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パワハラ・セクハラを防ぐ!事前対策と事後対応

最終更新日 2019年 11月27日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

パワハラを防ぐための事前対策

パワハラ・セクハラが起こらないように、会社は「事前対策」を万全にしておくことが重要です。

 

しかし、万が一起きてしまったら…「事後対応」が会社の命運を握っています。
損害をいかに最小限に抑えることができるかは、事後の適切な対応にかかっています 。

 

パワハラを防ぐために、会社としてはどのような措置をとればよいのでしょうか?

 

「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ」の報告では、聴き取りを行った会社の実例をもとに、以下の5つをポイントとして挙げています。

 

① トップのメッセージ
② ルールを決める
③ 実態を把握する
④ 教育する
⑤ 周知する

 

①の「トップのメッセージ」とは、会社組織のトップが、職場のパワーハラスメントは職場からなくすべきであるという姿勢を明確に示すということです。
これによって職場全体に、パワハラはなくすべきだという雰囲気がつくられるため、パワハラ被害者である従業員や、周囲の従業員が、パワハラに関する発言をしやすくなり、結果として、組織全体としての防止の効果が期待できるようになります。

 

②の「ルールを決める」とは、就業規則をはじめとする職場の服務規律において、パワハラを行った者に対して厳正に対処するという方針や、具体的な懲戒処分の内容を定めたり、予防、解決についての方針やガイドラインなどを作成することを指します。
従業員が守るべきルールを明文化することによって、各従業員にパワハラ行為を行ってはならないという意識を持たせることができ、結果としてパワハラの防止につながります。
また、「労使協定」を結んで労働者側と使用者側が共同してパワハラの発生防止に取り組むことを明確に示す例もあるようです。

 

③の「実態を把握する」とは、従業員を対象にアンケート等を行い、職場におけるパワハラの実態、現状を把握することを指します。
すでにご説明したように、会社には「職場環境配慮義務」がありますので、社内の職場環境が現在どのようなものなのか、できる限り正確に把握しておく必要があります。

 

これを怠った結果パワハラなどが発生し、被害が拡大したような場合は、職場環境配慮義務違反を問われることになるので注意が必要です。
また、アンケート等を行うことにより、職場においてパワハラ等について話し合うきっかけにもなり、結果として、従業員のパワハラに関する意識が向上するという効果も期待できます。

 

④の「教育する」とは、従業員を対象として研修などを行うことを指し、これまでご説明してきたようなパワハラの定義や基準、具体例や、実際に発生した場合のリスクを直接学ばせることにより、各従業員の意識レベルでパワハラの発生を防ぎます。

 

なお、この研修には、一般従業員に向けたもののほかに、従業員を直接指揮監督する立場にある管理監督者を対象とした研修も含まれます。
管理監督者の地位にある従業員は、部下が行為者にならないための環境作りを直接担う立場にもあることから、自分が行為者にならないための研修のほか、職場環境配慮義務という観点からの研修も別途行う必要があります。

 

⑤の「周知する」とは、これまで挙げてきたような、組織の方針やルール、会社としてのハラスメント防止のための取り組み(相談窓口の設置)などを、情報誌やウェブサイトへ掲載するなど、さまざまな機会で従業員に対して周知・啓発を行い、ハラスメント防止のための意識を各従業員に浸透させることを指します。

 

以上が、パワハラを防止するために重要なポイントとなります。

パワハラを解決するための事前準備

パワハラを解決するための準備も事前にできていないと、実際に問題が発生した場合、対応が後手にまわってしまい、結果として会社の職場環境配慮義務違反を問われることになってしまうことがあります。

 

パワハラを解決するには、そのための体制を事前に整えておくことが重要なのですが、「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ」の報告では、次の2点が重要であるとしています。

 

① 相談や解決の場を設置する
② 再発を防止する

 

①の「相談や解決の場を設置する」とは、会社内外に相談窓口を設置したり、職場の対応責任者をあらかじめ決めておくことを指します。

 

相談、対応窓口をあらかじめ明確化しておくことによって、従業員が気軽に相談できるようになります。
また、パワハラの被害を受けると、精神的な悪影響が生じることも少なくないため、産業カウンセラーなどの外部の専門家と連携したり、産業保健スタッフを担当者にすることにより、より適切な対応ができるようにしている企業もあります。

 

②の「再発を防止する」とは、パワハラ行為を行った者に対して、再発防止のための研修を受講させることを指します。

 

職場全体の問題でもあることから、具体的なパワハラ行為の発生を機に、行為者だけでなく、職場全体を対象に再度パワハラに関する研修を行うことも効果的です。

セクハラを防ぐための事前対策(その1)

セクハラを防ぐためには、日頃からどのような対策を実施しておくべきでしょうか?

 

セクハラに関しては、「男女雇用機会均等法」11条2項において、「厚生労働大臣は、前項の規定に基づき会社が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を定めるものとする。」と定められています。

 

これを受けて厚生労働省は、「会社が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」というものを定めています(平成18年厚生労働省告示第615号)。

 

この中で、会社が雇用管理上とらなければならない措置として以下4つの項目をあげています 。

 

ここでは、前半2つにつき解説します

 

① 会社の方針の明確化およびその周知・啓発

 

(ア)職場におけるセクシュアルハラスメントの内容および職場におけるセクシュアルハラスメントがあってはならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。

 

この例としては、就業規則をはじめとする服務規律を定めた文書や社内報、パンフレット、ウェブサイトなどの広報資料に、セクハラがあってはならないものであるとする方針を明確に定めて従業員に周知することがあげられます。
また、セクハラがあってはならないものであることおよびセクハラの具体的な内容などを啓発するための研修、講習などを実施することもあります。

 

(イ)職場におけるセクシュアルハラスメントにかかる性的な言動を行った者については、厳正に対処する旨の方針および対処の内容を就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。

 

就業規則をはじめとする服務規律を定めた文書において、職場におけるセクハラにあたる性的な言動を行った者に対する懲戒規定を定めて、その内容を周知することがあげられます。
また、資料を配付したり研修などを開催して、セクハラにあたる性的な言動を行った者は、すでに定められている就業規則の懲戒規定の対象となることを従業員に周知することなどもこれにあたります。

 

② 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

 

(ア)相談への対応のための窓口(相談窓口)をあらかじめ定めること。

 

実際にセクハラ行為が行われた場合などに、従業員が相談できる担当者があらかじめ具体的に定められていることや、カウンセラーなどの外部の機関に相談対応を委託することなどがこれにあたります。

 

なお、「パワハラを防ぐための方法」でもご説明しましたが、担当部署などが定められていたとしても、具体的な担当者まで決定して相談を受ける準備が整っていなければ、問題が発生してから相談を受けるまで時間がかかってしまうことになるのは言うまでもありません。

 

(イ)相談窓口の担当者が相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。
また相談窓口においては、職場におけるセクシュアルハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、その発生の恐れがある場合や、職場におけるセクシュアルハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応し、適切な対応を行うようにすること。

 

あらかじめ、相談を受けた場合の流れや留意点をまとめたマニュアルなどを作成し、実際に具体的な相談を受けた場合に、相談担当者がそのマニュアルに沿って相談を受けられる体制を整えることや、受けた相談の内容や状況に応じて人事部などと連携をとることができるような体制を整えることなどがこれに該当します 。

セクハラを防ぐための事前対策(その2)

セクハラを防ぐために、会社が雇用管理上とらなければならない4つの措置のうち、後半2つにつき解説します。

 

③ 職場におけるセクシュアルハラスメントにかかる事後の迅速かつ適切な対応

 

(ア)事案にかかる事実関係を迅速かつ正確に確認すること。

 

職場内の相談担当者、人事部などが、相談を行った従業員、セクハラにあたる性的な言動を行った者とされる従業員の双方から聴き取りを行うことがあげられます。
なお、聞き取り調査で主張の食い違いなどのために十分に事実関係が確認できない場合などには、その他、周囲の第三者から聴き取りを行うこともあります。

 

また、事実関係を把握しようとしたものの最終的に正確な事実関係の把握が難しいような場合には、男女雇用機会均等法に基づく調停の申請を行ったり、中立な第三者機関に紛争の処理をゆだねることなどがこれにあたります。
ちなみに、男女雇用機会均等法では、18条1項でセクハラに関して労働者と会社との間で紛争が生じた場合、紛争調整委員会による調停の申請ができることを定めています。

 

(イ)職場におけるセクシュアルハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、行為者に対する措置および被害者に対する措置をそれぞれ適正に行うこと。

 

事実関係の確認の結果、セクハラにあたる性的な言動が行われたことが確認された場合、就業規則をはじめとする服務規律を定めた文書に記載されたセクハラに関する規定に基づいて、セクハラにあたる性的な言動を行った者に対して、懲戒など必要な措置を講じることがあげられます。

 

また、セクハラ被害にあった従業員とセクハラ行為を行った者との関係の改善や、逆に引き離すための配置転換、被害者の労働に関する不利益を回復するための措置などをとることや、紛争調整委員会による調停、中立な第三者機関による紛争解決案に従った措置をとることなどもこれにあたります。

 

(ウ)改めて職場におけるセクシュアルハラスメントに関する方針を周知・啓発する等の再発防止に向けた措置を講ずること。
なお、職場におけるセクシュアルハラスメントが生じた事実が確認できなかった場合においても同様の措置を講ずること。

 

すでにセクハラ行為があってはならない旨の方針などが明確に定められ、周知されていたとしても、実際にトラブルが起こった場合には、改めて行為者に対して厳正に対処するという方針を社内報に記載して配布したり、ウェブサイトなどに掲載することのほか、研修、講習などを実施して、従業員に周知することが重要です。

 

④ ①から③までの措置と併せて講ずべき措置

 

(ア)相談者・行為者などのプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること。

 

相談を受けた際のマニュアルに、プライバシー保護のために必要な措置を定めて、実際に相談担当者が相談を受けた場合は、このマニュアルに従ってプライバシー保護のため適切な保護をすることがあげられます。

 

また、相談担当者に対して、プライバシー保護のための必要な研修を行うこと、相談窓口では、これらの措置をとって、相談者のプライバシー保護に十分配慮していることなどを、社内報に記載して配布したり、ウェブサイトに掲載して従業員に周知することにより、相談しやすい環境を整えることが重要です。

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