問題社員トラブルから会社を守る!6つの事例集&対処法 その6

事例6:借金の取り立て

中高生を対象とした予備校でのことです。
地域での評判もよく、少子化が叫ばれるこのご時世、生徒は年々増え続けていました。

 

ところが最近、社員である講師A氏に対して、やくざ風の3人の男が借金の取り立てが来るようになったとのこと。彼らは、突然校舎内の職員室に現れ、「Aはいないか!金を受け取りに来たよ!」と大声で、しかし、にこやかに職員室内を歩き回るのだそうです。

 

A氏は、最初のうちは隠れるなりしていたのですが、職員室内にA氏がいないのを確認すると、彼らは授業中の教室を一つひとつ回っては、「Aはどこで授業しているのかな?」、「お金を借りたのに返さないんだよ!Aは悪い奴だね!」と、大声で話しながらA氏を探し回るようです。

 

授業は妨害され、生徒や他の社員はおびえて、当然この事実は保護者にも伝わり、社長は予備校の評判が落ちているのが心配だといいます。A氏を早急に解雇して問題を解決したいというご相談です。

 

問題点を法的に解説

私生活上の問題で会社に損害を与えているわけですから、A氏のような社員は懲戒の対象となるようにも思えます。

 

しかし、暴力団等による取立てはそもそも違法行為です。このような場合でも、企業秩序を乱したとして、A氏を懲戒の対象としてもよいのでしょうか?

 

どう対処するか?

私生活上の行動は、原則として懲戒の対象になりません。

 

会社と関係のないところで借金を重ねていたとしても、基本的に労務提供に支障はありませんし、企業秩序を乱すことにつながりません。例外としては、私生活上犯罪を行い、裁判で有罪となった場合などです。

 

このケースでも、借金をしていたことをもって懲戒の対象とはできません。また、暴力団が取立てに来たとしても、懲戒解雇等の処分を行うことはできないでしょう。なぜなら、そもそも暴力団等による職場への取立ては違法であり、社員に非はないからです。

 

違法な取り立ては、刑法上の恐喝罪にあたりえますし、債権者が貸金業法上の貸金業者であれば、貸金業法にも違反することになります(貸金業法21条では「人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動」が禁止されており、具体例として「正当な理由がないのに、債務者等の勤務先その他の居宅以外の場所に電話をかけ…(中略)…又は債務者等の勤務先その他の居宅以外の場所を訪問すること」などが規定されています)。

 

したがって、会社としては毅然とした態度で対応し、即刻建物内から出て行くことを求め、出て行かなければ、警察を呼ぶ等の措置をとることになります。

 

仮に、直接の取立てでなく、取立ての電話が頻繁にかかってきて業務に支障をきたしている、といったケースであれば、録音していることを相手に伝え、相手の名称を確認した上で、貸金業法に違反していることを伝えて当該行為をやめるように求めるとともに、登録貸金業者の苦情・相談先に相談し、場合によっては「架電禁止の仮処分」等の法的手段も検討することになります。

 

とは言っても、頻繁に起こる違法な取り立て行為に対応するのは会社にとっては多大な損失ですし、何とかしたいところです。
前述のように懲戒の対象とはできませんが、問題の社員に対し、弁護士に依頼し債務整理手続をとるように勧める等、根本的な解決を促しましょう。本人も、取立てにより会社に迷惑をかけていることは(もちろん悪いのは借金取りですが)認識しているはずなので、何とかしようとするはずです。

 

会社に体力があるなら、賃金を支払った上で、2~3ヵ月勤務を免除し、その2~3ヵ月の間で解決するように促すのもひとつでしょう。また、配転が可能な企業であれば、業務上の必要性があるとして、配転すべきですし、強要に至らない程度の退職勧奨をすることも可能です。

 

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