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労働審判の第1回期日におけるポイント

最終更新日 2015年 03月06日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

労働審判は、裁判と異なり、原則3回で手続を終了します。そして、1回の期日だけで調停が成立することも多くあります。

ということは、労働審判においては、1回目の審判期日が最も重要である、ということです。

 

労働審判官(裁判官)及び2名の労働審判員は第1回までに提出される申立書、答弁書、その他関係証拠及び第1回期日における当事者からの聴き取りによって心証をほぼ固め、第1回期日以降調停案(和解案)が提示され、調停が成立しなければ審判が下されます。したがって、答弁書の作成と共に、第1回期日における会社の対応は非常に重要となります。

 

それでは、第1回期日で具体的にどのようなことが行われるか見ていきましょう。

第1回期日では、労働審判委員会が、両当事者同席のもとで争点及び証拠の整理を行い、書証の取調べと審尋による証拠調べが行われます。

 

証拠調べについては、一般の民事訴訟と同じように行われるというのが法律上の建前なのですが、迅速な判断が求められる労働審判においては、実際は証人尋問や鑑定が行われることはあまりありません。

期日に出頭できない社員がいる場合には、陳述書を作成して提出することになります。もっとも、事件の判断にあたって最重要と考えられる関係者がいる場合に、その関係者から直接供述が聞けないような場合には、手続が不利に進む危険もありますので注意しましょう。

 

一般的には、まず、双方が在廷している中で、申立人、相手方が順に各々言い分を述べます。次に、労働審判委員会が、その言い分、申立書、答弁書その他書証等の内容を前提に、不明確な点や事案解明に必要な点について、口頭で質問し、代理人弁護士や当事者がこれに回答します。

 

双方質問し合うこともあります。労働審判員会は、争点の把握が終われば、その後予定している書証や人証などを確認し、場合によっては第1回期日で調停案が提示されます。

 

なお、これらは労働審判官の方針にもよるので、必ずしも全て行われるとは限りません。特に、迅速化の観点から、最初の双方の言い分を述べる機会が省略され労働審判員会の質問から入るケースもしばしばあります。

 

いずれにせよ重要なのは、事前に関係者及び代理人弁護士と十分に打合せを行うことです。

 

事前に提出する答弁書を充実させることも重要ですが、漏れてしまった点に関しては、手続の中で口頭で即時に回答していかざるをえません。準備が不十分だと代理人弁護士や会社側の出席者も質問にしっかりと回答できず立ち往生せざるをえなくなるのです。

 

労働審判の場合、第1回期日で少なくとも争点整理と証拠整理は完了するので、当日、応答がないものは原則としてないものとして扱われます。そのため審判前の打合せ、関係者からの聴き取りが十分でないと第1回期日で致命傷になる恐れがあります。

 

これまでの経験からは、第1回期日において争点の整理が終了し、労働審判委員会から調停案が示されることは少なくありません。

 

労働審判委員会によりますが、委員会としての見解(心証)が開示され、判断をしばしば求められるのです。

 

例えば、解雇の有効性が争われた事案において、「労働審判委員会としては、解雇は無効と考えている。しかしながら、今さら会社に戻るというのは双方仕事をしづらいだろうから○○万円支払って終わらせないか。」との調停を勧められるのです。

 

このとき、既に会社側の意見が固まっていれば、早期に調停を成立させ、手続を終了させることが可能です。したがって、最終的にどのような解決を求めるか、申立人の請求に対してどの程度までは譲歩できるかを弁護士と相談の上、会社内で十分に検討して、第1回期日に臨む必要があるのです。

 

なお、第1回期日に限られませんが、労働審判には代理人弁護士と共に、会社責任者、つまり、和解するか否か、和解するとしてその金額をいくらにするかなどの決定権限をもつ方が必ず出席するようにしてください。

 

一般的には取締役や人事部長などです。前述のように労働審判は原則3回以内に手続が終了します。手続の中で迅速に判断することが求められるので「会社に持ち帰って検討します」ということができないことがあります。

 

第1回期日での争点整理の結果、労働審判委員会が、とても3回の期日では解決できないと判断した場合、法律に従い審判手続を終了させ訴訟に移行します。

 

つまり、3回以内の期日で結論を出すことが困難な事件は、労働審判手続を行っていても無駄なので、早期に訴訟に移行したほうが全体としてみると時間や労力などが節約できるとの考えのもと訴訟に移行させてしまうのです。

 

訴訟に移行し、じっくり審理したほうが会社にとって良いケースも確かにありますし、事案の性質によってはそもそも労働審判に適さない場合もあるでしょう。

しかし、たった一人の従業員のために時間や労力をいつまでも費やさず、早期に解決して、会社本来の経済活動に注力したほうが結果としてプラスになることも多いでしょう。

 

そのため、可能な限り答弁書提出の段階で争点を絞り、第1回期日でも重要な争点に関する陳述に絞って行うことで労働審判の段階で終わらせることが大切になってきます。

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