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事業譲渡の場合の労働契約の承継は?

最終更新日 2014年 09月29日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

事業譲渡とは、営業目的のために組織化されて有機的一体性として機能する財産の全部または一部を譲渡し、これによって、譲渡会社がその財産によって営んでいた営業的活動の全部または重要な一部を譲受人に受け継がせ、譲渡会社がその譲渡の限度に応じ法律上当然に競業避止義務を負う結果を伴うものをいいます。

 

会社法上は、事業の全部または重要な一部の譲渡をするには、原則として株主総会の特別決議が必要(会社法467条1項、309条2項11号)とし、譲受については、事業の全部の譲受の場合には株主総会の特別決議が必要と定めています。

 

事業譲渡は、合併の場合とは異なり当然に権利義務を包括承継するものではなく、各財産について承継すべき権利義務の範囲を決定し、個別に契約によって承継する特定承継です。

 

事業譲渡における労働契約の承継についても例外ではなく、譲渡会社労働者の労働契約が、譲受会社に承継されるか否かは、譲渡会社・譲受会社・労働者間の合意によって決まるのが原則です。

 

ですので、2つの会社間で労働者の労働契約の承継が合意され、当該労働者もそれに同意した場合には、労働契約が承継されます。

 

反対に、譲受会社あるいは当該労働者のいずれかが承継を拒否した場合は、労働契約は承継されません。

 

また、譲渡会社と譲受会社の間で承継しないとされた場合には、労働者が承継を望んだとしても、承継されません。

 

上述した事業譲渡に伴う労働契約の承継は「譲渡型」と呼ばれます。

 

これに対し、事業譲渡の際に、別途譲渡会社が労働者を解雇、あるいは労働者が退職し、譲受会社が再雇用する「再雇用型」もあります。

 

再雇用型の場合、譲受会社から解雇された労働者は解雇の効力を争うことはできますが、承継の対象とならなかった労働者が譲受会社に再雇用を希望しても、譲受会社には採用の自由が認められているため、再雇用してもらえない可能性もあります。

 

もっとも、事業譲渡は、実際には、事業に従事する労働者を含む事業全体を譲渡して行われることも多いことから、再雇用型の事業譲渡の場合でも、裁判例では、雇用承継の黙示の合意があったと解して、雇用の承継をなるべく認める姿勢をとっています。

 

事業譲渡の際、譲渡型の場合に「特定の労働者の労働契約のみ承継する」との特約を付することや、再雇用型の場合に「譲受会社は、会社の運営に必要と認めた者のみを採用する」との特約を締結することは可能です。

 

労働契約が承継された場合の労働条件については、譲渡型の場合、原則として譲渡会社の労働条件が承継されます。

 

譲渡契約の際に承継の対象となった労働者の労働条件を変更する旨を定め、労働者が労働条件の変更に合意することを承継の条件とした場合、労働者が新たな労働条件に合意しなければ労働契約は承継されません。

 

再雇用型の場合は、労働者と再雇用者との合意があれば、労働条件を変更することができます。

 

事業譲渡に関する最近の裁判例としては、譲渡会社の従業員らが譲受会社に対して、前の会社在職中の未払賃料と退職金を請求した事案があります。

 

この事案に対して裁判所は、従業員らの1人については、譲渡後、給与が実際に譲受会社から支払われたこと等の事情から、前の会社から譲受会社に雇用契約関係の承継がされた認定して、未払賃料請求を認容しました。

 

しかし、その他の従業員らについては、譲受会社から給与が実際に支払われたことがなかったこと、雇用契約が引き継がれたとの明示、黙示の意思表示がなかったこと、譲受会社が退職金について債務引受をしたとの事実は認められないことから、その請求を認めませんでした。

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