労働審判とあっせん

労働審判とは、企業と個々の労働者との間の労働紛争を、裁判所において、裁判官1名、労働問題について専門的知識を有する労働審判員2名が間に入り、当事者双方の言い分を聴き、証拠を調べ、紛争の実情に即した審判を出す手続きです。

 

労働審判を求める当事者が、裁判所に、労働審判手続を求める申立書を提出することで手続きが始まり、もう一方の当事者には、期日、申立の主張、証拠の申出、証拠調べに必要な準備をすべき旨などが記載された呼出状が裁判所から送付されます。裁判所から期日の呼び出しがあった場合、相手方は、定められた期限までに答弁書を提出しなければなりません。

 

一方であっせんとは、紛争当事者間の話合いによって、紛争の自主的な解決の促進を図るための制度です。

あっせんも労働審判と同様、紛争当事者の間に公平な第三者であるあっせん委員が入り、双方の言い分を聞き、主張の要点を確かめます。その上で説得を試みたり、妥協案をもとに歩み寄りを打診し、紛争解決を試みます。

 

あっせんを求める当事者が、各都道府県の労働局や労働委員会に申請書を提出することで手続きが始まり、労働局や労働委員会の事務員が相手方当事者に対して、あっせんを受けるかどうかや争点についての調査を行います。

 

以上のように、相手方と話合う機会を設けて紛争の早期解決を図るための手続きであるという点、公平な専門家である第三者が当事者間に入るという点、非公開の手続きであるという点などで両者は共通しており、類似した手続きであるとも言えます。

 

しかしながら、労働審判とあっせんは、相手方に手続きを起こされた際の、対応の必要性が大きく異なります。  あっせんへの参加を求められた場合に、あっせんへ参加することを拒んでも、法律上の不利益はありません。しかし相手側が労働審判を起こした場合には、参加を拒むことはできません。

 

そして代理人を立てるか、自ら裁判所へ出頭し、相手方の主張に対して適切に反論、主張を戦わせなければ、相手方の主張を前提とする裁判所の判断がなされてしまう可能性が高いのです。

 

そしてあっせんの場合、こちら側が同意しない限りあっせん案が法的な効力を持つことはありませんが、労働審判においては、相手方が労働審判を始めてしまえば、話合いで解決しない限り、こちら側が求めると求めないにかかわらずに裁判所の判断が下されます。

 

そして裁判所に言い分が認められた側の当事者は、この裁判所の判断をもとに、相手方に強制執行をすることができるのです。

また、労働審判において出された裁判所の判断を争うには、異議申立という手続きをおこなう必要があり、これを行うと、労働審判は自動的に通常訴訟の場に移行し、裁判となります。そして裁判では、また一から主張を戦わせなければなりません。

 

このように、労働審判では、あっせんと異なり、何らかの対応をとらなければ、相手方の言い分を認める裁判所の判断が下され、その判断に基づき強制執行までされてしまう可能性があります。

 

また、労働審判の先に待つ通常訴訟は原則として公開の手続きとして行われるため、労働審判を起こされ、その紛争を労働審判において解決できなければ、結局、非公開のうちに紛争を解決することができなくなってしまいます。