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労働災害(労災)を弁護士に相談依頼するメリット・デメリット

最終更新日 2019年 02月04日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

労働災害(業務災害)とは

労働者は、自己の労働力を提供し、その対価として給与を得ています。

労働力が生活のための給与を得るための源泉となりますので、怪我や病気は避けなければなりません。

しかし、高所作業や重量物を扱う作業等、作業自体が怪我の危険を伴う労働に従事しなければならないことがありますし、業務過多により、過労状態になってしまうこともあります。

また、過度のパワハラ等で自殺に至ってしまうこともあるでしょう。

そのような、労働者が業務に基因して負傷(怪我)、疾病(病気)、障害(後遺症)、死亡に至った場合を「労働災害(労災)」といいます。

労災には大きく2つの種類があります。

業務中に怪我などをする場合を「業務災害」といい、通勤中の交通事故などによる怪我や死亡などを「通勤災害」といいます。

ここでは、業務災害の労災や会社に対する損害賠償請求について説明をしていきます。

通勤災害での「通勤」とは次のような移動を、合理的な経路と方法で行うことをいいます。

①住居と就業場所との往復

②就業場所から他の就業場所への移動

③単身赴任先住居と帰省先住居との移動

つまり、通勤途中で、関係のない場所に行ったりすると、「通勤」ではないとみなされ、通勤労災は認定されないことになります。

ただし、日常生活上、必要な行為として、食品や日用品を買うためにスーパーに立ち寄り、短時間で買い物を終えて合理的な通勤経路に戻れば通勤途上となります。

しかし、買った物が日常生活に必要のない商品であったり、映画を観たり、飲みに行ったり、ということになると、逸脱中ということになり、通勤災害とは認められません。

通勤災害も労災ではありますが、交通事故ですので、加害者に対する損害賠償請求が重要となってきます。

通勤災害における加害者に対する損害賠償請求に関しての知識は、以下をご参照ください。

業務災害については、業務と労働者の負傷、疾病、障害、死亡との間に因果関係がある場合に労災と認定されます。

その際には、

(1)業務遂行性=労働者が使用者(会社)の支配下にある状態

(2)業務起因性=業務に内在する危険性が現実化し、業務と死傷病の間に一定の因果関係があること。

という2つの基準で判断することになります。

そこで、業務中に怪我をした場合には、その怪我が会社の支配下にある状態、つまり、指揮命令下の状態であったかどうか、また、業務との間に因果関係があるかどうか、を検討することになります。

そのため、事故なら何でも認められるわけではなく、業務とは関係なく怪我や病気をした場合は労災とは認められません。

この記事を読む前に、労災手続全般について知りたい方は、以下の小冊子をダウンロードしてください



労災保険とは?

労災には災害補償制度があります。

法律でいうと、「労働基準法」と「労働者災害補償保険法(労災保険法)」です。

労働者災害補償保険法第2条は、「労働者災害補償保険は、政府が、これを管掌する。」と規定し、国が労災保険を管掌している旨規定しています。

したがって、労災認定を受けた場合には、国から償を受けることができることになります。

労災のメリットとしては、健康保険とは違い、労働者に自己負担額がないことです。

  • ・療養補償給付は、怪我の診察、治療等に対する補償です。
  • ・休業補償給付は、怪我の治療ために労働できない場合、休業の4日目から休業が続く間の補償が支給されるものです。
  • ・傷病補償年金は、治療開始後1年6ヵ月を経過しても治らない場合、傷病等級に応じて支給されるものです。
  • ・障害補償給付は、怪我が治った、もしくは症状固定後に後遺障害等級(1~14級)に基づいて支給されるものです。
  • ・遺族補償年金は、労働者が死亡した場合、遺族に支給されるものです。
  • ・葬祭料は、労働者が死亡した場合に支給される葬祭費です。
  • ・介護補償給付は、後遺障害等級が1級と2級で常時、あるいは随時、介護が必要になった場合の補償 です。

労災における後遺障害等級認定

労災事故により怪我をした場合には、治療をすることになります。

しかし、「これ以上、治療を続けても改善しない」という状態になることがあります。

この状態を「症状固定」といいます。

症状固定になって、後遺症が残っている場合、その障害は治らないわけですから、その障害の重さに応じた労災保険の支給を受けることになります。

そこで、どの程度重い障害なのかを判定する手続が必要となり、それが、「後遺障害等級認定」です。

そして、後遺障害等級認定を受けることにより、その等級に応じた障害補償給付を受けることになり、介護が必要な場合には介護補償給付が受けられるようになります。

したがって、この後遺障害等級認定は、とても大切な手続ということになります。

さらに、認定された後遺障害等級は、労災保険だけにとどまりません。

労災補償給付だけでは、被災労働者が被った損害をまかなうことはできず、後に会社に対して損害賠償請求をする場合には、後遺障害等級によって、賠償額にかなりの差が出てきます。

後遺障害等級認定の手続では、怪我の状況、後遺症の内容などが調査され、1級~14級までに区分された後遺障害等級認定がなされるのですが、後遺障害等級認定は、必ず正しい認定がされるわけではありません。

間違った認定がされたときは、労災保険給付の金額も違ってきますし、慰謝料なども違ってきますので、正しい後遺障害等級にただしてもらわなければなりません。

具体的には、審査請求や裁判を行うことによって、正しい等級認定にしてもらうことになります。

そうは言っても、労災事故に遭うのは、一生に一度あるかどうか。

被災労働者は、その後遺障害等級が正しいかどうか判断するのは難しいでしょう。

後遺障害等級認定の判定には、医学的知識や後遺障害等級認定の判定基準の知識なども必要となってきますので、専門知識がないと難しいのです。

後遺障害について、詳しく知りたい方は、下の記事をご一読ください。

労災を解決するのが難しいことがご理解いただけたと思います。一度弁護士に相談してみましょう。




過労死・過労自殺について

労災認定について、近年、過労死と過労自殺の労災認定がニュースを賑わせています。

「平成26年度 過労死等の労災補償状況」(厚生労働省)では、統計を発表しており、「脳・心臓疾患」に関する労災補償の請求件数は763件、支給決定件数は277件(そのうち死亡については121件)となっています。

さらに、過労自殺に関しては請求件数が213件、支給決定件数は99件で、ともに過去最多となっています。

過労死の場合には、使用者に対して、慰謝料請求ができる場合があり、金額も高額になります。

関西医科大学事件(大阪高裁 平成16年7月15日判決)は、病院で勤務していた研修生が自宅で急性心筋梗塞により死亡した事案について、使用者の責任を認め、使用者に対し1億3500万円の損害賠償を認めました。

また、システムコンサルタント事件(東京高裁 平成11年7月28日判決)では、年間3000時間もの長時間労働をしていたコンピューターのソフトウェア開発者が脳出血を起こして死亡した事件について、使用者に対し約3200万円の損害賠償を命じました。

労災の過労死について、詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

過労自殺について、詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

 

会社に対して慰謝料請求できる場合がある

すでに説明したように、被災労働者に後遺症が残った場合や死亡した場合など、損害が大きい場合には、労災保険給付だけでは労働者が被った損害の全てを填補することができないことが多いでしょう。

その場合には、会社に対して損害賠償請求ができる場合があります。

そこで、その理論的根拠について説明しておきます。

労働者が会社で働く、というのは、「労働契約」「雇用契約」という契約があるからです。

会社は、労働者を働かせることによって設けています。

そうである以上、労働者が安全に、事故などに巻き込まれないようにしなければなりません。

このような、義務を「安全配慮義務」といいます。

会社が安全配慮義務を負うのは、

・労働者は、使用者の指定した場所に配置されること。

・労働者は、使用者の供給する設備、器具等を用いて労務の提供を行うこと。

という場合です。

会社は、労働者を指揮命令下におき、労働を行わせるので、使用者は、労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき「安全配慮義務」を負うことになります。

この結果、たとえば、工場で労働者を労働させる場合、手指や腕を巻き込む危険のあるプレス機などの機械で作業させる際には、指や腕、足(脚)などを切断したりしないような防止装置を設置し、労働者に安全教育を徹底するなど、労災事故を防止すべき安全配慮義務があります。

会社が、そのような安全配慮義務に違反したことにより、労働者が手足切断などの労災事故に遭った時は、労働者は会社に対し、損害賠償請求をすることができます。

労災で指、腕、足(脚)などを切断した場合の知識を得たい方は、以下を参照してください。

 

労災事故で請求できる慰謝料

では、被災労働者が会社に対して慰謝料請求をする場合、労働者は会社に対し、どのような請求ができるでしょうか。

実は、法律的に「慰謝料」というのは、損害賠償金の一部です。

ですから、法的には慰謝料請求ではなく、「損害賠償請求」といいます。

労災事故の損害賠償金は、

  • ・治療費
  • ・通院交通費
  • ・休業損害
  • ・慰謝料
  • ・逸失利益
  • ・葬儀費用
  • ・装具・器具購入費
  • ・自宅・自動車改造費

などさまざまな項目があります。

ここでは、このうちの「慰謝料」に重点を絞って説明します。

慰謝料とは、精神的な苦痛を被ったことに対する損害賠償金のことです。

労災事故に関する慰謝料には、死亡慰謝料、後遺症慰謝料、傷害慰謝料の3種類があります。

慰謝料の額については、過去の膨大な裁判例の集積により、一定の相場が形成されています。

もちろん、最終的には、具体的な事故の事情によって認定されることになりますので、一応の相場ということになります。

まず、労災での死亡事故の場合には、以下の損害を請求できます。

  • ・葬儀費用
  • ・死亡慰謝料
  • ・死亡逸失利益

そして、死亡事故の場合、被災者は死亡しているので、被災者の相続人が死亡慰謝料などを受け取ることになります。

死亡事故の慰謝料の相場は、以下のように家庭内の地位によって違ってきます。

被災者が一家の支柱の場合    2800万円
被災者が母親、配偶者の場合   2500万円
被災者がその他の場合      2000万~ 2500万円

被災者が「一家の支柱」の場合とは、その被災者の家庭が、主に被災者の収入によって生活している場合であり、被災者が母親、配偶者の場合とは、その被災者が子育てを行っていたり、家族のためにその家庭の家事全般を行っていたりする場合です。

「その他」の場合とは、被災者が独身の男女、子供、幼児等である場合をいいます。

また、労災死亡事故の場合は、被災者の近親者にも固有の慰謝料が認められる場合があります。

次に後遺症慰謝料です。

後遺症が残った場合には、一生その後遺症と付き合っていかなければなりません。

その精神的苦痛は大変大きいものがあります。

そこで、後遺症が残った場合には、その後遺障害等級に応じた慰謝料を請求することができます。

後遺障害等級について詳しく知りたい方は、下の記事を参考にしてください。

後遺症慰謝料の計算は、後遺障害等級に応じて、以下のような相場が形成されています。

後遺障害等級1級  2800万円
後遺障害等級2級  2370万円
後遺障害等級3級  1990万円
後遺障害等級4級  1670万円
後遺障害等級5級  1400万円
後遺障害等級6級  1180万円
後遺障害等級7級  1000万円
後遺障害等級8級  830万円
後遺障害等級9級  690万円
後遺障害等級10級  550万円
後遺障害等級11級  420万円
後遺障害等級12級  290万円
後遺障害等級13級  180万円
後遺障害等級14級  110万円

最後に傷害慰謝料です。

傷害慰謝料は、入通院慰謝料ともいい、入院や通院を余儀なくされたことで被った精神的、肉体的苦痛に対して支払われる慰謝料です。

入院期間と通院期間を目安にして計算され、次の表を参考にして計算します。
表はこちら

労災の慰謝料請求をさらに知りたい方は、こちら。

 

労働災害(労災)事故を弁護士に相談するメリット

労災手続や労災の慰謝料などについて説明してきましたが、被災労働者が自分で手続をするのは大変です。

労災の後遺障害等級認定では、医学的知識や後遺障害等級認定の判断基準を熟知していないと、正しい後遺障害等級認定を受けることができないためです。

また、怪我や病気で体調が悪いのに、そのような知識を必要とする労災手続きを正確に行っていくことは、肉体的にも精神的にもかなりの負担になってしまいます。

そこで、労災問題の専門家の力を借りて手続を乗り切っていくことをおすすめします。

労災問題の専門家というのは、弁護士です。

弁護士に労災問題を相談・依頼した場合のメリットには次のことなどがあげられます。

労災で怪我をして、後遺症が残ってしまったような場合、まず重要なことは、正しい後遺障害等級認定を受けることです。

正しい後遺障害等級認定を受けるためには、医学的知識や後遺障害等級認定の判断基準の知識が必要なのですが、労災問題に詳しい弁護士であれば、深い知識を持っているので、後遺障害等級が正しいかどうか、判断してくれます。

そして、後遺障害等級に誤りがあるような場合には、障害補償給付の金額が異なってきますし、後の損害賠償の金額も大きく違ってきてしまいます。

そこで、そのような時に、労災問題に詳しい弁護士であれば、審査請求や裁判により、正しい後遺障害等級が認定されるための手助けをしてくれることでしょう。

これが、労災問題を弁護士に相談依頼するメリットの1つとなります。

会社が安全配慮義務に違反して労災が発生した場合には、会社に対して損害賠償請求をすることができるということは、すでに説明しました。

では、会社に対して損害賠償を請求する場合には、どれほどの損害を請求できるでしょうか?

労働者の側で、自分の損害額を計算して会社に損害賠償請求しても、会社が適正額をすんなり払ってくれることは稀でしょう。

実際、私たちの経験上もそうです。

なぜかというと、労働者と会社との利害は反しているからです。

会社は、営利を目的とするものですので、できる限り多くの売上を上げ、支出を削減しようとする組織です。

労働災害が起きて、労働者に対して請求されるままに慰謝料を払っていたら、利益が少なくなってしまうからです。

したがって、会社に対して慰謝料を請求する場合には、労働者の側で、正確に損害を計算して請求していくことが必要となってきます。

しかし、その計算が難しいことは考えるまでもありません。

そこで、法律の専門家である弁護士が、法律や過去の裁判例に基づき、適切な賠償額を計算してくれます

そして、会社と示談交渉をしてくれるのです

示談交渉が決裂した場合には、裁判によって、適切な慰謝料を獲得してくれるでしょう。

この点が、弁護士に相談依頼することで大きなメリットといえるでしょう。

さらに、労災に被災した労働者は、怪我の治療に専念したり、後遺症を残したまま業務復帰の努力をしたりします。

また、死亡事故の場合、遺族は深い悲しみに包まれます。

そのような中で、後遺障害等級認定の手続、審査請求、会社との示談交渉、裁判などを自分で行うのは相当に大変です。

また、医学や法律、裁判例の専門的な知識も必要ですが、これを労働者本人が身につけるには、何年かかるかわかりません。

そこで、それらの手続を弁護士に代行してもらえば、被災者は、煩わしい手続から解放され、かつ、弁護士の専門的な知識を借りることができます

この点も労災に被災した労働者が弁護士に相談依頼する大きなメリットといえるでしょう。

労災を弁護士に相談するメリットを詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

 

労働災害(労災)を弁護士に相談依頼するデメリット

労災に被災した場合に、弁護士に相談依頼するのは、メリットばかりではありません。

やはり、デメリットも検討しておいた方がよいでしょう。

まずは、弁護士費用です

弁護士は無料では動いてはくれませんので、弁護士費用は依頼する前に必ず確認し、損をしないよう気をつけたいところです。

相談料については、今では無料対応している事務所もありますので、インターネットで検索してみるとよいでしょう。

また、労災を弁護士に相談依頼する場合に気をつけなければならないことは、できる限り労災に精通した弁護士に相談依頼することです。

というのも、弁護士にも得意不得意や知識の偏りがあるためです。

労災を解決するためには、後遺障害等級認定の知識、医学的知識、労災保険の知識、法律の知識、判例の知識などが必要です。

しかし、特に後遺障害等級認定の知識や医学的知識、労災保険の知識は、労災事件や人身損害賠償事件をやっていないとなかなか身につきません。

インターネットなどで検索し、労災に関する専門ホームページを開設している事務所を探しましょう。

そして、その中で、ある程度詳しく労災について解説をしている事務所を選ぶというのが一つの選択方法といえるでしょう。

みらい総合法律事務所では、ご相談・ご依頼を受ける事案を、後遺症と死亡事故に絞って、専門性を高めています。

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該当する方は、ぜひご相談ください。

労災で、特に後遺障害や死亡事故の場合の会社に対する損害賠償請求は弁護士相談必須です。一度ご相談ください。