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勤務成績不良、能力不足を理由とする普通解雇とは?

最終更新日 2014年 09月30日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

多くの企業では、就業規則に、「勤務成績又は業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない等、就業に適さないと認められたとき」等の文言があり、勤務成績不良、能力不足を理由とした解雇を想定しています。

 

しかし、長期的な雇用が慣行となっている現状で、解雇は労働者に重大な不利益を負わせるものであるので、労働契約法では、使用者の解雇権について、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」として、解雇権濫用を規制しています(労働契約法16条)。

 

したがって、解雇が有効とされるためには、客観的合理的理由があり、社会通念上相当であると認められる場合であることが必要です。

 

勤務成績不良等を理由とした解雇が有効か否かについては、実際には、勤務成績不良の程度、原因、改善の余地はあるか、企業による指導・教育等が十分になされたか、配置転換等解雇を回避する措置を尽くしたか等、個別具体的な事情を検討して判断されることになります。

 

勤務成績不良、能力不足を理由とする解雇が問題となった裁判例には以下のものがあります。

 

セガ・エンタープライゼス事件(東京地決 平成11年10月15日)

大学院卒の従業員に関し、会社の主張によれば、上司からの注意や顧客からの苦情が多く、勤務成績が悪い、仕事に対する積極性がない、協調性がない等の理由から、解雇した事案です。

 

裁判所は、従業員として平均的な水準に達していなかったことは認定したものの、それだけでは不十分であり、著しく労働能率が劣り、しかも向上の見込みがないときでなければ解雇はできないとしました。

 

そして、人事考課は相対評価であって絶対評価ではないから、その評価が低いからといって直ちに労働能力が著しく劣り、向上の見込みがないとまでいうことはできず、会社としては当該従業員に対し、さらに体系的な教育、指導を実施することによって、その労働効率の向上を図る余地もあるとして、解雇を無効としました。

 

エース損害保険事件(東京地決 平成13年8月10日)

長期雇用してきた正規従業員を勤務成績・勤務態度の不良を理由として解雇した事案です。

 

裁判所は、長期雇用システム下で定年まで勤務を続けていくことを前提として長期にわたり金属してきた正規従業員を勤務成績・勤務態度の不良を理由として解雇する場合は、労働者に不利益が大きいこと、それまで長期間勤務を継続してきたという実績に照らして、それが単なる成績不良ではなく、企業経営や運営に現に支障・損害を生じ又は重大な損害を生じる恐れがあり、企業から排除しなければならない程度に至っていることを要し、かつ、その他、是正のため注意し反省を促したにもかかわらず、改善されないなど今後の改善の見込みもないこと、使用者の不当な人事により労働者の反発を招いたなどの労働者に宥恕すべき事情がないこと、配転や降格ができない企業事情があることなども考慮して濫用の有無を判断すべきであるとして、本件の解雇は解雇権濫用にあたり無効としました。

 

三井リース事件(東京地決 平成6年11月10日)

従業員の能力不足、組織不適応、労働意欲の欠如等を理由に解雇した事案です。

 

裁判所は、労働者の能力・適性不足が著しいことを具体的事実に基づき認定し、会社は何度も労働者を配置転換させたのみならず、労働者の能力・適性を調査するため、約3か月間、日常業務を免除し、研修等の機会も与えるなどの措置もとっていることから、解雇を有効としました。

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