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パワハラ・セクハラをなくさなければならない理由とは?

最終更新日 2019年 11月27日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

会社には社員を守る義務がある

「会社として、パワハラ・セクハラはなくさなければいけない」
ほとんどの人が、なんとなくイメージとしてはわかっていると思います。
では、なぜなくさなければならないのか、その理由を詳しく説明できるでしょうか?

 

会社は、パワハラ・セクハラをなくすために社員を対象に研修などを行って教育していく必要があります。
そのためにも、なぜパワハラ・セクハラをなくさなければいけないのか、社長ご自身が理解しておく必要があります 。

 

会社は従業員と雇用契約を交わしています。
この雇用契約に付随する義務として、会社は従業員にとって快適な就業ができるように職場環境を整える義務を負っていると考えられています。この義務のことを「職場環境配慮義務」といいます。

 

パワハラ・セクハラが起こるということは、すなわち職場の環境が乱れているということになります。
その結果、対象の従業員などに被害が発生した場合、職場環境配慮義務違反(債務不履行責任 民法第415条)として、会社がその損害を賠償しなければいけないことになります。

 

このように、会社は職場の良好な環境を保って従業員を守る義務があり、これに反したために、パワハラ・セクハラが起こってしまった場合は、会社がその責任を負うことになるのです。

パワハラ・セクハラで会社はどんな損をするか?

じつは、職場環境配慮義務違反以外にも会社が損害を賠償しなければならないケースがあります。

 

まず、会社が「使用者責任」という責任を負い、被害者に生じた損害を賠償しなければならない場合です。

 

「民法」
第715条(使用者等の責任)
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

 

つまり、被用者(従業員)が事業の執行として不法行為を行い、第三者に損害を加えた場合、使用者(会社)もその責任を負い、損害を賠償しなければならないわけです。

 

従業員が社内でパワハラ・セクハラを行った場合、加害者だけでなく、会社も被害者から損害賠償請求を受ける可能性があるということになります。

 

ちなみに、前述の職場環境配慮義務違反は、職場の環境、風紀を整えなかったことによる会社自身の責任であるため、会社が職場環境に十分配慮していれば損害賠償責任を負わないこともありえます。
しかし、使用者責任は、職場環境に配慮していたとしても、従業員がパワハラ・セクハラなどの不法行為をしただけで、会社も損害賠償責任を負うことになるため注意が必要です。

 

というのも、民法715条1項では、従業員の選任、監督について相当な注意をしていたときなどは使用者責任を負わないとしていますが、パワハラ・セクハラの事案において、実際にこの但書きが適用されて使用者責任を負わないと判断されたケースは非常に少ないため、会社は従業員がパワハラ・セクハラ行為を行わないように、日頃からしっかり教育しておくことが重要なのです。

幹部役員も罪に問われる場合がある

じつは、会社の役員自らがパワハラ・セクハラ行為を行っていなくても、職場環境配慮義務違反として、被害者に対して損害を賠償しなければならなくなる場合もあります。

 

次のような事例があります。

 

「福岡セクハラ事件」(福岡地裁 平成4年4月16日判決)
女性従業員が上司からセクハラを受け、関係が悪化していた。役員らは、被害者である女性従業員本人や他の従業員からセクハラの事実を聞き、職場環境が悪化していることを確認したが、あくまでも個人間の問題としてとらえた。その後、解決の見込みがないと判断し、女性従業員に退職を促した結果、この女性従業員は退職することになってしまった。

 

裁判所は、「使用者は、被用者との関係において社会通念上伴う義務として、被用者が労務に服する過程で生命及び健康を害しないよう職場環境等につき配慮すべき注意義務を負う」、「労務遂行に関連して被用者の人格的尊厳を侵し、その労務提供に重大な支障を来す事由が発生することを防ぎ、又はこれに適切に対処して、職場が被用者にとって働きやすい環境を保つよう配慮する注意義務もある」、「被用者を選任監督する立場にある者が注意義務を怠った場合には、右の立場にある者に被用者に対する不法行為が成立することがある」として、自らはセクハラ行為を行っていない役員らの職場環境配慮義務違反を不法行為として認めました。

 

このように、パワハラ、セクハラ行為が発覚した場合、経営者側は、職場の環境を良好に戻すための適切な措置をとらないと、自分はパワハラ、セクハラ行為をしていなくても不法行為責任を負うことがあるため、注意が必要です。

 

ちなみに、パワハラ・セクハラ行為を行った者が、株式会社の代表取締役だった場合も、会社は被害者に生じた損害を賠償しなければなりません(会社法350条)。

 

以上、社内でパワハラ・セクハラ行為が行われた場合に、会社が損害を被ることになる理由を解説しました。

 

パワハラ・セクハラ行為が行われた場合、加害者と被害者の当事者以外にも、職場の環境が悪くなったことにより士気が下がるなどの悪影響が生じ、職場全体の生産性が低下することがあります。
また、社外にパワハラ・セクハラの事実が広まると、会社の対外的なイメージダウンが生じたりするなど、さまざまな損失が生じます。

 

このように、会社はパワハラ・セクハラ行為が絶対に行われないように日頃からさまざまな予防策を実施しておく必要があるのです。

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