

懲戒の種類には、軽いものから主に以下のものがあります。

 

①けん責・戒告
始末書を提出させて将来を戒めることを「けん責」といいます。
一方、始末書を提出しない場合は「戒告」といいます。

 

社員にとっては、けん責も戒告もそれ自体は実質的な不利益はありませんが、昇給・昇格などの考課査定上不利に考慮されることもあります。

 

②減給
本来ならば受けられるべき賃金の一部を差し引かれることを「減給」といいます。
ただし、「労働基準法」では減額の額についての規定があるので注意が必要です。

 

③降格
役職や職位の解任、引き下げ、職能資格・等級の引き下げ処分を「降格」といいます。

 

④出勤停止
従業員の就労を一定期間禁止することを「出勤停止」といいます。
「自宅謹慎」や「懲戒休職」という場合もあります。

 

会社によって異なりますが、実際の出勤停止期間は、1週間以内や10日~15日程度が多いでしょう。
なお、出勤停止中の賃金は通常支給されませんし、通常は勤続年数にも参入されません。

 

⑤諭旨解雇
懲戒解雇を若干軽減した懲戒処分が「諭旨解雇」とされます。
自主的に退職するよう勧告し、これに応じない場合に懲戒解雇する、という処分です。

 

⑥懲戒解雇
懲戒処分の中ではもっとも重く、懲戒として使用者が労働契約を一方的に解消するのが「懲戒解雇」です。

 

通常は、解雇予告も予告手当もなしに即時になされ、退職金の全部または一部が支給されない場合もあります。

 

なお、会社側が懲戒処分を下すには、どのような場合に懲戒となるのかについて、就業規則にしっかりと規定しておくことが大切です。
ただし、そのためには過去の判例からも一定のルールやポイントがあります。

 

〇就業規則で懲戒の規定をしている
〇就業規則を従業員にきちんと周知している
〇従業員の勤務態度や会社に対する貢献度合い
〇過去の処分歴
〇動機や計画性、常習性(出来心なのか、計画的だったのか)
〇社内体制(周囲でも不正を行っている従業員がいるのか)
〇お金の不正については金額の大小
〇過去の同種事案に関して下した懲戒処分

 

これらを検討しながら懲戒処分を下すことになります。

 

会社員にとって、会社から懲戒処分を下されるのは大変な事態です。

 

しかし、さらに大変なことがあります。
それは、会社での行為が法律上の犯罪となってしまうことです。

 

身近に犯罪の危険性が潜んでいることがあります。
知らなかったばかりに逮捕され、会社からは懲戒解雇、収入も絶たれ、再就職も決まらない…そうならないためには正しい法律知識を知る必要があります。

 

そこで次に、会社で行うと犯罪になる行為を解説していきます。
「まさか、そんなことが犯罪に!?」ということもあるかもしれません。
要注意です!

 

会社の経費で飲みに行ったり備品をもちかえると

 

会社のプロジェクトで経費が余ったから、仕事と関係なく、みんなでお酒を飲みに行き、後日、領収書を「接待」と称して会社に提出して会社から受け取った飲食代金を、ちゃっかり自分の財布にしまった…そんな経験ありませんか?

 

その行為、犯罪になります!

 

「刑法」
第246条(詐欺)
1.人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2.前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

 

会社の経費ではないものを、あたかも経費であるように偽って会社からお金を取ったので、「お金をだまし取った」ということになるわけですね。

 

お金だけでなく会社の備品、たとえばボールペンやハサミ、ホチキスなどを家に持って帰るとどうなるでしょうか?

 

これは、会社に所有権のある動産を盗ってしまった、ということになるので、窃盗罪ですね。

 

第235条(窃盗)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

 

 

また、刑法だけでなく民法でも問題になってくる可能性があります。
民法上、会社は騙されたお金を従業員に対して損害賠償や返還請求の訴訟を起こすことができます。

 

「民法」
第709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

第703条(不当利得の返還義務)
法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

 

 

会社の領収証を改ざんすると

 

会社に提出する領収書を勝手に改ざんして、使った分以上のお金を手に入れる…そんなことをした経験ありませんか?

 

もちろん、その行為も犯罪です!

 

「刑法」
第246条(詐欺)
1.人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2.前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

 

また、架空の領収書を自分で作った場合は「私文書偽造罪」(刑法第159条)が適用されるかもしれません。

 

 

メールを自分に転送させると

 

勤務先の会社の役員などに送られたメールを自分宛に転送したとして、社員が逮捕された事件が2015年1月にありました。

 

「他人のメールを自分宛に転送させると犯罪!? ▼詳しい解説はこちら▼

 

システム管理者だったこの社員が問われたのは、「私電磁的記録不正作出・同供用罪」でした。

 

「刑法」
第161条の2(電磁的記録不正作出及び供用)
1.人の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を不正に作った者は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
3.不正に作られた権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を、第1項の目的で、人の事務処理の用に供した者は、その電磁的記録を不正に作った者と同一の刑に処する。

 

電子メールやUSBメモリに取り込んだデータなどを、新たなデータとして作り出して(作出)、他の人が使えるようにする(供用)と、犯罪になります。

 

ちなみに、「電磁的記録」とは法律用語で、過去の判例ではさまざまなものが認められています。
たとえば次のようなものがあります。

 

・フロッピーディスク(磁気ディスク)
・CD-ROM(光ディスク)
・USBメモリ
・電車などの定期券等の磁気部分
・キャッシュカードやクレジットカード、プリペイカードなどの磁気部分
・デジタル放送を観る際に使うB-CASカード
・オンラインゲーム内のアイテム
・電子メール
・電子計算機(コンピュータやパソコンを含む)による情報処理の用に供されるもの(「刑法」第7条の2) など。

 

 

メールの不正転送などは、じつは案外あなたの会社でも行われているかも…と考えると怖ろしいことです。

 

同時に、会社側も情報管理や危機管理への意識、体制が問われますので、経営者の方は管理を徹底して防衛していく必要があります。

 

 

他人のメールの盗み見行為

 

禁じられると、やりたくなる…これは人間の性かもしれません。

 

そして、他人のメール内容を「盗み見る」という行為も、やってはいけないとわかっていても、ついついやりたくなってしまう人間の性かもしれません。
しかし、場合によっては犯罪となることがあります。

 

 

「不正アクセス禁止法」
第3条(不正アクセス行為の禁止)
何人も、不正アクセス行為をしてはならない。

 

これに違反すると、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます。

 

許可なく他人のIDとパスワードを使って、インターネットからフェイスブックやメールシステムなどにアクセスすることは犯罪です。

 

これは、職場の人間関係だけでなく、夫婦でも、恋人同士でも罪になりますから、「浮気をしてるかどうかのチェック」という言い訳は通用しませんよ。
十分、注意してください。

 

 

では、会社や上司が社員のメールをチェックしているという話を聞くことがありますが、それは法律上の問題はないのでしょうか?

 

職場での電子メールを含めたインターネットの私的利用は、勤務時間内であれば社員の職務専念義務違反になりますし、勤務時間外でも使用を禁じるよう就業規則に規定している会社は多いと思います。

 

また、会社のパソコンやインターネットには、会社の施設管理権がおよんでいるため、社員が会社のパソコンを私用で使っていれば、施設管理権の侵害ということになってしまいます。

 

しかし、実際には簡単なプライベートメールのやり取りをしたことのある社員は多いでしょうし、それを職務専念義務違反や施設管理権の侵害とはせずに黙認している会社も多いでしょうから、一定の範囲内であれば問題となることは少ないでしょう。

 

それに、いくら会社には社員を管理する権利があるからといって、社員のプライバシーを無視してもいいわけではないでしょう。

 

しかし、じつはこの問題については過去の判例があります。
会社が社員の同意なしにメールをチェックしたことは、プライバシーの侵害にあたるかどうかが争われたものです。

 

裁判所は、「監視の目的、手段、態様など総合的に考慮して、社会通念上相当な範囲を逸脱した管理がなされた場合に限り、プライバシーの侵害となる」として、会社が社員の同意なしにメールを監視することを認めています。

 

つまり、会社でのメールは原則として「私的なものではない」という判断ということです。

 

意外な判断でしょうか? 納得いかないでしょうか? 

 

しかし、会社としては個人情報や企業秘密の漏洩、ウイルス感染などについても管理を徹底する必要があることを考えれば、社員は職場での私用メールについて十分注意する必要があるといえます。

 

なお、会社としては、メールの監視の必要性、必然性について就業規則などに規定しておく必要があります。

 

・メールについての禁止事項の明確化
・メールを監視する場合があること
・どのような目的で監視するのか
・どのような立場の人に監視の権限があるか

 

会社は、これらについてしっかり規定し、社員に周知させる必要があります。

 

無断充電は許される?

 

会社のオフィスで、個人で利用している携帯電話やノートパソコンを無断で充電している人はいませんか?

 

じつは、電気の「窃盗」については刑法で規定されているのです。

 

「刑法」
第235条(窃盗)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

 

第245条(電気)
この章の罪(注:窃盗及び強盗の罪)については、電気は、財物とみなす。

 

法律上、「財物」とは以下のようなものをいいます。
①有体物で形のあるもの
個体・液体・気体に加え、電気や水力、火力、空気の圧力、人工冷熱気の冷熱等の自然力利用によるエネルギーなどの無体物も含まれるとされます。
②管理ができるもの
③持ち運ぶことができるもの

 

電気や水、ガス、蒸気なども無断で使用したら窃盗になりますが、たとえば目に見えないけれど飛び交っているテレビやラジオ、無線LANなどの電波や、電磁波、情報等は「管理できないもの」として窃盗の対象にはならないとされています。

 

実際、過去の判例では、電気の窃盗が犯罪と認められたものがあります。

 

・出張中の会社員が、会社にメールを送るために名古屋駅にあった公衆電話の足元にあった清掃用のコンセントにパソコンをつないで5分間無断使用していたところ、鉄道警察隊に発見され窃盗容疑で書類送検。被害額約1円。(2004年)

 

・大阪で中学生が、コンビニの外壁の看板用コンセントから携帯電話に15分間充電していたとして、窃盗容疑で書類送検。被害額約1円。(2007年)

 

「被害額約1円」でも犯罪になる可能性があることは覚えておきましょう。

 

 

ネットへの書き込みは名誉棄損

 

ブログやツイッター、フェイスブックなどに会社の上司や同僚などの悪口や誹謗中傷を書き込むと、どうなるでしょうか?

 

「名誉棄損罪」に問われる可能性があります。

 

「刑法」
第230条(名誉棄損)
1.公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

 

条文にある「公然」とは、不特定または多数の人が認識し得る状態をいいます。
「毀損」とは、法律上では人の社会的評価が害される危険を生じさせることとされ、実際に社会的評価が害されることは要しないとされています。

 

また、条文にあるように名誉棄損罪は、事実の有無、真偽を問いません。

 

ちなみに、名誉棄損罪は「親告罪」なので、相手(被害者)からの告訴があって初めて成立します。

 

 

では、事実を摘示せずに、他人の人格を蔑視するような書き込みをすると、どうなるでしょうか?
「侮辱罪」に問われる可能性があります。

 

第231条(侮辱)
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。

 

いずれにせよ、相手を傷つける書き込みをすると刑事では犯罪に、民事では損害賠償請求される可能性がありますので気をつけてほしいと思います。

 

秘密情報を盗んで開示すると罰金

 

お酒の席でのジョークのように使われたりする「それは企業秘密だから!」というフレーズですが、実際、従業員が企業の秘密を漏らしてしまうと、どうなってしまうでしょうか?

 

もちろん、冗談では済まされません。
「不正競争防止法」という法律に問われ、かなり重い刑罰を科される可能性があります。

 

不正競争防止法は、事業者間の公正な競争と国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争を防止する目的で設けられた法律で、損害賠償に関する措置まで規定されています。

 

不正競争防止法が禁じる行為にはさまざまありますが、会社の営業秘密に関する不正行為には、以下のようなものがあります。

 

・企業が秘密として管理している製造技術上のノウハウ、顧客リスト、販売マニュアル等を窃取、詐欺、強迫、その他の不正の手段により取得する行為(第2条4号)
・または、不正取得行為により取得した営業秘密を使用したり、開示する行為(第2条4号)
・不正に取得された情報だということを知っている、もしくはあとから知って、これを第三者が取得、使用、開示する行為(第2条5号、6号)
・保有者から正当に取得した情報でも、それを不正の利益を得る目的や、損害を与える目的で自ら使用または開示する行為(第2条7号)

 

これらに違反した場合、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはこれを併科となります。

 

「会社の秘密情報を盗むと犯罪になる!?」▼詳しい解説はこちら▼

 

じつは近年、会社の秘密情報に関する不正が相次いでいます。

 

・東芝の研究データが流出
2014年3月、東芝の半導体の研究データが韓国のライバル企業に不正流出したことが発覚。業務提携先メーカーの元技術者の男が逮捕される。

 

・日産の企画情報が流出
2014年5月に発覚。元社員が新型車の企画情報などを不正に取得。

 

・ベネッセで個人情報流出
2014年7月に発覚。外部業者のSEが関与して、2070万件もの個人情報が流出。

 

・エディオンの営業秘密資料が流出

 

・2015年1月に元課長が逮捕。退職時などに不正に取得した営業秘密情報を転職先の企業に漏洩。

 

こうした事態を踏まえ、企業の秘密情報漏洩危機に対応するために、政府は不正競争防止法の改正法案を2015年の通常国会で提出するとしています。

 

法人に対して、国内企業同士の秘密漏洩には罰金を最大5億円に引き上げるなど罰則を強化するほか、企業秘密を海外の企業が不正利用した場合は最大で10億円の罰金を科すなどとなっています。

 

さらに、企業秘密を不正に入手、流出させた個人には、懲役は現在の10年以下のままにするものの、国内の事件なら最大1000万円だった罰金を2000万円に、海外に漏らした場合には3000万円へ引き上げるとしています。

 

 

最高で10年の懲役+3000万円の罰金です!
企業秘密の漏洩が重大な犯罪行為であることを、この機会にしっかり認識してほしいと思います。

 

さて、ここまで会社員が職場でやると犯罪になる行為について解説してきました。

 

犯罪になることを知っていたならもちろんですが、知らずにやってしまっても逮捕される可能性があります。
それは、あなたの人生にとって大きなマイナスとなってしまうでしょう。

 

後悔先に立たず──くれぐれも過ちを犯さないよう、正しい法律知識を身につけて、会社での実りあるビジネスライフを過ごしていただきたいと思います。

 

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