問題社員トラブルから会社を守る!6つの事例集&対処法 その4

事例4:能力不足・協調性不足・有休の取得

あるメーカーでの事例です。

 

新卒一括採用したある社員を営業部に配属したのですが、6ヵ月経ってもまだ、ひとつも契約がとれていなく、こんなことは初めてだそうです。そもそも、このような社員を雇った会社が悪いと言われればそれまでかもしれませんが、本当にいつも人前でおどおどしていて、お客様に不安を与えているようです。慣れもあるかと思い半年も使っていましたが改善されないため、このような営業能力がない従業員を早急に解雇したいと考えているようです。

 

また、同じく新卒一括採用した社員を製造部に配属したのですが、製造部長からの報告によると、とにかく協調性がなくて困っているとのことです。製造部は、特にみんなで協力して行う仕事が多いので、個々の能力よりも協調性をもって周りに合わせながら、いかにスムーズに作業を行うかが重要なのですが、その社員は、作業が始まった途端にトイレに行ったり、部署内であいさつを徹底する運動を行っているのに、まったくあいさつせず他の社員とコミュニケーションをとれないそうです。

 

しかも、この社員だけ大学卒であることからか、どうやら他の社員を見下すような態度をとるらしく、製造部の他の社員は不満を抱えているようです。結果として、製造部全体の生産性が落ちているため、この社員を解雇したいようです。

 

さらに、経理部に、とにかく周りの空気を読まずに年次有給休暇をとりまくる社員がいるようです。もちろん、有休は就業規則で決められているものですし、取得すること自体問題ないのですが、四半期に一度の決算の直前の時期に限って有休を取得するとのことです。

 

その社員が休むことで、しわ寄せが経理部の他の社員に及び、ただでさえ忙しいため、経理部内は戦々恐々となるようです。有休の申請をされた際、経理部長が、その時期は避けて他の時期に取得するよう説得するのですが、「権利ですから!」と言って聞き入れないとのことです。

 

問題点を法的に解説

能力不足」、「協調性不足」、「有休の取得」を理由に社員を解雇することは可能でしょうか。能力不足の社員を雇っていても会社に何のメリットもないですし、協調性不足の結果、他の社員または部署の全体の士気・生産性に関わるのであればやはり辞めてもらいたいところです。

 

年次有給休暇も、日本企業においてはいわば「空気を読む」ことが求められているので、他の社員に不公平感を覚えさせる結果、ある意味「企業秩序を乱す行為」として懲戒の対象にならないでしょうか。

 

どう対処するか?

「能力不足を理由とする普通解雇」
まず、新卒一括採用者を、能力不足を理由に普通解雇することは難しいと言わざるをえません。

 

というのも、日本の場合、新卒の採用段階では、配属先も業務内容も決められていないケースがほとんどでしょう。つまり、具体的な職務遂行能力が労働契約の内容として特定されているわけではないのです。この場合、営業で契約が取れなかったからといって、債務不履行つまり普通解雇事由には当たりません。配置転換を行うか、それができないのであれば、やるべきことをやっているのか、会社が徹底指導するしかありません。

 

なお、新卒でも職種が限定されているスペシャリストの場合、一定期間の十分な教育を行い、支援体制も確立し、現実に支援していたにもかかわらず、まったく成果が上がらないようなケースでは、予定されていた仕事ができなかったのですから、債務不履行として普通解雇事由にあたる可能性はあります。

 

他方で、一般事務職の場合は新卒一括採用者よりもさらに普通解雇は難しいといえるでしょう。労働契約の内容と能力の関係について、総合職よりさらにその関連性が薄いため債務不履行とは言い難いのです。

 

これに対して中途採用者の場合は、何らかの能力が期待されていることが多いので、例えば前職が営業で、営業として採用されたのであれば、債務不履行には該当しやすく、あまりに能力が不足している場合は普通解雇が可能となるでしょう。

 

「協調性不足を理由とする普通解雇」
協調性不足により、業務に支障が出ているのであれば、債務不履行として普通解雇事由にあたりえます。

 

しかし、解雇権濫用の法理から、いきなり普通解雇したのでは無効と判断されるでしょう。企業規模にもよりますが、大企業であれば2~3回の配転は試みるべきです。配転の前提として、協調性不足のため配転すること、次の部署では協調性をもって働くよう指導し、改善の機会を与える必要があります。それでも改善されない場合は、解雇は社会通念上相当であり有効とされるでしょう。

 

これに対し、従業員が50人以下のような中小企業の場合、配転は困難なケースが多いので、配転なしに解雇することになります。しかし、やはり突然解雇というのは無効と判断される可能性が高いので、厳重な注意を重ね(当然、書面により証拠を残しておきます)、態様によっては懲戒処分も行い、それでも改善されない場合は普通解雇とすることになるでしょう。

 

「有給休暇取得を理由とした懲戒について」
有休の取得は社員の権利である以上、基本的にそれを妨げることはできず、所定の手続をとっての有休取得は注意や懲戒の対象にはあたりません。

 

しかし、労働基準法では会社に「時季変更権」、すなわち「事業の正常な運営を妨げる場合」には、他の時季に変更する権利を認めています。したがって、今回のケースでは、会社は時季変更権を行使し、時季変更命令を下しているとして、この命令に反した社員は、戒告等の懲戒の対象となってもよいとも思えます。

 

ところが、問題はそう簡単ではありません。実際の裁判例をみていくと、民間の会社で時季変更権を行使して適法と認められた例がほとんど存在しないのです。

 

現実には、繁忙期に社員に休まれると、他の社員にしわ寄せがいきますし、会社全体として困るのは確かです。むしろ、このようなときに時季変更権が認められないのであれば、時季変更権が法律上認められている意味がないようにさえ思えます。

 

にもかかわらず、裁判所が時季変更権の行使を簡単に認めないのは、日本企業における慢性的な人手不足を背景としています。「そもそも、業務量に対して人が少なすぎる」との考えの下、裁判所は会社に時季変更権の行使を認めないのです。結局、民間企業では基本的には時季変更権は認められないと考えていた方が無難です。

 

一応、半月にも及ぶ長期休暇であれば時季変更権は認められやすいとされていますが、それでも行使には慎重になるべきでしょう。現実的には根気強く、他に条件を提示するなどして説得したり、平常時から繁忙期には助け合えるようなコミュニケーションをとっておくことが大切になります。

 

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