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懲戒処分としての始末書を不提出の場合、不提出を懲戒処分できるか?

最終更新日 2014年 09月30日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

懲戒処分の中で、始末書を提出させて将来を戒めることを「けん責」といいます。

 

通常、けん責処分となった場合には、原因となった事実の発生経緯、理由、反省と謝罪、再発防止策などの内容の始末書を提出する必要があります。

 

なお、記載事項が、原因となった事実の発生経緯、理由等の事実関係のみで、反省や謝罪等の記載がないものを顛末書と呼び、始末書と区別することもあります。

 

それでは、労働者がけん責処分に不服であり、始末書の提出を拒むような場合に、その始末書の不提出を理由として懲戒処分できるのでしょうか?

 

この点について、始末書を提出しないことが就業規則で定めた懲戒事由である職務上の指示命令に従わないことにあたるとして、懲戒処分の対象となるという考えもあります(東京地判昭和42年11月15日)。

 

しかし、顛末書とは異なり、謝罪や反省の意を期待した始末書の提出を求めることは、憲法が保障する内心の自由を侵害することにもなり得ます。

 

また、労働契約の本質を考えた場合、それは労務の提供と賃金の支払いの対価関係にあり、始末書提出の拒否を企業秩序を乱す行為とみることは相当ではなく、そこに反省・謝罪といった精神的な服従は必要ないとして、始末書提出は労働者の任意に委ねられ、懲戒処分を通じてその提出を共生することはできないという考えや(大阪高判昭和53年10月27日)、始末書提出拒否による懲戒処分が一事不再理の原則に抵触するおそれもあります。

 

したがって、始末書の不提出を理由とする懲戒処分を課すことは適当ではないといえるでしょう。

 

上記のとおり裁判例でも判断がわかれており、学説上も否定説をとる傾向にありますので、慎重な判断が必要となります。

 

なお、懲戒処分はできないとしても、考課査定上、始末書の不提出を不利に考慮することは許されるでしょう。

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